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カンヌライオンズ2024速報 by 銀河ライター【初日】

始まりました。世界最大級のクリエイティビティ祭とされるカンヌライオンズ。今年もnoteにて、フェスティバルの速報をお届けします。

会期中はほぼ連日、早朝4時半〜6時ごろ公開の予定です(※日本時間。現地時間では21〜23時頃)。記事公開時のお知らせは、筆者のXとFBにて。

内容はグランプリのご紹介中心ですが、帰国したら、もう少し頭も整理されてきますので、長めのレポートもまたどこかに書くでしょう。

今日は以下6つが発表になっています。

①ヘルス&ウェルネス部門
②ファーマ部門
③ライオン・ヘルス・グランプリ・フォー・グッド(スペシャルアワード)④アウトドア部門
⑤オーディオ&ラジオ部門
⑥プリント&パブリッシング部門

それぞれ見ていきましょう。

※クレジットは以下の順です。

施策タイトル
企業名(ブランド)/商品名
企画+制作会社
エントリー国


ヘルス&ウェルネス部門


THE LAST BARF BAG 
DRAMAMINE
FCB CHICAGO 
USA


BARF BAGとして知られる「嘔吐袋」。その発明がなされた1949年、奇しくも市販の吐き気止め薬「ドラマミン」も開発された。ときは流れ、ドラマミンはその市場を拡大したが、その効き目絶大のため、嘔吐袋の活躍シーンは激減、いまではマニア向けアイテムと化している?

ドラマミンは両者の75周年を記念して「最後の嘔吐袋」というキャンペーンを立ち上げた。世界の隅々にまで嘔吐袋を訪ね歩くドキュメンタリー映画を制作し、レアな嘔吐袋たちを骨董のように展示したギャラリーで初公開。Eコマースサイトでは、嘔吐袋の“それ以外”での使い途を提案する商品を企画、販売するなどして、永年のライバルに永遠のグッバイを告げた。


ファーマ部門


MAGNETIC STORIES 
SIEMENS HEALTHINEERS
AREA 23,AN IPG HEALTH NETWORK COMPANY,NEW YORK
USA


Magnetic Stories


小児がんなどの治療を受ける児童にとって、MRIは恐怖の体験である。検査装置が発する機械音がさらに子供たちを怖がらせる。そこでシーメンス・ヘルスイニアーズは、MRIの出す音を収集・解析し、絵本作家やサウンドデザイナーと協力、機械音と物語が正確に同期するオーディオブックを制作した。

例えば、ファストスピンエコーのビープ音は、かわいいロボットが話す声に。コンデンサーの絶え間ないポンピング音を空飛ぶ列車の音にするなど、検査中の子供たちがオーディオ物語を楽しめるようにした。


ライオン・ヘルス・グランプリ・フォー・グッド


CHILD WEDDING CARDS
UN WOMEN
IMPACT BBDO, DUBAI
UNITED ARAB EMIRATES


21%の女性が18歳以下で結婚する、おおよそ500万人の少女が15歳以下で結婚しているーーパキスタンにおける児童婚の比率の高さを問題視したUN Womenは、子どもたちを児童婚から守る法案を可決するよう議員たちに働きかけるため、ダイレクトメール・キャンペーンを展開した。

パキスタンの国会議員たちは、数十名の子どもたちが描いた絵を元にデザインされた“ウェディングカード”を送付された。いかにも子供らしい絵柄が、現状をより生々しく想起させる。このダイレクトメールに多くの議員が反応を示し、児童婚は社会的トピックになった。

「UN WOMEN」はジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関。

アウトドア部門 ※2グランプリ


ADOPTABLE. BY PEDIGREE
PEDIGREE 
COLENSO BBDO, AUCKLAND
NEW ZEALAND

Adoptable

ペディグリーは2008年、財団を設立し、保護犬の里親探しに取り組んできたが、課題の解決にはほど遠い。現在、世界には1200万頭の保護犬が施設で暮らしているという。犬が里親に出会うための重要なきっかけは写真だが、保護犬はそもそもミックス種が多く、その犬の特徴を捉えて魅力的に撮影することは難しく、施設にとってその作業は負担でもある。

そこでペディグリーは保護犬の画像1枚から、スタジオクオリティの写真を生成するシステム(stable diffusionタイプの機械学習モデル)を開発、町中のサイネージなど同社のすべてのデジタル広告の“モデル”に保護犬を起用することにした。里親探しだけでなくドッグフードの広告なども含めて。データを解析することで、その“保護犬らしさ”を見つけ出し、飼い主とのマッチング精度を上げる仕組みだ。

位置情報も活用、個々の犬にもっとも適した地域や場所に広告を掲載する。ユーザーのデータを活用して、見る人に響きそうな固有のメッセージも生成される。例えば夕方の時間帯、オフィスワーカーには「家に帰る? 一緒に行ってもいい?」というコピーとともに保護犬の写真を表示。里親が見つかると、その犬はメディアのローテーションから外れる。



FIND YOUR SUMMER(STAIRS/CORNER/DOORSTEP)
MAGNUM ICECREAM
LOLA MULLENLOWE, MADRID
SPAIN

Find Your Summer(エントリーボード)
Find Your Summer(STAIRS)

冬場にもっとアイスクリームを食べてもらうにはどうすれば? マグナムアイスクリームは、厳寒期であるにもかかわらず、自分だけの“夏を見つけて”、かすかな陽光を浴びながらアイスの悦びに浸る人々を捉えた写真をデジタルサイネージ等に用いるキャンペーン「Find Your Summer」を展開した(映像もあり)。

アウトドア施策では、キャンペーン・チームは太陽の位置に関するリアルタイム情報を活用、いま陽が照っている場所のサイネージに、戦略的に広告を出稿した。サイネージにはビーコンを設置。専用アプリをDLしているユーザーが近くに来ると位置情報をプッシュ通知し、マグナムのアイスを割引価格で購入できる最寄りの店舗を教えた。

オーディオ&ラジオ部門


THE MISHEARD VERSION
SPECSAVERS
GOLIN, LONDON
United Kingdom

メガネの小売りチェーン店として知られる「SPECSAVERS(スペックセイバーズ)」は補聴器も取り扱っている。しかし、英国では「難聴=社会的孤立」と捉える風潮が根強く、多くの人は聴力検査を受けたがらない。

そこでスペックセイバーズは「難聴」を「聞き間違い→ユーモア」と捉え直すことに。英音楽界のレジェンド、リック・アストリーと提携し、ヒットソング「ネバー・ゴナ・ギブ・ユー・アップ」を再レコーディングした。この歌には多くの人が聞き間違えたまま記憶しているフレーズがあるのだが、リック・アストリーはあえて“空耳バージョン”で歌った。

結果、このヒット曲にリアルタイムで夢中になった世代の人を中心に、自分の聴覚に疑問を持つ人が続出。スペックセーバーによる聴力検査の予約は目標を1220%も上回ったーーという。



プリント&パブリッシング部門

RECYCLE ME
COCA-COLA 
OGILVY, NEW YORK 
USA

Recycle Me


コカ・コーラは、2025年までにパッケージの100%をリサイクル可能にし、2030年までに販売する「1本につき1本」のボトルや缶をリサイクルすることを目指している。

「私をリサイクルして」のメッセージをインパクトをもって伝えるため、厳格なガイドラインを破って、世界的にも認知率の高いロゴを歪ませ(様々な形に缶を凹ませ)、新聞やOOH、ネット動画など様々なメディアに多数の変形ロゴを用いたキャンペーンを世界的に展開(当初は南米・北米)。最初の1週間で1億4000万回以上のインプレッションを獲得した。

ーーこの施策はアウトドアでもゴールド受賞してました。そういえばプリント&パブリッシング部門でゴールドを受賞した「Thanks for Coke-Creating」もコークのロゴ企画でしたね。


今日観たセミナーと初日の気づきメモ&お知らせ


★例年通りセミナーも多く開催されています。私が今日、参加できたプログラムは以下の二つ。

・電通セミナー「Don’t Work from the Goal: Expanding the Creative Potential」(ゴール起点で仕事をすべからず:クリエティブのポテンシャルを拡張する)

・OpenAIセミナー「When AI Challenges and Champions Human Creativity」(AIが人類のクリエイティビティに挑戦し、仲間になるとき)。

電通セミナーより。左よりスピーカーの柳井康治氏(ファーストリテイリング)と高崎卓馬氏(電通)。「THE TOKYO TOILET」プロジェクトから映画「PERFECT DAYS」が生まれるまでの秘話。
OpenAIセミナーより。左よりスピーカーのDavid Droga氏(アクセンチュアソング)とMira Murati氏(OpenAI)。クリエイターとAIは仲良くできるか?


★初日なので、まだなんとも朧げですが、プレスカンファレンスでの審査員のコメントやGPのケースビデオ内に「hilarious」(陽気な,楽しい,浮き浮きした)って言葉がチラホラ出てくるのがなんか気になりました。

去年くらいからセレモニー会場で笑いが起こる回数が明らかに増え、笑いの重要性を説くセミナーもあり、ユーモア回帰の傾向があることについては昨年も書きましたが、そのベクトルがより明確になってきたのか、そうでないのか?(両極端になっているのか?)。カンヌは前半と後半で空気がコロッと変わったりしますので、まだ確信が持てないとはいえ、注視したいと思います。

★ロゴいじり企画、企業の周年記念おもしろ企画、企業ヒストリー掘り起こし系企画も結構目立つ(例:コカ・コーラやハイネケン)。

★水曜。イーロン・マスクはカンヌのセミナーで何を語るのか(超混みそう。早めに行かないと入れないかも?)。

★今年から昼間(現地14:30〜)に、その日発表になる部門のシルバーとブロンズの受賞者をアナウンスするイベントが開催されています。よってシルバーとブロンズに関しては、その時間以降、情報解禁ができます。

グランプリ、ゴールドに関しては、例年と同じくその日のセレモニー終了後(現地時間の21時〜21時半目安 ※日本時間朝4時〜4時半)にプレスの情報解禁となります。

★これはお知らせです。現地に来ている方で、水曜(19日)に開催されるキラメキハウスの現地勉強会に参加したい方は、NETA倶楽部のFBページ(クローズド・コミュニティ)に申請ください。会場など詳細はそちらでご案内しています。

NETA俱楽部fbグループ
https://www.facebook.com/groups/459799974850420/
(非公開、承認制です)

今日はこんなところで。



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