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[ライブレポート]11/19 A Night of Brazilian Music & Jazz@ミューザ川崎シンフォニーホール (第二部)

※この記事は<ロビーコンサート~第一部>からの続きです

【第二部】<BLUE NOTE TOKYO ALL-STAR JAZZ ORCHESTRA directed by ERIC MIYASHIRO>

エリック・ミヤシロ(tp,flh,cond) 本田雅人、小池修、米澤美玖、高尾あゆ、渡邉瑠菜(以上sax,fl) 中野勇介、小澤篤士、山崎千裕、具志堅創(以上tp) 中川英二郎、高井天音、石橋采佳、小椋瑞季(以上tb) 宮本貴奈(p,kb) 川村竜(el-b) 岩瀬立飛(ds)

ステージの上は中央のドラムセットが取り除かれ、ピアノの向きが変わってキーボードが追加されている。バンドメンバーが全員黒ずくめの衣装で登場すると拍手が起きる。会場が暗転してエリック・ミヤシロが登場すると一層大きな拍手。ファンファーレのような管のイントロから、「Blue Horizon」。アップテンポで、輝かしい管のアンサンブルをバックに、エリックが短いフレーズを吹いては指揮をする。一糸乱れぬ各セクションの揃い方はさすがだ。ソロは小池(ts)、中川(tb)、本田(as)の順。

小池修

次は「What About Me」。ファンクビートで、若手の代表格、渡邉瑠菜が若さ一杯の力強いソロを吹く。エリックに、有望な若手、と力強く紹介されている。

渡邉瑠菜

次はスティービー・ワンダーの「Overjoyed」をラテン風にアレンジ。エリックはフリューゲルホーンに持ち替え、柔らかい音でテーマを吹く。宮本貴奈、川村竜がソロを取っている間に、エリックがトランペットセクションの一番端にいた山崎千裕のところにミュートを借りに行って、ミュートトランペットでソロを取ったり、芸が細かい。

エリック・ミヤシロ

次は亡くなったチック・コリアの思い出を語って、チックの「Nite Sprite」。快適な16ビート。宮本貴奈はキーボードでギターのような音を出したり、ソロの音色に変化を付ける。超速のアレンジで、エリックは要所で指示を出すだけであとはバンドが自律的にアンサンブルを奏でる。クレッシェンド、デクレッシェンドは両手を上げたり下げたりして指示を出す。音がピタッと揃うのが気持ちいい。

宮本貴奈

次は吹奏楽でゲストに良く呼ばれ、アンコールで良く演奏される曲、と言って、「宝島」を始めとする和泉宏隆の曲のメドレー。本田雅人はウィンド・シンセサイザーを吹く。笛のような、キーボードのような多彩な美音を奏でる。

本田雅人

次はイヴァン・リンスの「Daquilo Que Eu Sei」。「彼は譜面が読めず、理論も知らないが繊細な曲を書く。それは小さいことからあらゆるジャンルの音楽を聴いて育ったから」とエリックが解説して、フリューゲルホーンで柔らかくテーマを吹く。寄せては返す波のような管のうねり。このバンドの完成度、やはり日本で聴ける最高のビッグバンドだとの感を深くする。

そして再びチック・コリアで「Spain」。小池修、渡邉瑠菜、本田雅人がフルートに持ち替え、独特の8ビートのアレンジで始まり、本編は16ビート。客席に手拍子を促す。ソロは本田(fl)に続いて中川(tb)。中川はバンドがお休みしてトロンボーン一本だけのソロも披露してウケる。そしてビッグバンドとドラムスのトレーディングもカッコいい。思わず歓声を上げてしまった。

中川英二郎

「この3年、お客さんとミュージシャンの距離が遠かったが、やっとこうして近くで聴いて貰えるのは本当に嬉しい、是非ナマの音楽を聴いて欲しい」とエリックが感謝の言葉を述べて、ラストは「Lingus」。16ビートで重層的に重なり合う管のアレンジ。5拍子になったり、少しずつずれた音の重なりなど、複雑なアレンジを一糸乱れずやってのける。ここで米澤美玖が初めてテナーソロを取る。太く艶のある音で渾身のソロ。たっぷり尺を取って、会場を魅了する。

米澤美玖

アンコールは、いったんはけてからだと時間がかかるからと、メンバーはそのままで、山中千尋とMARIANAが加わってブラジリアン・メドレー。「Mas Que Nada」、「O Pato、Samba De Uma Nota Só」と続いたところでバンドがお休みして、山中千尋のピアノソロはなんと「ラプソディ・イン・ブルー」。そして再び全員で「So Danco Samba」。ブラジル音楽の夜に相応しい、お馴染みの曲が聴けたのは嬉しい。

エリックが「時間が押しているがもう一曲いいですか」と言って満場の拍手の中、ダブルアンコールは「Birdland」。サックス、トロンボーン、トランペット、キーボード、ベース、ドラムスと、メンバー全員のソロに続いて、最後はエリックがピッコロトランペットの輝かしいソロでコンサートを締めくくった。

メンバーの最後の一人がはけるまで、惜しみない拍手が続いて、本邦トップレベルのビッグバンドのコンサートは幕を閉じた。

終演後、バックステージにて

TEXT:Ikeda Nori(かわさきジャズ公認レポーター)
PHOTO:Tak. Tokiwa

セットリスト

  1. Blue Horizon

  2. What About Me?

  3. Overjoyed

  4. Nite Sprite

  5. Izumi Medley (宝島+α)

  6. Daquilo Que Eu Sei

  7. Spain

  8. Lingus

Enc1. Brazilian Medley (Mas Que Nada、O Pato、Samba De Uma Nota Só、Rhapsody in Blue、So Danco Samba)

Enc2. Birdland

公演情報

かわさきジャズ2023 A Night of Brazilian Music & Jazz
日時:2023年11月19日(日)開演18:00(開場17:00)
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール