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心について扱っている、と思って観ると身近に感じる~「ロキ」(MCUドラマ)~

 祖父母が「最近のドラマはよくわからない」と言っていたのを思い出す。それは段々、新しいものに興味がわかなくなって、今までのものに愛着もあって、気が付いたらついていけなくなっちゃうから。自分がその立場になってようやくわかる。
 ついていけなくても、好きなものがあるから良い。
 確かにそれもそう。

 新しい感覚を追うことに興味がなくなっていくんだよな。それに、よくわからないことを追求するのってエネルギーが要る。

 前も書いたけど、古い映画を繰り返し観る両親の気持ちが「わかるなあ」と思い始めている。私もおばあちゃんになって、MCU 作品(マーベルシネマティックユニバース)を繰り返し観て「古い」と思われちゃうかもしれない。
 それだけ夢中になれるものができたのは幸せだとも思う。だけどMCUの中でも、新しいものを取り入れる世界観について行けるだろうか。心配でもある。

 MCUの世界は、2008年の「アイアンマン」から始まっていて、ハルク、キャプテンアメリカ、ソー、「ガーディアンズオブギャラクシー」の面々、アントマン、ドクターストレンジ、スパイダーマン、ブラックパンサー、キャプテンマーベルなどが主人公となった映画がそれぞれにある。
 それらのヒーローが集結して敵と対峙し、2019年に一段落。
 次のフェーズが始まっている。
 
 欲張りなことにドラマでも、MCUの世界は広がり、これまでの映画の謎やその後などと関わり、今後のストーリーや新しいヒーローたちにもつながっていく。
 絡み合っているから、何度も何度も過去作を見返したくなる。過去作のちょっとしたシーンやセリフがフリになっていると気付く。以前は意味のわからなかったセリフやシーンが、理解できるようになる。
 そして、MCUを観てこなかった人にも言いたい。今まで観てこなくても、充分楽しめるようにできている。

 ただ楽しんだら楽しんだで、ほかの作品も観たくなるようにできていて、そのやり方はオソロシささえ感じるのよ。
 もうどうかしてるってレベルの、頭の良い人たちが作り上げている世界だと思っている。

 今年に入ってからMCUのドラマは「ワンダヴィジョン」「ファルコン&ウィンターソルジャー」「ロキ」と続いている。
 観ていると、どんどん世界が広がって、今後、宇宙とかマルチバースが問題になってくるようだとわかってきている。

 マルチバースとかタイムトラベルって、観ていると「じゃあこれはどうなるの?」「あの世界は?」など疑問や矛盾が出てくる。なるべくそこは「楽しめたら良いや」って割り切ってうやむやにしたいのに、そういうところを追求するとか、頭を使うから勘弁してほしいのだよー。

 と思っていたけど、最近気づいた。

 確かに勘弁してほしいくらいに世界は広がってきているけど、扱っているテーマは「心」。そう考えたら、身近に感じるではないか。

 「ワンダヴィジョン」では、両親、兄弟、恋人、と大切なものを失くしてきた彼女の心の傷、深いトラウマを克服していく過程が描かれているように見えた。向き合いたくない気持ちも含めて。
 「ファルコン&ウィンターソルジャー」では、アメリカにおける黒人問題の根深さ、難民問題への向き合い方など考えさせられる骨太な展開だった。同時に、人を傷つけてきた過去や孤独との向き合い方も見せてもらった。そして今後のヒーローの在り方、今までやり過ごしてきたことを考える機会も与えられた。

 「ロキ」では最初、ストーリーに翻弄され、どう観たら良いのかわからなくなって、困惑気味に。

 でも「トイストーリー」のバズライトイヤーを意識したと脚本家たちが話していると目にした。
 バズは、万能だと思っていた自分が、本当は無力であると知って屈辱を感じ、挫折する。

 ロキは、自分の欲のためにすべてをコントロールし、王になろうとするが、その欲を満たそうとした結果、母が亡くなり、父も自分を認める言葉と共に亡くなる。兄とも和解したと思いきや、結局ロキ自身が死んでしまう。その運命を今回のドラマで、自分で知ることとなる。それも自分の欲のために。何もコントロールできていないし、たくさんの人を攻撃し傷つけると知る。

 「何故、それだけの攻撃をするのだ」「本当に楽しんでいるのか」。
 カウンセリングさながらに、やり取りが進んでいく。

 その過程を観ていて思った。

 ロキの心理や行動って、今の社会で言えば、ハラスメントと解釈できるのかも。

 ハラスメントをする側は、周りをコントロールできる王様になれると思い、欲求を満たすためなら結果的に他者を傷つけることにためらいがない。
 でも本当の自分の心や思いはどこにあるのか。

 ロキは自分を納得させられるのだろうか。

 ハラスメント「する側」がもしも更生できるのなら、それもそれでハードな過程が必要なのではないかしら。

 悪戯とウソを重ねるロキだから、今後の展開はまったく読めない。でも心についてを扱っていると解釈しながら観ると、MCUはますます魅力的になる。

 夫に「宇宙とかマルチバースとか世界が広がりすぎて、理解できなくなっていくかも。若い人たちが面白いって思っている中、私は楽しめなくなったらどうしよう。不安だー」って打ち明けた。

 すると夫はこう返してきた。
 「そんな風に不安を感じていること自体が、すごく楽しめている証拠かもよ」

 確かに。
 全力で楽しもうとしている自分を発見してしまった。


※追加:この後、2話観て、解釈をしばらく諦めました。ドラマと思えないほど。圧巻!


#ドラマ #ロキ #感想 #MCU #マーベル #心の問題 #ハラスメント

読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。