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小包を送る喜び、受け取る楽しみ

 親からの小包。とかで検索してみて衝撃を受ける。

 「要らない」。「送ってほしくない」。「欲しくもないものを」。「ストレスだ」。「愛なんかじゃない」。
 そんな言葉が連なっていて、ちょっと慌てた。

 自分が子供の側としてはどうだったっけ。
 義母からの小包、困った時もあったよな。趣味の物と違ったり、要らない物が多かったり。
 若い頃は「ホントに要らないから」って強く思っていた気がする。でもそれも遠い記憶で、いつの間にやら、段ボールが届くと「何が入ってるのかなあ~」と楽しんで開けるようになっていた。義母の思うつぼなのだろうか。でもそんなにイヤになるほど頻繁でもなかったから良かったのかな。多分物理的な距離もできたからほど良く感じていたんだろうな。

 それほど義母とうまくいっていた方じゃなくて、むしろあまりいい関係でもなかったのだけど。それでも「今回はこんなの入ってた」って楽しくなっちゃって、要らない物もどうにかこうにか工夫して消化したものだった。
 義母は昨年から外にほとんど出ていないらしくて、買い物に行かなくなってしまったと言うのでちょっぴり寂しい。こちらから連絡しないと様子もわからなくなり、時々心配で様子伺いをしてはホッとする。

 原発事故で不安だった頃は、関西の母にこまめに野菜を送ってもらっていた。段ボールパンパンに入っている野菜にどれほど助けられただろう。開けると、時には母見立てのお菓子が入っている時もあって、自分じゃ全然買わない物でも楽しく思えたものだった。これも年単位で続き、「もう大丈夫だよ」と宣言して止めてもらった。

 今は私が息子に送る番になっている。

 レトルト食品や缶詰、ペットボトルを詰め込んで「こんなので良いのかなあ」「向こうにも当然あるだろうになあ」「気に入るかなあ」「食べてくれるかなあ」と思いながら送る。

 息子は「着いたよ」とも連絡しないから「着いたら内容がどうであれ、着いた、って連絡ちょうだいよ」と何度も伝えるのに、連絡しない。

 冒頭のメッセージをネットで見る。

 うわあ。いやなのかも。それか、頻度の高いのがうっとうしくて間を空けてほしいのかも。
 ちょっと不安になった気持ちを夫に話すと「直接聞いてみなよ」と言われる。

 そうだ。そうだった。
 「この気持ちを伝えるべきは本人」。
 こういう思いを、子供と接しながら何度抱いてきただろう。

 直接聞く時は、相手がネガティブな思いも吐き出してもらいやすいよう、こちらも工夫して伝えなければならない。頭の使いどころ、会話の工夫のしどころで、そこが子供と接する時の醍醐味と言って良いくらい。

 でも聞いてみると「いや。ありがたいよ。何なら毎日送ってほしいくらい」と言う。

 ええっ!

 そんなに送れるわけないじゃない。こっちが体力も財力も持たないよ。残りは仕送りの分で何とかしてね。と笑った。

 夏休み、一緒に買い物に出た時に「こういうの送ってるでしょ?」「こういうのはどうなの?」などと、商品を目の前にしながらちょこちょこ聞いてみる。
 だいたいが「良いよ。嬉しい」「それありがたい」と笑っている。
 ごくまれに「それもうたくさんあるから要らないよ」と教えてくれる。

 夏休みが終わってからもほぼ毎週、小さな段ボールに詰めて少しずつ送る。もう郵便局の人にも覚えられて、「次送る時に、前回の控えを持って来て下さったらほんの少し安くなりますよ」と教えてもらい、マスク越しの笑顔を交わす。
 最近はスマホの普及で、すっかり人の住所や電話番号を覚えられなくなっているけど、さすがに息子の住所もスマホ番号も覚えてしまった。


 毎週、リモートする時間を三人で約束していて、その時間は必ずウチにいるからと荷物も着くようにしてみた。喋っている途中にピンポン鳴る日もある。既に荷物が着いていても、パソコンの向こう、喋っているタイミングで開ける日がある。

 「おお。これね」
 「ありがとう。これ早速食べようっと」
と、段ボールを開けてのぞきこむ顔が見える。
 品を取り出しては、なるほどといった表情で見ている。

 目元がすこーしゆるむ。

 お。嬉しそうだ。

 そうか。こんな表情して一つ一つ見るんだ。

 くぅー……。
 嬉しそうで可愛いぞ!

 ちょっとデレっとした表情の私もパソコンに映っている。


 息子は今のところ、小包を楽しんでくれている。
 こんな風に喜んでくれるのもいつまで続くのかな。そのうち頻度を減らしてと言ってきたら、寂しいけど頼もしく思うのだろう。それまでは、買い物に行くたびに息子の好きそうな物を選び、週末に夫と「これ送ろうか」と息子を思うのもまた楽しみだ。


#エッセイ #親子 #息子 #子供 #小包 #開ける #楽しみ

読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。