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子どもの寝顔と見つめる親

 子供が自分の身長を超え、声変わりしたら、いったいどんな気持ちになるのだろうと想像できずにいた。
 自分より大きくなってしまうと、かわいいなんて思えなくなる日が来るんじゃないかとか。ずっと子供がかわいいなんて気持ちが悪いんじゃないかとか。
 いつかこの感覚を持てなくなる日を思って、少し寂しく思ったり怖く思ったり。

 でも「かわいい」の意味合いが変わってくるんだよなあ。

 自分より小さい頃はサイズ感も含めて、あどけなさとか無垢なところとかが愛らしいけど、20歳過ぎたってずっとかわいいんだよ。私の両親は50歳過ぎた私に対しても「かわいい」と言う。

 自分の子供だからというのはもちろんあるだろうけど、自分の子供くらいの年齢の子はみんなかわいく見えてくるもので。
 息子が中学生になった頃から大学生たちもかわいく見えてきたし、息子が大学生になったら最近は赤ちゃんを抱っこしている夫婦さえもかわいく見えてきた。みんな自分の子みたいじゃないか。

 そんなものなのかもしれない。

 中でも寝顔は格別だ。

 だいなさんの記事を読んでいると、息子の寝顔を思い出したくなった。

 寝顔を見つめたり、お布団をかけたりの描写を読みながら、だいなさんの気持ちがよく伝わる。息子の寝顔を見ている時の気持ちを思い出して、胸がキュッとした。

 息子の寝顔。昼寝をしている顔は口が開いていて険しい表情だったりもするけれど、すーすー寝息をたてている姿に心やすらぎ、起こしたくなくなる。すっかり大人っぽくなったかのようでまだまだクリクリした目を、すっぽり隠したまぶた。夫似のバサバサまつげ。時々面白い寝相をしていると、可笑しくて写真に撮ってしまう。後から二人で見てお腹を抱えて笑う。
 安心タオルをまとって夢心地みたいな表情をしている時もある。
 赤ちゃんの息子は2年近く夜泣きが続いたし、昼寝もほぼしなかった。ほんとにキミは寝なかったんがウソみたいやね。心の中でつぶやきながらしばし眺める。
 きっと単純に、穏やかで無防備な様子ってかわいいんだよな。何の攻撃性もなく、本来のその子の姿を見たような気がしてくる。しかも赤ん坊の時の面影をそこに見出したりするのだから。

 ふと、父が私の寝顔を歌にしたと思い出した。

薄い陽は ビルの壁映し 眠る娘に
 まだあどけなき 嫁ぐ日の朝

 挙式のある日の朝。
 ニュージャージーから車で30分ほど。ニューヨークの市街地の教会で式を挙げることになり、両親が近くのホテルまで泊まりに来てくれた。
 私も早朝からヘアメイクや着替えがあるため、両親と一緒にホテルで一泊。
 ツインの部屋で私が一人、片方のベッドで寝させてもらったため、両親はあまり眠れなかっただろう。父が私の寝顔を見ていた心境を思う。
 20代半ばだった。

 あれから25年以上。私は、母がそうだったように夜中に度々うなされて「ふぇぇ……ひょえぇ……」と、おびえた声を出しているようだ。口を開けているせいか朝起きると時々のどが痛い。そうでなければ歯をかみしめてしまって首からアゴにかけて痛い。怖い顔をして寝ていると夫に言われる。
 かわいい寝顔とはほど遠いようだけど、きっと両親にとってはかわいいのだ。
 たぶん。



読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。