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ジャズアカデミー「バンドネオンの歴史とポスト・ピアソラ」開催しました

かわさきジャズの名物企画「ジャズアカデミー」。
ミュージシャンや専門家を講師に招き、音楽を様々な角度から語っていただいています。

今年第1回目はバンドネオン奏者の早川純さんを講師にお招きしました。
先月イタリア・サルディーニャ島で行われた国際コンクールで優勝したばかりの気鋭の演奏家です。

悪魔が発明した楽器

バンドネオンは、時に「悪魔が発明した楽器」と言われます。
その理由は、鍵盤の配列の難しさ。ピアノであればドの横がレ、その横がミ、というように音階で並んでいるのですが、バンドネオンの鍵盤は順番に規則性がなく、左右対称でもなく蛇腹の伸び縮みによっても音程が変わるので、142通りのボタンの並び方を覚えなくては演奏できないそう。正直、まったく覚えられる気がしません。(クロマチック配列のバンドネオンもあるそうですが)

早川さんが使用している楽器は100年ほど前に製造されたもの。ボタンは象牙製。

でもこの複雑な機構こそが、バンドネオンの何ともいえないあの音色を作り出しているのではないかと言われているそうです。
音を出す仕組みは簡単なので、ボタンを押せばだれにでも音は出せる。でも「音色」は、プレイヤーによって違うのが不思議なところ。早川さんの師匠のモサリーニ氏も、音色の深みが違ったといいます。

ピアソラとその後

ところでバンドネオンといえばアルゼンチンタンゴですが、日本で流行ったタンゴと言えば「黒猫のタンゴ」や「だんご三兄弟」。少々残念な伝わり方をしているのかもしれません。
そんな中、いつかテレビCMで流れたピアソラの「リベルタンゴ」の衝撃は大きかったですね。ヨーヨーマのチェロがまた渋くてカッコよかった・・・。
日本でも大ブームを巻き起こしたピアソラ(クラシックの名教師ナディア・ブーランジェに師事していたという話も)に影響を受けた作曲家は数知れず。でもピアソラ以後はピアソラ「みたいな」曲ばかりが量産されてしまうという状況も訪れます。
そもそも奏者も少なく、主だった楽器工房も世界に6か所ぐらいしかなく、100年前の楽器を使い続けているため「絶滅危惧種」とも言われる楽器。
ピアソラブームのその後を切り開いていくのは誰なのでしょうか。「バンドネオンの可能性は、バンドネオン奏者が切り開いていくしかない」と早川さんは語ります。後半は早川さんの演奏によるミニコンサートで、様々な切り口の楽曲を披露。最後は自身の作曲による「ミの律動」―ミが多用される疾走感のある曲でした―の演奏でこのレクチャーを締めくくりました。

盛りだくさんの話題と演奏で2時間があっという間でした

※本講座のダイジェストを後日YouTubeにて配信予定です。お楽しみに!
※(10/12追記)YouTube公開しました!


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チッタの歴史は日本のエンタメの歴史!貴重なお話をお聴きのがしなく。