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この町の豊かさと地域に息づく歴史に魅せられて

遠藤典子さん
川俣町ご出身の遠藤さんは、大学進学を機に町を出られ、福島市や郡山市で働かれた後、2016年に川俣町にUターン移住をされました。現在は、福島市の設計事務所に勤務しながら、江戸時代に建てられた高橋家住宅の保存活動、山木屋地区での大麦・ライ麦栽培活動を始め、まちづくり活動に積極的に取り組まれております。

どのようなまちづくり活動をされていますか?
主に2つあります。ひとつは、「高橋家住宅保存会」の活動です。高橋家は江戸時代から、絹を始め、いくつもの商いをしてきた商家です。現在残っている家屋の一部は江戸時代安政年間に建てられたもので、今では珍しい江戸の商家造りが残っています。高橋家住宅を公開し歴史を紹介するとともに、コスキンナイト(フォルクローレ音楽のミニコンサート)やキャンドルナイト等、イベント・ワークショップを定期的に開催しております。
この建造物を町おこしの情報発信基地として活用したいと思い、コーディネーターとして活動しております。
もうひとつは、「山木屋地区の耕作放棄地で何かを育てたい」という想いの仲間とともに行っている、山木屋地区でライ麦・大麦を育てる「山木屋ダーチャ」の活動です。ダーチャとは、ロシアの言葉で、現在は郊外にある別荘や菜園を指します。元々はロシア政府が食糧不足対策として国民に土地を与えたことから始まり、ダーチャ施策には「自分の食べ物は自分たちで育てよう、そして楽しく豊かにたくましく生きていこう」という考えがあります。
この山木屋ダーチャも、自給自足や真の豊かさを考える場になればいいなと思っています。2020年11月から始めた活動で、現在は収穫した麦をどう活用していくか検討しているところです。

まちづくり活動に関わられるようになったきっかけは?
私は、人々の生活の営みに関心があります。学生の頃から路地に入っては、「あの階段の先には何があるのだろう、どんなひとが生活しているのだろう?」と想像を膨らませワクワクしていました。
2016年に川俣町に戻ってきて、一時期、川俣町内の特産品を取り扱っている「シルクピア」というところで働いていました。そのときに職人さんをはじめとした、町の伝統や歴史を守る人たちに出会いました。
川俣町の素晴らしさは小さい頃から見聞きしていたつもりでいましたが、自分の身近にこんな面白いひとたちがいることに改めて気づきました。その後、まちづくり関係のワークショップに参加し、「地域の豊かさとは?」ということを模索し始め、私は、「日常にある、私達が気づいていない川俣町の豊かさや面白さを見つけ、発信していきたい!」と強く思うようになりました。

現在の活動をされていてのやりがいは?
簡単にうまくいかないことでしょうか。今まで本当に、うまくいかないことがたくさんありました笑 それでも、こういった活動をしていると、様々な価値観、考え方を持った人たちに出会うことができて面白いなと思います。私は、短気な所があるので、古関裕而ゆかりの地でもある仙臺屋呉服店さんのお茶室のお手入れをしている、茶道の先生にならって茶道を通じて精神を整える方法を学び始めました。まちづくり活動を通して今までご縁がなかった世界と出会えるのも魅力ですね。

挫折しそうになったことは?
迷いや反省は常ですが、挫折はないです。なぜかというと、いつまでにこれを達成しようという立派な目標は立てるのを今は止めたからです。はたからみると中途半端に思われるかもしれませんが、絶対的な目標を設定していても、コロナなどの外部からの影響が原因となり自分の力ではどうしようもないトラブルが起きることがあります。いつも、柔軟性、臨機応変さを大事にしながら、道草しつつ、この活動をずっとやり続けることを考えています。

今後取り組みたいことは?
まだまだ、たくさんあります。
まずは、町の歴史的建造物の活用です。現在、ヘリテージマネージャー(地域歴史文化遺産保全活用推進員)の資格取得に向けて勉強しています。ヘリテージマネージャーとは、地域に眠る歴史文化遺産を発見し、保存し、活用して、地域づくりに活かす能力を持った人材のことです。今後この資格を生かして高橋家住宅だけではなく川俣町に眠る、様々な建物を対象に調査観察を実施し、記録に残したいです。そしてより有効的な活用方法を探っていきたいと考えています。
あとは、町で作られている桶や、収穫した麦の穂で作るヒンメリなどの魅力的な商品を販売するような場も作ってみたいですし、どこかに自分で小屋を作ってワークショップやるのも面白そうだなとか。近隣市町村には、ユニークな取組をされている方も多いので、その方々とも連携し地域の可能性を広げていけたらいいなぁと思っています。

川俣町の魅力は?
面倒見が良く、情に厚い人が多いところですね。私達の活動に厳しい意見をおっしゃる方もいるのですが、それでも助けてくれたり、差し入れくださったり。皆さん、本気で心配し考えてくださっている証拠ですよね。

川俣町に住んでいて大変なところは?
大きな本屋やカフェがあったらな、なんて時々思いますが、特に不便は感じていませんね。でも、雪道の運転は要注意!私は苦手です。

あなたにとっての川俣町とは?
日常的に暮らしている場所ですが、同時に非日常に連れて行ってくれる場所でもあります。高橋家住宅や仙臺屋呉服店の建物には様々な歴史やストーリーが眠っていて、タイムスリップしているような気持ちになります。また、静かな夜の町内は、民家に灯った明かりがとても綺麗で、幻想的な雰囲気に包まれており、自分の知らない世界に迷い込んだような気持ちになります。ファンタジーのような、ジブリの世界のような!

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移住検討されている方に一言お願いします
この町には大きな商業施設やランドマークはありません。でも、一度来て過ごしてみると、ランドマークには負けない、暮らしの良さ、ひとのあたたかさがわかると思います。困っていたら誰かが手を差し伸べてくれるあたたかさのある場所だと思います。ぜひ一度、じっくり来てみてください。

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高橋家住宅は毎月第3日曜日に一般公開されております。

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家屋の奥には庭が続いており、今後はこの庭の活用も検討されているとのことです。

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