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紹介したい大好きなカフェ~shozo cafe~

 18年ほど前に今の土地に住み始めた頃。友達や知り合い、親戚が周りにいないだけでなく、子供を少しの間、快く預かってくれる場所もなく。児童館もなく。公園に行っても親子連れはおらず。いわゆる「田舎の小さなショッピングモール」はおろか、息抜きできるようなカフェの一軒も見つからず。

 ずっと息子と一緒にいると息が詰まりそうだった。
 大勢でいるのが苦手で何かの中心になるのが苦手な私がアパートで子育てサークルを立ち上げた。

 それでも気軽に出かけられる場所はなかなか見つからない。
 毎日のように近くの小さな公園で遊ばせていたけど、やっぱり大人の時間が欲しくて仕方なかった。そんなの求めるのは、特に当時はぜいたくとされていたのも知っていたけど。
 少なくともその前に住んでいた札幌では、週に1~2回、2~3時間、保育園で見てもらえたし、近くに児童館は3つあって、午前中ならいつ行っても良かった。親同士でゆっくり喋ったり、一人の時間が少しでも持てたりした。一人の時は少しゆっくり買い物してカフェでひといきつくくらいですぐに時間は過ぎる。それでも気分転換には充分だった。

  夫は愚痴を聞いてくれたし、早めに帰ってきてくれるようになった。夫が一緒に時間を過ごす時の息子は割と上機嫌でいることが多かった。でも休みの日に行く場所はこの辺だとすぐに尽きたし私たちも飽きてきた。夫も「大人も楽しめる場所」に行きたがった。


 そこで見つけたのが、栃木県の那須高原にある「shozo café」。
 遠いけど、夫はマメに車を走らせた。
 那須に行くまでだとドライブも楽しめるし、道中や行き先で子供が遊ぶ場所もあったし、毎度カフェで美味しいコーヒーが飲めるのだった。実は私はそこでコーヒーはフレンチローストのような、酸味より苦みが強いものが好きだと知ったのだ。

 店内は基本的に子供は出入りできなかったけれど、毎日号泣するような息子でも中に入れた。
 息子の唯一と言って良いかもしれなかったやりやすい部分。

 それは、「食べている間は静か」。

 食べている様子だけを知っている人には「そんなに泣くの?」って信じてもらえなかっただろうし、毎日大泣きの様子を見ている人には「食べている時、静かにしていられるの?」って信じてもらえなかっただろう。

 食べるのに貪欲な息子は、かなりのペースで「この子はいつだってお腹が空いているのでは」と心配になるほど必死で食べて、自分の分が終わると、夫の膝の上に乗って時々夫に分け前をもらっては満足するのだった。足りていないわけでもなさそうだったんだけど。
 今はそんなことないのに。食欲に関しても好き嫌いに関しても、年相応のように見える。

 だからそのカフェに行った時、食べている間はとにかく静かでいてくれて、店員さんたちも可愛がってくれた。
 夫の膝の上に座ると、似た顔がトーテムポールみたいに上下並んで二人でスコーンを食べる姿はキュンとするほど愛らしかった。

 そのカフェでは何もかもが美味しかった。コーヒーだけではない。スコーンもケーキも美味しくて、夫は「この店には小麦粉の神様がいる」と絶賛していた。

 専門的な知識もないのでよくわからないのだけど、スコーンを食べた時に香るのはなんだろう。ほわっと広がる香りに小鼻も広がってしまう。密度は高過ぎず、ほぐれ方もほろほろとしているのにしっとり。
 タルトも。土台がどれも固くて香ばしく、乗っているフルーツやナッツも風味豊か。
 シフォンはそれはそれで柔らかくてしっとり吸い付くような弾力がある。


 そのshozo cafeが、福島県白河市にできていると最近夫が知って、行くことにした。
 那須とは店のシステムが違い、セルフサービスで、カウンターで注文するようになっている。ショーケースに並ぶケーキを見て、フルーツロールを頼んだ。

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 「うわおいしい! 良い香り」。卵の風味が強くてまた鼻の穴が広がる。そして中のクリームがしっとりしているのにくどくない。生クリームがあまり得意ではない私だけど、いくらでも食べられそう。
 そうだ。書いておかなければ。
 スコーンにつくクロテッドクリームがまた驚きの美味しさなのだ。一時、あれやこれや取り寄せてみたけど、shozoのクロテッドクリームくらい美味しいものにはなかなかありつけない。生クリームほど軽くなく、クリームチーズのように重たくもない。香りもバターのようなクセがなく、スコーンの美味しさを引き立てる。

 shozoのスコーンもケーキもクリームも、努力すれば近づけそうな「美味しいね!」を超えた「驚き」がある。

 その日、那須のshozo caféにいるはずの店長が偶然、カウンター内にいた。
 夫と「あれ? 店長さんだよね??」と戸惑いながら声をかけると、覚えていらした。

 那須に通い詰めていた頃、こまめに行くから顔を覚えられた。
 お馴染みの女性店員もいて、彼女は中で作ってもいたようで「夫が、小麦粉の神様がいるって言っているんですよ」と話すととても喜んでくれた。
 
 特に息子が2~6歳だった頃に足しげく通って、息子もよく覚えてくれている。
 外のテラス席にいた日に「何歳?」と聞かれた時のことは、息子は忘れているけど。
 当時3歳だった息子は恥ずかしがって「どこを向いているんだろう」と思うような遠くを見る目をして店員さんと決して目を合わせなかった。しびれをきらした私が代わりに「3歳……」と言いかけると、息子は突然「イナバウアー!」と叫んで身体を反らせた。
 荒川静香さんが活躍されたそんな時代。

 久しぶりにお目にかかれた店長に「ここにもできたんですね」と夫が言うと「3年前なんですよ」と言ってらした。
 うわあ知らんかったあー。

 那須よりは近いので、また行きたい。

 場所は、南湖公園と言って、白河市にある小さな湖のほとり。蕎麦屋や神社がある。白河市は関所だったので、昔の風景に思いをはせたくなるような、そんな場所に。
 shozo caféはある。

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 那須の店もそうだけど、白河のもオシャレな外観。

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 入り口もオシャレねー。全体的に、那須の店舗より少しカジュアルかな。

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 店内のレイアウト。席は点在しており、その席ごとにも個性があって楽しかった。


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