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【書評】歴史の教訓からコロナ対策を考える〜『感染症の日本史』(磯田道史)

今年は、「この新型コロナウイルスの状況でなければ読まなかった本」というのがたくさんあります。この本もそうです。『感染症の日本史』。著者は『武士の家計簿』でおなじみの歴史学者・磯田道史さんです。今の時期だからこそ、大いに読む価値のある本でした。

※書評一覧の目次はこちら

1、内容・あらすじ

気鋭の歴史学者・磯田道史さんが、様々な古文書から過去の感染症の記述を掘り起こし、そこから読み取れる新型コロナウイルス対策を考えます。

特に、新型コロナウイルスと共通点が多い「スペイン風邪」について多くのページを割き、我々が取るべき対策を歴史的教訓から示します。

2、私の感想

感染症という切り口から日本史を見るという、斬新な本です。

「歴史とは靴である──歴史は単なる過去の記録ではなく、日常生活でも生かすことのできる教訓の宝庫だ」が持論の磯田先生らしい、極めて実用的な内容です。

「感染症のパンデミックは歴史上何度も繰り返されてきたことであり、今後も多分に起こり得る」ということが、この本を読むとよくわかります。

なんとなく我々は、この新型コロナウイルス騒動は降ってわいたような災難である気がしていますが、そうではないということです。今までもたくさんあったし、これからもきっとあるのです。そのことを教えてくれる本です。

そんな歴史から読み取った、新型コロナウイルスへの対策がいちいちもっともで、うなずいてしまいます。いくつか引用するとこんな感じです。

衛生政策で有名な後藤新平は、「寝覚めよき事こそなさめ、世の人の、良しと悪しとは言ふに任せて」と詠みました。私はこの文章を書くときに、部屋にこの後藤の歌の掛軸を懸けていました。緊急時のリーダーは、世評は放置し、仁慈・良心に従って断行する必要があります。
国民のマスクを全備するような二十一世紀型の新しい「国防」を構想する必要があります。防衛する対象への認識を変えなくてはなりません。今世紀の真の最大脅威は、「敵の国」よりも「ウイルス」だということです。
いつの時代の、どんなパンデミックも、相手が「新」型である限り、当然、未知なのですから、政府は知識不足で、これに臨むことになります。そんなとき、世界中の国々や都市の対策を横目でよくみなければなりません。そして、世界をみて、一番、感染者や死者を減らしている国の対策を素早く取り入れるのが大切です。

また、『感染症の世界史』の石弘之さんとも親戚だったとは驚きです。こちらも今、読むべき本です。

3、こんな人にオススメ

・歴史好きな人
これは言わずもがなかと。新しい日本史が浮かび上がります。

・コロナウイルスの行方が気になる人
気にならない人はいないと思いますが、この本を読むと終息へのロードマップが見えてくるような気がします。

・磯田ファン
磯田先生が慶応に入り直した理由もわかります。これは貴重。

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