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神戸南京町と春節祭         第2回 幸運を呼び込む新春の伝統

川瀬流水です。2024(令和6)年2月10日(土)から12日(月・祝日)の間、神戸南京町で行われた春節祭を取り上げています。今回は、幸運を呼び込む新春の伝統的なオーナメントやグルメについて、みてみたいと思います。
 
春節祭を彩る今風の飾りつけのなかにも、中国伝統のオーナメントを見つけ出すことができます。「年画」(ねんが)は、春節をはじめとする慶事に、家や店舗の門扉や室内の壁に貼って飾り、除厄・慶祝の祈願を行う版画、あるいは現代風に印刷された色鮮やかなアートをさします。
 
年画には、様々な種類がありますが、春節祭では、四角い紙の赤色又は紅色の下地の上に「福」や「倒福」(とうふく)の文字を記した「吉祥文字図」をみることができました。

「福」の吉祥文字図

倒福は、福の文字を上下逆さまにしたもので、「倒」の発音が「到」に通じることから、吉祥文字として大変喜ばれています。これらの下地となる赤色は、中国五行でいう火・夏・南を表わし、みなぎるパワーを象徴します。紅色は、「鮮やかな赤い糸の色」を表わし、赤色に通じます。いずれも、春節にふさわしい吉祥の色とされています。

「倒福」の吉祥文字図

 「福」「倒福」の吉祥文字図は、各店舗の入口や正面ガラス窓などに貼られ、春節を祝っていました。

お店のガラス窓に貼られた「倒福」
賞品引換所に貼られた「福」

 新春の伝統的なオーナメントに「剪紙」(せんし)があります。ハサミで薄い紙を切る中国の伝統的な切り絵アートで、春節になると、ガラス窓などに貼る「窓花」(そうか)として喜ばれています。春節祭では、若手女流作家の谷田有似(たにだ・ゆに)さんによる実演販売が行われ、好評を博していました。

谷田有似さんによる剪紙の実演販売
可愛い蛇の剪紙

南京町から北西に約1km、神戸ならではの坂道を歩いて15分くらいで「関帝廟」(かんていびょう)に着きます。中国の『三国志演義』で著名な関羽に由来する「関聖帝君」(かんせい・ていくん)が祀られています。「関帝さま」で親しまれるこの神さまは、どういうわけか武神ではなく、商売繁盛の神様としてご利益があります。

関帝廟(神戸) 正門
関帝廟(神戸)

 春節祭の期間中、関帝さまは、南京町広場に特別に設けられた祭壇にお出ましになります。集まった人々は、1本百円の太く長い線香を買って、新年の実り多きことを祈願します。私もお参りしましたが、当日も大変な盛況でした。

南京町広場の関帝さま

 次に、グルメをみてみましょう。今年の春節祭は、店前に出された屋台がズラリと並び、人々は食べ歩きを楽しみながら店を巡る、というスタイルが定着しているようでした。

食べ歩き屋台1
食べ歩き屋台2

南京町のお店はどこも超満員だったため、春節の伝統的なグルメを求めて、かねてより噂に聞いていたお店に行ってみることにしました。

南京町最寄りのJR元町駅から2駅西に行った兵庫駅で降りて、北東に数分歩いたところに「芳仙閣」(ほうせんかく)があります。町中華の店ですが、中国出身の方がやっておられる本格的な味の四川料理で、辛めの味付けが人気です。

芳仙閣 正面
芳仙閣 店内

 春節に食べられる伝統的なグルメには、様々なものがありますが、芳仙閣では、まず「春巻き」と「水餃子」をいただきました。

春巻きは、立春の頃、新芽が出た野菜を具材にして作られたことに由来します。棒状のロールが斜めにカットされて食べやすく、皮がパリッと揚がっていて、とても美味しかったです。

春節に食べられるグルメ 春巻き

 餃子は、その形が中国の貨幣であった「元宝」(げんぽう)に似ていることから、春節に餃子を食べて、新年の富を呼び込むという定番のラッキーフードです。芳仙閣では、中華圏で一般的な水餃子をいただきました。お肉たっぷりで、もちもちの食感がすばらしく、スープも大好きな味でした。

春節に食べられるグルメ 水餃子

 次に紹介するのは「湯圓」(タンユエン)です。これは、春節から「元宵節」(げんしょうせつ、旧暦1月15日)にかけて食べられるモチ米粉を練って作った団子で、日本の白玉団子に似ています。湯圓は、その発音が家庭円満を意味する「団圓」に通じることなどから、縁起のよい食べ物とされています。
 
お店の方によると、湯圓はメニューにはなく、日本人が多く通う店では扱うところは少ないのではないか、とのことでしたが、いくらか作ったものがあるので、少々なら提供できるとのことでした。おそらく、春節を祝うため内々で作っておいたものを提供いただいたのかなと思っています。

春節に食べられるグルメ 湯圓

食べてみると、ゴマ入りの餡が入っており、つるっとした食感とざりっとした歯ごたえがマッチして、今まで食べたことのない味でした。芳仙閣さん、ありがとうございました。
 
最後に、春節の定番というわけではありませんが、評判の麻婆豆腐をいただきました。独特のスパイスによる辛味がすばらしく、絶品でした。今まで食べた麻婆豆腐のなかでも、一番の美味しさだったと思います。

絶品だった麻婆豆腐

神戸南京町と春節祭について、2回にわたりみてきました。中国伝統のオーナメント・グルメが神戸の地になじみ、春節祭が日本人や訪日外国人でごった返している様子を目にするとき、異国の地で幾多の困難を克服してきた華僑の人々のパワーは、神戸が魅力ある街であり続けるための不可欠の原動力のひとつだと改めて感じました。

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