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【書評】コロナ後の世界はどうあるべきか〜『コロナ時代の僕ら』(パオロ・ジョルダーノ)

これは、とあるラジオで紹介されていた本です。この情勢下、「今こそ読むべき本」「今しか読まないであろう本」をなるべく優先的に読むようにしているのですが、この本もまさにそうでした。『コロナ時代の僕ら』というエッセイ集です。著者はイタリアの小説家、パオロ・ジョルダーノさん。

※書評一覧の目次はこちら

1、内容・あらすじ

イタリアで数々の文学賞を受賞した小説家、パオロ・ジョルダーノさん。

「この災いに立ち向かうために、僕らは何をするべきだったのだろう」

「何をしてはいけなかったのだろう」

「そしてこれから、何をしたらよいのだろう」

2020年2月29日から3月4日までの間、彼に訪れた「空白」の時間を利用して書き綴られた27編のエッセイです。

2、私の感想

分量自体は少なく、わりとあっという間に読めてしまいます。しかし、その短い中に、宝石のような、示唆に富んだ文章がぎっしり詰まっています。

筆者は物理学を専門としている小説家だということで、コロナウイルスの感染の広がり方などを、数学的に、比喩なども用いながら説明してくれています。とてもわかりやすく、納得できる文章です。

災害時に話題になりがちな「専門家のはずなのにみんな言っていることが違う」という現象についても解答を示してくれています。

コロナウイルスで浮き足立っている人も、我に返って落ち着くような、そんな効果がある文だと思います。

そして、実はこの本の真髄は「著者あとがき」にあります。「コロナウイルスが過ぎたあとも、僕が忘れたくないこと」と題されたこの文章は圧巻です。

ここ最近、色んなところで「収束後にこの社会はどこまで元通りになるか」というような言説を目にしますが、「コロナ収束後、何に元通りになってほしくないか」を書いたのはこの人だけではないかと思います。

僕は今、忘れたくない物事のリストをひとつ作っている。リストは毎日、少しずつ伸びていく。誰もがそれぞれのリストを作るべきだと思う。そして平穏な時が帰ってきたら、互いのリストを取り出して見比べ、そこに共通の項目があるかどうか、そのために何かできることはないか考えてみるのがいい。

この文章の後、「僕は忘れたくない。」という文に続けて、筆者が忘れたくないたくさんの事柄が列挙されます。冷静ながらも、強い決意が込められた筆致に圧倒されます。このあとがきの部分だけでも読む価値はありです。

全世界共通で読まれていい本だと思います。

3、こんな人にオススメ

・不安で浮き足立っている人
とにかく情緒不安定で落ち着かない、という人に特にオススメします。

・今の状況を冷静に分析したい人
科学的思考、というようなものを学べます。説得力もあります。

・コロナ後の世界について考えたい人
収束後のことを考え始めるための「軸足」を得られると思います。

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