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2023年出版市場データとその感想

こちらの記事を読みました。

2023年出版市場(紙+電子)の占有率はコミック43.5%:書籍(コミックを除く)39.9%:雑誌(コミックを除く)16.6%に ~ 出版科学研究所調査より HON.jp News Blog 24/4/30

出版市場の定点観測記事。見やすいグラフになっています。鷹野さん、いつもありがとうございます。

そして、この話題には毎年反応しているのですが、毎年毎年同じ反応だということに、やばいなあこれと、危機感を覚えています。

漫画はいいのです。電子書籍が順調に伸び、全体の売り上げもずっと伸びています。

問題があるとしたら、僕が「やっぱりこれは紙でコレクションしよう」と思ってる作品を早く揃えないと入手困難になるのではないか、ということぐらいです。

あと最近よく話題になるトピックで気になるものと言えば、漫画の未来が縦描きなのか横描きなのかという点が挙げられます。僕的にはここで何度か書いているように、スマホ完全対応縦描き漫画は描きやすい内容が絞られているので、横描き推しです。スマホだと見づらいんですけど、PCやタブレットで見るのにはもう慣れました。横描きに軍配が上がってほしいなー。

さてでは何に危機感覚えているのかというと、順調に低下している他の分野です。雑誌と書籍。

最近、リアル書店に公的援助を入れるべきではないか、という動きがありますが、それともつながっている問題だと思います。

僕は正直、公的援助には反対です。そもそも文化拠点云々と言うのなら、図書館があるからです。そっちの予算を増やせばいい。あと学校の図書室の予算。

そして、問題の先送りしかしていないと感じるのも、公的扶助に反対する理由です。

リアル書店が経営難に陥っていくのは、構造上の問題があるからです。特に大きな問題は、売り上げを支えていたのは雑誌と漫画だということ。紙の漫画は前述の通り、デジタルシフトが進んでどんどん減っています。

雑誌の縮小もデジタルシフトが原因と言えるのではないでしょうか。ネット上で情報が拾えるようになったケースもありますし、通勤時の時間潰し需要がスマホに取られたことも考えられます。

なので、リアル書店の公的援助は、ぶっちゃけザルで水をすくうようなものだと思います。需要が減っているのはどうしようもない。

では、全体の縮小はしょうがないとして、書店はどう生き延びるべきか。単純に本を売るという仕事は需要が減っているのだから、何か別の『書店』の定義を見つけるべきなんだと思います。そうやっていろいろ工夫している書店さんもあって、そういう所は応援したいです。

さて話を戻しましょう。紙の漫画と雑誌は縮小していて、残りは書籍。こちらも縮小しています。そしてここが一番問題だなと思っているのです。漫画はうまくいっているのに、書籍は電子化が全然進んでいません。

実際にWebにどちらが向いているかと言えば、むしろ漫画よりも文字物の方だと思います。漫画はどうしても画面サイズに見やすさが左右されてしまいますが、文字物は画面サイズに合わせて表示することができます。特にスマホは文字物の方が対応しやすい。

なのにまったく伸びていない。そして紙を含めた全体ではズルズルと下がっている。

リアル書店を文化拠点として公的扶助しなければいけないというような話の中の「文化」は、この書籍に含まれる文芸や人文関係の本のことだと思うのですが。

ぶっちゃけて言うと、こうやってもう10年もまったく対応できていないのを見るにつけ、何か世間に対して自分たちは有識者であるというような態度で思想を前に出してものを書いているけれど、環境の変化に対応できてない知性という時点で、その有益性を疑っちゃうんですよね。

なんか言葉を多く知ってるだけの口先でごまかしてる詐欺なんじゃないのか。実はまったく何も見えてないんじゃないのか。

そんな奴の本、買う?

そう考えていくと、この書籍の対応の遅れは、ただ売り上げが下がっている以上に深刻なんじゃないかと思っています。

せめて、自分に関係のある小説の分野はもっとしっかり対応してほしいなと思っているのですが、どうなるでしょうか。

(ブログ『かってに応援団』24/5/9より転載)

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