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大河「光る君へ」(14)星落ちてなお

 急に暖かくなり桜も一気に開きましたね。人間様はこの気候についていけてなーい。何を着たらいいのかワカリマセン。
※「源氏物語を読みたい80代母」のための企画です。最終回までこの形式で続ける所存。思いっきりネタバレ全開なのでご注意くださいまし。
お喋り役の平安女房ズは以下:
右近(右)、侍従(侍)、王命婦(王)、少納言(少)

侍「ねえ右近ちゃん」
右「なあに侍従ちゃん」
侍「案外アッサリだったよねー道長くんとまひろちゃん。家来の人がまひろちゃんの顔認証バッチリだったのはビックリだったけど」
右「そりゃお付きの人のマスト職能でしょ、出入りする人の顔と素性と所属覚えるのは。不審者対策にもなるし、上司に『使えるヤツ』と思われるためにも必須よ。それより、どーこーがアッサリ?!結構な修羅場の予感に震えるわよ?我が子が初めて『ちちうえ』ってカーワーイイ声♡で言ったっていうのに心そこにあらずってさあ道長くん。痛恨のミスね。倫子さま絶ーっ対に忘れないわアレは」
侍「た、たしかに。倫子さまの、お着替えお手伝いの申し出も断ったばかりかスっと離れて『よい風だ……』とかウットリしちゃうってさあ、ヤバヤバのヤバよね。あとちょっと何かあれば光の速さで繋がって、あの時のアレはこういうコト……?!てなる、絶対なる。そう、倫子さまならね!」
右「道長くんはほんっとわっかりやすいもんね。まずあの家来と、まひろちゃんの見送りについてた女房さんには確実にアレレ??おっかしいぞ☆って思われてるっしょ。そういうのっていつの間にか広がるからね。あんな魅力的な妻二人いてカワイイお子ちゃまもいて、仲睦まじくしてる風なのに男ってまったく」
王「夫婦の形はひとつじゃないものね。兼家さまと寧子さまの最後の会話、泣けたわ……ちゃんと蜻蛉日記読んでらしたのね。思い出の歌を今わの際に囁いて『輝かしき日々だった』って……いやもうこれ、どんな恨みつらみもチャラになるわよねそうでしょ?!さすがは私のイチ推しの男!!!やだ、また泣けてきちゃった」
侍「王命婦さんの推し語りキターーーー!!!」
右「いらっしゃい。よかった、来ないかと思ってたわ」
王「とんでもない、今ここで語らずして何のための推し?兼家回といっても過言ではない、見せ場満載の神回だったじゃない?」
少「そうですね……後継ぎが道隆さまと決まり、兼家さまにお前は汚れ役だと言い切られてからの、老いぼれさっさと死ね!は胸を貫かれましたわ。妻子にも出ていかれて、遂に一人ぼっちになられたおいたわしい道兼さま……」
侍「少納言さんの語りもキターーーー!!!」
右「いらっしゃい少納言さん。道兼さまもまたわかりやすいストレートな感情表現だったけど、さすがにあの扱いは気の毒すぎだわ。そりゃ喪に服す気もなくなるってものよね」
王「そうね、同情はする。でもF4の行成くんの言うとおり、
『普通に考えれば嫡男の道隆さまが跡目を継ぐのが順当』
なのよ。道兼さまはまだ官職もそこまで高くないし、何で一足飛びに関白になれると思ってたのかしらね……って、兼家さまがうまいこと転がしまくってたからだわね。何かごめんなさい」
少「いえいえ、王命婦さんが謝られることでは。兼家さまが道兼さまにあのような言い方をされたのって、死にゆくご自分が何もかも一手に引き受けようというお気持ちからだと思います。道兼さまの怒りや憎しみが道隆さまに向かわないように、兄弟同士揉めないように、親として最善のお振舞いをなさったのですわ。ただあの月……最期に赤く変わりましたわね。もう思い残すことはないというお顔だった兼家さまが一転、不穏に」
右「不吉そのものよね。安倍晴明の、
『今宵星は落ちる、次なるものもさほど長くはない』
というセリフが刺さるわ」
王「道隆さまはしょせん父親の劣化版だからね(断言)。定子さまを中宮にする件も、前例がない以上根回しはもっと入念に行うべきだった。若い息子をいきなり重職につけるのもね。兼家さまならもう少し時間と手間かけて(意味深)、ぐうの音も出ない状況にしてから踏み切ったはず。道隆さまは闇を知らない、知ろうともしない人だから、他人の心の綾や機微が理解できない。光が眩しければ眩しいほどつきまとう闇は濃く深くなるものよ」
侍「エッちょっと待って……一条天皇と定子さまのキャッキャウフフに毎回癒されてたのにもしかしてアレも」
右「さほど長くはない……」
少「春は必ず終わりますものね……」
王「来週も楽しみだわ(黒微笑)」

 はい、ついに兼家パッパお亡くなりになりました。これからは長男道隆の「我が世の春」。一条天皇の寵愛深い中宮定子のもとに様々な才能が集まり、一大サロンが築かれる。その一人があの清少納言です。
 ドラマ内で、ききょう(清少納言)がまひろの家を訪問してましたね。「紫式部と清少納言が膝つきあわせてお茶飲みながら喋ってる」絵面、いやもう完全フィクションとはいえイイ!良すぎ!夢の競演ですね!こういうのどんどんやってほしいです(興奮)!
 今回、道長もまひろも自分の「志」に近づくべく頑張りますが、当然のことながらすぐにうまくいくはずもなく、特にまひろは直接的にポキっとやられました。そこに追い打ちをかけるようなききょうの言葉は辛辣ですが的を射ている。実際庶民の一人二人に字を教えたところで何が変わるわけもない。まひろも、
「現実から目をそらしたまま具体的な目算も勝算もなく闇雲に行動して、何かやった気になっている」
 自分自身の姿を理解はしています。今のやり方では全然ダメだとわかった、では今後どうするか考え直さねばならない。そこでこの、ききょうの超絶カッコいいセリフですよ:
「わたしはわたしのために生きたいのです。広く世の中を知り、己のために生きることが他の人のためになるような、そんな道を見つけたいのです」
 自他の距離感をバランスよく保つことの重要性を的確に言い表した、名セリフだと思います。脚本の大石さん自身の心持ちなのかなあ。何をするにしても、自分が自分がだけではダメだし、かといって他者に対して全てを投げ出してしまうのも違う。迷走してるまひろと違って、ききょうは人生に対する望みが物凄く明快です。だからこそ、中宮定子という人生最高にして最大の推しに出会うことで、その才が一気に花開くことになるんでしょうね。
 まだまだ迷って揺れているまひろの中に、少しずつ少しずつ降り積もる様々な言の葉。いつかその圧倒的な言葉の「力」に気づき、行使する術や場を自ら切り開いていくのでしょう。ますます胸熱。一週間待ち遠しいです。
<つづく>
 



「文字として何かを残していくこと」の意味を考えつつ日々書いています。