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【書評】水墨画が青年の心を救う〜『線は、僕を描く』(砥上裕将)

絶望の中にいた青年が、偶然出会った水墨画とそれに関わる人たちに心を救われる──という作品です。

『線は、僕を描く』
。作者は砥上裕将(とがみひろまさ)さん。本屋大賞ノミネート作品です。

※書評の目次一覧はこちらです

1、内容・あらすじ

主人公は青山霜介という大学生。

霜介は17歳の時に両親を交通事故で亡くし、それ以来孤独と喪失感を抱えて、無気力な日々を送っていました。

ある日、彼はアルバイトで手伝った水墨画の展覧会場で、水墨画の巨匠・篠田湖山と出会います。なぜか湖山は彼を気に入り、その場で内弟子にすることに。

霜介は湖山の家で水墨画を教わることになり、戸惑いながらも次第に水墨画に魅了されていきます。

同時に、閉ざされていた霜介の心も少しずつほぐれていきます。

そんな中、湖山が倒れて入院してしまいます。駆けつけた霜介に、湖山は「あること」を告げるのでした──。

※漫画にもなっています。

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2、私の感想

なんといっても水墨画です。あまりなじみがない水墨画の世界が実にわかりやすく、魅力的に描かれています。この奥深くて美しい世界のことがよくわかって、大変興味深いです。

そして、主人公の霜介が、水墨画とそれに関わる人たちによって救われていく様子は感動的です。

『僕は、線を描く』ではなくて『線は、僕を描く』というところがポイントで、この作品のテーマをよく表しています。

こちらの動画で、水墨画のイメージをつかんでから読むとさらに面白く読めると思います。

3、こんな人にオススメ

・何かに傷ついている人
湖山の温かい言葉に救われることと思います。

・水墨画のことを全く知らない人
ぜひ読んでみてください。水墨画の世界に魅せられます。

・書道をやっている人
墨や筆、という共通点があるので、もしかしたら新しい発見があるかもしれません。

作者の砥上裕将さんは現役の水墨画家とのこと。文章だけでこんなに水墨画の魅力を伝えられるなんて、筆力もかなりのものだと思います。

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