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感動するから、球場にわざわざ足を運ぶ

 なんとなくテレビを観ていたら、春のセンバツ高校野球をしている。

 ワタクシ、野球観戦がとっても好きなもので。「中継あればゼッタイ観ます!」ってほどのものでもないけれど。まあとりあえず目の前で試合やってるわって、試合展開が気になったら観てしまう。

 ……。


 そしてそのままずっと観れる。


 「かせみちゃん、今、高校野球観に甲子園来てるよ~」。
 観始めてから30分経たないうちに、関西の友人からメールが入った。
 写真がついているので観ると「わあ。良いなあ。球場」。気持ちの中にぽわんとハートが浮かぶ。
 「三塁側アルプススタンドにいるねんね。テレビでめっちゃ観とく!」と返事をしたら、どこどこの看板の下辺りとかいうのでもう録画しちゃった。

 野球場に入るといつも胸いっぱいになるのは何だろう。

 初めての野球場は、ヤンキースタジアム。3階だったと思う。家族プラス兄の友人たち何人かで観に行って、麦わら帽子を飛ばして落としてしまった。プレーしている選手たちは、遠いからとても小さくて。まだあまりルールもわからない。でも兄の友人たち日本人もみんなヤジ飛ばしまくっていて面白かった。父も母も楽しそうだった。

 当時は兄に「好きな選手」を決めさせられて、構え方に特徴のあるミッキー・リバースが好きなことにした。よくわからなかったけど。

 帰国したら、プロ野球の雰囲気に慣れなくて高校野球が好きになった。テレビの作る感動物語は、小学二年生女子の心をとらえてしまい、ボタボタ涙を流していた。
 祖父も父も兄も阪神タイガースのファンだったので、その後の私も気が付けば阪神ファンに。とにかく祖父も父も兄も野球を観るのが好きだったから私も必然的に観る流れになる。
 毎晩のように阪神の試合を観た。アニメや漫画でも野球のストーリーを楽しみ。

 特にマンションに住んでいた頃は、阪神の試合を観ながら父がビールを飲み、兄が選手についてあーだこーだと教えてくれるのが全部セットで記憶に残っている。
 ただいつも勝ちきれないチームだったので1985年に優勝した時は、大騒ぎになった。

 当時は7回攻撃前に風船を飛ばすのも新しい試みだったし、熱狂的なファンたちで埋め尽くされた球場の声援が迫力。
 「私も行ってみたい」と父にお願いして、中学三年生の時だったかに初めて甲子園球場に行った。

 暗い通路を歩き、階段を上がると、ぱあーっと目の前に広がる景色。そこは野球をするためだけにあって、広がっているのに囲われている。黒々と大きな電光掲示板で景色が引き締まる。私にとっては神聖にさえ思える特別な空間。

 テレビで観るよりうんと広く見える球場は、その後も行く度に「想像以上に」心揺さぶられる。試合に向けての楽しみとで胸いっぱいになるから、通路から球場に出る瞬間は、いつも少しドキドキしてしまう。

 初めての観戦は一塁側の内野席。ピッチャーの球の速さや一塁走者の動きがよく見えて面白かった。隣に座ったおじさんが大きな声援を送り、初めて来た私に各選手の応援歌の歌詞が書かれた紙をくれた。
 確かピッチャーは伊藤で5-1で勝った。

 6時台に始まる試合は長いと10時半を超えることがあり、帰宅すると11時半過ぎてしまう。友達たちや従妹と観に行ったりもしたけど、夜遅いので必ず父や兄についてきてもらって球場に行った。時には熱狂的な阪神ファンだった祖父とも。
 高校生の頃には、鉢巻をつけて外野席から関西弁で声援を送るファンと化してしまっていた。隣りで父は座り、微笑みながら私を見守っていてくれた。

 ちょっと黒歴史なのだ。

 でもすごくすごく楽しかった。

 外野で応援していると、ファン同士の一体感だけではない。ピッチャーが投げてからの各守備の動きや走者の動きがよく見えるのは、野球観戦者にとって醍醐味のはず。遠いので打球を時々見失うけれど、ライナー性のホームランのスピード感にはしびれるんだよ。

 それと同じくらい楽しめるのがバックネット裏。
 やっぱり守備や走者の動きがよく見える。騒げないけど、じっくり観れるのと、ピッチャーの向かってくる球のスピードを感じられる。私はキャッチャーのポジションがキュンと来るくらい好きなので、キャッチャーの目線を多少感じられるのも良い。もちろんだいぶ遠いけど。

 そんなため大好きだったのは、アイドルとか俳優とかじゃなく、阪神の選手だった(キャッチャー)。

 雑誌は「月刊タイガース」を買い。当然読者投稿をし。阪神が勝つと翌朝、おじさんたちの波にもまれながら駅売店でスポーツ新聞を買い。阪神の記事を切り抜き。ノートに選手たちの身長や体重など書き込み覚えていった。
 そのエネルギーを勉強に向けていたらどれほど良い成績を取れていただろう。

 兄は高校野球が行われている球場へ売り子のアルバイトに行った。疲れると最上段で座って休みがてら試合を観ていたらしく、試合の合間には控室に行く選手たちを観に行ったようで、帰宅する度「今日は〇〇選手とすれ違った」などと自慢していた。


 私も大学生になると落ち着いてきて、バックネット裏を好むようになった。良い席が取れないことの方が多いので、上の方だけど内野席で楽しんだ。

 高校野球も観に行った。
 松井秀喜の5打席連続敬遠の時、内野席で観戦したのは、私の自慢。
 当時はつまらなく思ってしまった。高校野球は、高校生たちが青春をかけて、1勝をかけて頑張っている。試合はファンサービスのためにやっているものではないから、あれで良いんじゃないかと今は思う。ただ当時は球場にまで来て、松井がバットを振る場面を見れないのかと残念でならなかった。混んでいると、球場に入れない日もあったし。ただやっぱり高校野球って、高校生たちのものだからね。観ている側も、特に大人になってからはそれを忘れずにいたいもので。

 高校野球の試合は、プロ野球と違う独特の緊張感を実感できるのも面白くて、その日は3試合観て帰った。8時間くらい座って、顔や腕のシミのもとをたくさん作ってしまった。

 その後、ニュージャージーに行った時に当時彼だった夫とヤンキースタジアムへ。
 日本の球場よりすり鉢状に深さがあって、その広さにやっぱり胸がいっぱいになった。

 息子を連れてだと、札幌ドームに。
 日本ハムに大谷翔平がいた頃。
 球場の雰囲気は25年も経てば変わるんだなあ。

 選手たちの応援歌やプチ情報が電光掲示板に次々と出されるから、試合も観たいし酔いそうになる。試合が終わればお立ち台で話す選手たちの声も届きやすいよう工夫されており、ショーのようだった。

 ドームでの試合はどんなものかなあと思ったけど、空への抜けた感じはないにしてもグランドが見える位置に来るとどうしても胸がいっぱいになる。
 幼い息子を連れて、グランドが見えるドーム内の遊び場に来ることは何度かあったけど、「これから試合がある」ってやっぱり気持ちがたかぶっているのかな。

 試合が始まる前の、球場に入った瞬間の気持ちって独特なんだ。他では味わえない。


 高校生の頃に時々試合を観についてきてくれた友達の一人が、今回写真を付けてメールをくれたのだった。

 春のセンバツ高校野球の時の甲子園球場って、意外と寒いのよねぇ。寒くてじっと観ていると全然集中できなくなってくるのよねぇ。鳩も寒そうだわ。とか試合と関係ないものまでやたら目についてしまったり。
 でもあの場にいるんだなあ~。良いなあ。体感するって特別なんだよなあ。
 ああー私も球場にまた野球観に行きたい!!


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読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。