『デンマーク』と『マスク』の深い?関係
先日バズったツイートに、このようなものがありました。
この「「新コロは怖くないから、マスク外して大丈夫」なんて欧米の健康当局は一言も言ってない」という一文に対し、「デマだ!」、「フェイクニュースだ!」と言い、「デンマークでは~」という反例を挙げる人がいるのが目に付きました。
確かに、今年2月にデンマークは、新型コロナウイルス(オミクロン株)について「ワクチン接種を受けた人にとって最早『重大な脅威(critical threat)』とは見なさない」とし、マスク着用などのコロナ規制を完全に撤廃しています。
したがって、先のツイートの「「新コロは怖くないから、マスク外して大丈夫」なんて欧米の健康当局は一言も言ってない」というのはデマということになります。
ただし、「デンマークでは~」ということに注意する必要があります。
マスクの効果に疑問を持ち、よく調べている人ならば、『デンマーク』『マスク』と聞いて真っ先に思い付くのが、『デンマークで行われたマスクに関するランダム化比較試験(RCT)』、通称『DANMASK-19試験』だと思います。
私も昨年9月に記事にしました。
論文の結論に書かれていますが、このDANMASK-19試験は「マスク着用が一般的ではないコミュニティにおいて、マスク着用推奨による新型コロナウイルス感染症の発生率は有意に減少しない」ことを明らかにしました。
しかしながら、所謂『反マスク・ノーマスク』と呼ばれる人たちは、この結論の前半部分を無視し、さらに後半部分を「『マスク着用』による新型コロナウイルス感染症の発生率は有意に減少しない」と曲解して「マスクには感染を防ぐ効果はない!」と主張しました。
この反マスクの主張は、これまで一般常識として「マスクは感染症対策に有効だ」と考えてきた人たちにとって、大きな衝撃でした。
大手メディアなどでは決して報道されない常識を揺さぶる事実を前にして、不必要なマスク着用を推奨する政府やマスコミに不信感を抱く、所謂『目覚めた人たち』が増えたきっかけにもなったと私は考えています。
実際のところ、この論文の結論に対して驚くようなことはありません。
マスク着用に慣れていないデンマーク人にマスク着用を推奨しても、その推奨グループの半数以上が「推奨通りにマスクを着用していなかった」訳ですから、新型コロナウイルス感染症の発生率が有意に減少しないことは、当然と言えば当然です。
そして、その後もデンマークは、EU諸国の中でもマスク着用率が極めて低い、特異な国となりました。
では、『マスク嫌い』のデンマーク人の背景には何があるのでしょうか?
デンマークには、所謂『Burqa ban』と呼ばれる法律があります。
公共の安全の理由で、公共の場にいる人々は「認識可能」かつ「識別可能」でなければならないことから、ムスリム女性の『ブルカ(Burqa)』や『ニカブ』の着用を禁止(ban)しています。
公共の安全を盾にしたイスラム教徒に対する差別的な政策であるという批判がありますが、WHOやデンマーク政府がマスク着用を呼びかける中で「『宗教的な理由』で顔を覆うことと『公衆衛生上の理由』で顔を覆うことの違いは何なのか?」というパラドックスが生じたことは、デンマークのマスク政策について議論する上で知っておくべきでしょう。
私の個人的な意見ですが、デンマーク人の持つ『マスクに対する抵抗感』は、『イスラム教徒に対する抵抗感』と繋がっているかもしれません。
Burqa banを廃止しないのであれば、宗教的対立を避けるためにも、一刻も早くマスク着用推奨を止めるという政治的決断が必要になることは理解できます。
確かに、デンマークがマスク着用などのコロナ規制を完全に撤廃したということは、一つの重大なターニングポイントと言えるでしょう。
ただし、「欧州が・デンマークがこうだから」という論調で、日本におけるマスク着用の是非について議論することは間違っていると思います。
以上。
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