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【書評】サイコパスの少年vs殺し屋軍団〜『マリアビートル』(伊坂幸太郎)

久しぶりに伊坂幸太郎さんの作品を読みました。『マリアビートル』。先日、『世界一受けたい授業』でタレントのフワちゃんが紹介していた本です。『グラスホッパー』に続く殺し屋シリーズの第2作目ということになります。

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1、内容・あらすじ

舞台は盛岡へと向かう東北新幹線「はやて」の車内。

この新幹線の中に、どういうわけか4人の殺し屋が偶然?集結してしまいます。

デパートの屋上から息子を突き落とされた復讐を企てる、アル中の元殺し屋「木村」。「業界」の大物に息子の護衛を命令された二人組の殺し屋「蜜柑」と「檸檬」。腕は立つのにことごとく運に恵まれない気弱な殺し屋「天道虫」。

さらに、中学生ながら悪魔のような心を隠し持つサイコパスの「王子」がこの殺し屋たちの中に加わり、車内はとんでもないことに。

さらにさらに、前作でも登場した殺し屋たちも登場し、終盤では意外な人物も参戦。事態は混乱を極めます。

果たして、この混乱状態の中で生き残るのは誰なのか──。

2、私の感想

伊坂さんの小説を読むと毎度毎度同じ感想を抱いてしまいます。「一体なんという話を思いつくんだ!」という感想です。

殺し屋たちが次から次と登場し、誰が加害者で被害者なのか、どんどんわからなくなっていきますが、最後は見事に物語が着地します。

しかも話は全て「新幹線の車内」という狭い空間だけで繰り広げられます。生半可な技量ではありません。稀有な小説家だなあ、とつくづく思います。

話を一言でまとめると「サイコパスの少年vs殺し屋たち」ということになるでしょうか。

無敵だったサイコパスの少年が、殺し屋に追い詰められるのが見所であり、痛快です。

この少年が実に憎たらしいのです。悪意のある人間を描かせたら、伊坂さんの右に出る者はないと思います。

少年が発する「どうして人を殺してはいけないの?」という質問に、ある登場人物が答えるのですが、この答えが秀逸です。思わず唸ります。依存症についての考察も興味深かったです。

『グラスホッパー』の続編ですが、完全に話が繋がっているわけではないので、単独で読んでも十分楽しめます。しかし、前作の登場人物がさりげなく出てきて重要な役割を果たすので、前作を読んでいるともっともっと楽しめます。

3、こんな人にオススメ

・『グラスホッパー』を読んだ人
明らかにパワーアップしています。あの世界観そのままでさらに面白くなっています。

・スカッとしたい人
中盤まではずっとモヤモヤしますが、それだけに終盤での爽快感は格別です。

・鉄道ファン
意外にこういう人にも需要がある小説なのではないでしょうか。


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