見出し画像

会社員として自分の学費を稼いでいる医学科2年生(30代独身女性)が「大学院は主婦のカルチャーセンターではない」件について考えました

こんにちは。元アイドル・現サラリーマン医学生の河井です。
この世の中には、悲しいことに、主婦が旦那さんのお金で大学院に行くのを批判する声があるらしい。(詳細はこちら

私は、その批判について、以下の3点の理由から適切でないと考えました。正直言って当初めちゃくちゃキレていたのですが、書いているうち冷静になり、結果そこそこ有用なリカレント教育の現状サマリになったと思うので、最後までお目通しいただけたら嬉しいです。


1.長寿日本。1年でも長く働き続けるためには、学び直しが欠かせない


ベストセラー「LIFE SHIFT」は多くの方が読んだ経験をお持ちでしょう。未読の方は、ぜひお目通しいただきたいのですが、この本の中には衝撃的な一節があります。

65歳で引退して、しかも引退後に最終所得の50%の生活資金を確保するには、勤労期間に毎年所得の25%を貯蓄しなくてはならない

LIFE SHIFT
リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット

今20代の方は100歳以上まで生きる可能性が高く、老後資金をたんまり貯蓄しておかなければ、65歳でリタイアすることなどできません。しかし、今の20代にとって、所得の25%を貯蓄することは現実的なのでしょうか。

厚労省データから試算すると、所得の25%にあたる約91万円を毎年貯蓄するという理想に対し、今の20代日本人の達成率は4割程度*です。
数値からも現実的でないことはご理解いただけると思いますが、シンプルに、毎年100万円何が何でも貯金し続けるってきつくないですか。

そう、無理なんです。そんなことは。
だから働く期間を延ばすしかない。80歳くらいまで働き続ける必要がある。その場合、学び直しが必要であろうことは、聡いみなさまならお気づきのことと思います。

80歳だと、大学卒業後50年以上経過していることになりますから、適切なタイミングでのアップデートは必須でしょう。

ちなみに今から50年前っていつかわかりますか。昭和47年です。あさま山荘事件で鉄球が壁ぶちこわしてた時ですよ。

まさかいらすとやで「あさま山荘」を検索する日がくるとは



2.硬直的な人材市場ゆえ、日本は学び直し後進国

これからの時代、長く働き続けなければならない。学び直しが必要そう。という実感は得ていただいたかと思います。そこで、学び直しの現状を見てみると、日本がかなり遅れていることがわかります。

図1.リカレント教育の現状

引用:内閣府 選択する未来2.0 中間報告

上記のように、日本はOECD諸国と比較し圧倒的に、社会人年代の大学・大学院生が少ないのです。これには様々な背景が考えられます。やはり新卒一括採用、終身雇用など、大胆なキャリアチェンジがしにくくなる制度が多かった、というのは要因としてあるでしょう。
じつは、他にもシビれるデータを見つけてしまったのです…

図2.転職による生涯所得減少率

引用:内閣府 日本経済の新しい成長と分厚い中間層の復活に向けて


転職すると、生涯所得が下がるらしいです???ギャグ???

なんと、40歳男性が退職すると、生涯所得が約5,000万円下がる計算になってしまいます。**普通転職はキャリアアップ、年収アップのためにするものだと思っていたので、かなりの衝撃です…。

これは、勤続年数によって額が大きくなる、退職金が原因と考えられます。平成30年就労条件総合調査によれば、退職金制度は8割以上の会社に存在するので、多くの日本人は転職しない方がむしろメリットが大きいんですね。人材の流動性が損なわれるのは当然といえますし、転職すらしにくい環境で学び直しなど、望むべくもないです。


3.現在の文科省、厚労省のスコープは、コロナ対策、ロスジェネ救済

今後学び直しは必須。だが、硬直的な日本の人材市場で、一歩踏み出しづらい。そんな私たちに、政府は何をしてくれるのでしょうか?例えば学び直し期間中に補助金を出すなど、何かしらの援助はないものでしょうか?

リカレント教育に一定の予算を割いているのは文科省です。下図からは、大きな予算を「就職・転職支援」として割いていることが読み取れると思います。また、厚労省は教育訓練給付制度によって、就職に直結する学びのための資金補助を行っています。

図3.文科省におけるリカレント教育関連予算

引用:文科省 令和3年度文部科学関係予算のポイント

つまり、文科省も、厚労省も、コロナ禍で職を失った方や、氷河期で正規雇用の叶わなかった方の就職支援としても、リカレント教育を位置付けているのです。(もちろんそれだけではないが)
環境変化で仕事が減少した業界から、人材不足でこれから伸びる業界にキャリアチェンジができるよう支援していく。これは圧倒的に国が行う必要があり、非常に重要なことであると思います。

しかし、ハイキャリア層がさらなる成長を遂げるための学び直しや、企業の競争力を高めるような人材育成に資する学び直しまでは、予算が多く回り切らないのが現状です。


結論、自分でやれということです。


は?どうやって???そもそも何を学ぶ?どこで?その間の金は?その後の就職は?結局全部自己責任なんかい???


そう思いましたよね。そうなんです。自分でやれと言われても、どんなやり方があるか分からない。だからこそ、ロールモデルは尊いのであります。貴重な先人を批判することは、適切ではないでしょう。


今回、主婦大学院生の方は、家族の援助を受ける、極力在宅で論文執筆する、奨学金は積極的に応募する、など、たくさんの学業両立に関する知見をもたらしてくださいました。

そして、何名もの先生方が、誰にでも学問の扉が開かれていることを明示されていました。
実際、自分も2回目の大学生をやってみて、先生方が学生の意欲にとことん向き合ってくれることに感銘を受けています。休日も実習を受け付けるとか、聞いたことありますか?授業に寄せられる質問に毎回すべて解答するとか、信じられますか?

この素晴らしい情報を得て、どんな行動をしたいと思いましたか。
環境がまだ整っていない方は、教育訓練給付制度などを用いることで、可能な範囲から挑戦することもよいでしょう。まだやりたいことが定まらない方は、インターネット上でロールモデルをさがしてみるのもよいでしょう。

そして、心に定めたものがあって、でも一歩踏み出せない方は、今がそのチャンスなのかもしれません。
新たなロールモデルとして、あなたが、誰かに勇気を与えてみませんか。


※一応、学生としては多忙な方であろう、医学生と会社員の両立記はこちらにあります。ご参考にされたい方は是非お目通しください

*試算根拠
厚生労働省 2019年国民生活基礎調査より、29歳以下の1世帯あたり平均所得金額は362.6万円(中央値の記載がなかったため平均値にて試算)。うち25%は90.65万円で、これが年間目標貯蓄額である。また、労働力調査(基本集計) 2021年(令和3年)11月分結果より、各年齢階級(10歳ごと)のうちわけが各年齢均等であると仮置きし、労働者人口を試算。20歳~24歳を54.7万人ずつ、25歳~29歳を108.9万人ずつとした。仮に上記人数が毎年90.65万円ずつ貯蓄したとすると、20歳~29歳の平均貯蓄額は423.5万円となるはずである。しかし、実際の平均貯蓄額は179.8万円であるため、達成率としては42.5%である。(人口と世帯が混在しているので、あくまでも仮置きでの試算)

**算出根拠
生涯年収を3億円とおき、2009年の40歳生涯所得減少率16%をかけたもの

***企業にも期待できない
話の筋がそれるのでここでは書きませんが、まだまだ日本企業の人材に対する投資の認識は甘いです

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?