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【書評】大人も楽しめる超一級ファンタジー『十二国記シリーズ』小野不由美

去年、久しぶりに続編が出て話題となった『十二国記』を紹介します。大人も読んで楽しめるファンタジーだと思います。

現在、15冊まで出ています。第1巻だけ貼っておきます。

※書評の目次一覧はこちらです

1、あらすじ・ストーリー

我々の世界とは別なところ(異次元?)にある異世界・「十二国」の世界が舞台です。

たまに「蝕(しょく)」と呼ばれる現象によって、こちらの世界の人間が向こうにまぎれこんでしまうことはありますが、基本的に二つの世界は行き来できません。(下で述べる王や麒麟は例外です)

幾何学的に並んでいる十二の国は、それぞれの王が治めています。

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この世界では、麒麟と呼ばれる霊獣が直感で王を選び、国を治め、麒麟がその補佐をします。

王が天命に背いた非道な政治を行うと麒麟は病み、やがて王も死んでしまいます。

十二の国は、それぞれ気候風土や政治体制、豊かさなどが全く違います。

王の力量やキャラクターもまるで違い、安定している国は同じ王が何百年も統治していますし、そうかと思えばコロコロと王が変わっている不安定な国もあります。

それぞれの国で生きている王や麒麟や臣下や民たちの姿を描く、壮大なスケールの物語が『十二国記』シリーズです。

2、私の感想

「これからこの作品を読める人は幸せだなー」と思います。私も約1ヶ月、ずっと十二国記だけを読んでいましたが、とても濃密で幸せな時間でした。

まず、「これって知らないだけで本当にある世界なんじゃないの」と思うくらいに設定がしっかりしていて、物語に入り込めます。ファンタジー作品はここが大事。

そして、完全な異世界ではなく、ときどきこちらの世界とも行ったり来たりするところが、物語を親しみやすくしている要因だと思います。こちらの世界の記述が出てくると、なんだかホッとするのです。

中には、一冊ほぼ丸ごとこちらの世界が舞台、という巻もあります。
それがこちら。ストーリー上、かなり重要な役割を持つ巻です。

巻ごとに描かれている国は違います。各国の王や麒麟たちが集まるオールスター編の巻もあります。

長大なシリーズならではの醍醐味を味わえます。きっとひいきの国やキャラクターが見つかることでしょう。

新潮社の特設ページを見ると、どの巻がどの国の話かわかります。このホームページ、よくできていてカッコいい!

この十二国記、人間の苦悩がしっかり描かれているという点もいいところです。

異世界といえども我々と一緒で、民はもちろん、王も麒麟も家臣たちもみんなそれぞれの立場で必死に生きています。

彼らの生きる姿や言葉から生きるヒントをもらえることもしばしば。私は読みながら登場人物たちのセリフにいっぱい線を引きました。

「どっちを選んでいいか分からないときは、自分がやるべきほうを選んでおくんだ。そういうときはどっちを選んでも必ずあとで後悔する。同じ後悔するなら、少しでも軽いほうがいいだろ」(十二国記1『月の影 影の海』より)

いいことを言う!これなんか進路選択の時に参考になりそうなセリフです。

Twitterで、「十二国記の名言をつぶやくbot」みたいなアカウントを見たこともあります。

3、こんな人にオススメ

・ファンタジーが好きな人
きっとハマります。間違いありません。『グイン・サーガ』『獣の奏者』などと共に、押さえておくべき作品です。

・ファンタジーが嫌いな人
こういう人こそ、ぜひ読んでみてほしいです。世界が変わります。

・現実を忘れたい人
現実を忘れるどころか、しばらく向こうの世界に行ったまま帰ってこられなくなるくらいです。

この十二国記、長編は去年出た作品で最後だとか。寂しい限りです。

なんでも短編集がもう一冊出るらしいので、それを楽しみに待ちたいものです。

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