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第13話『冒険のはじまり』

(まさか、この子が男性器を知らなかっただなんて!)

 父親とお風呂にでも入る機会がなかったら、そんなものなのか?
 これまで動物や魔物のブツを見る機会がなかったのだろうか?

 いや、よく観察してみるとテオだって、普段は体毛で陰部が隠されているし……。
 それにエルフって肉類をあまり食べないんだっけか。

「……きひぃっ」

 思わず笑みがこぼれた。
 これは使える・・・ぞ。

 ゲスな計画がいくつも脳内に浮かんだ。
 ボクの頭は今、自分でも驚くほどの演算能力を発揮していた。

「ねぇあんた、ちょっとそこにまっすぐ立ってみなさいよ」

 ボクはためらいなく仁王立ちした。
 エルフ少女の眼前に自分のフルチンを晒す。

「なんだか、いきなり素直になったわね? フンっ、殊勝なことだわ。最初からそうしていればよかったのよ。……にしても見れば見るほど変なできもの・・・・ね。なんというか、すっごくキモい」

 エルフ少女はボクのチンポをじぃ~っと見ていた。
 あぁっ、そんなに見られると……。

「ん? なにかしら。今、動いた気が」

 観察するのに夢中だったのだろう、おそらく無意識にエルフ少女は顔を近づけていた。
 彼女の吐息が、ボクのチンポ撫ぜた。

「~~~~!」

「ひゃっ!? な、なに今、ビクンって!? 本当にキモい! マジでキモい! すっごくキモい! って、なんで!? ウソ、どんどん大きくなってる!?」

 キモいと連呼されるたび吐息がチンポに当たり、反応してしまう。
 なにかに目覚めてしまいそうだ。

 特殊な焦らしプレイでも強要されているような、そんな気分。
 だんだんとボクのチンポは熱を持ち、脈動し、ムクムクと上を向きつつあった。

「むむっ……?」

 エルフ少女が興味深そうにボクのチンポへと手を伸ばしていた。
 ボクもまた、思わず腰が上がる。

(そうだ! ボクのチンポに触れ!)

 エルフ少女のきめ細かですべすべとした、柔らかい肌。
 その手のひらに包まれたら、いったいどれほど気持ちいだろうか!

 さらに彼女の細い指先に亀頭をなぞられたりしたら……。
 あぁっ、想像するだけでも果ててしまいそうなほどの快感。

(あと、すこし! 早く、ソレを握ってくれぇえええ!)

 エルフ少女の手が近づいてくる。
 あと10センチ。5センチ。3センチ……。

(あぁ~っ! もうっ、ガマンできないっ!)

 ボクは腰を前へ突き出した。
 そして、エルフ少女の手のひらに自らのイチモツを擦りつけようとして……。

「――マジック<アイスショット>」

 エルフ少女の手のひらから、マジックが放たれた。
 氷の塊がボクの大事な部分に激突した。

 ――ガキーン!

 と、音が聞こえた気がした。
 脳内に電気ショックでも浴びたみたいな衝撃が走った。

「ッゴボッっはぁああう~ッ!?!?!??」

 ボクは股間を押さえてもんどりうった。
 涙と鼻水が溢れる。

「きひっ、きひっ、きひっ……」

 あまりの痛みに呼吸もままならない。
 ボクのHPバーまでもわずかに削られていた。

 大切な息子は、痛みにに怯えるかのように縮こまっていた。
 なんで、いきなりマジックを撃たれなくちゃいけないんだ!?

「えっ、今のそんなに痛かったの? あーでも、あたしが冷やしたおかげで……ほらっ。できものが小さくなってる。感謝しなさい!」

 ふざけんな、このクソガキャぁあああ! ちっげーよ!?
 テメェが言うべきは「ごめんなさい」だっつーの!

(うぅっ。本当に大丈夫かなこれ……?)

 壊れてないよね? 二度と勃たなくなってたりなんて、しないよね?
 そうアソコを気にかけていると、エルフ少女は不機嫌そうに声を発した。

「え、なにあんた。治してあげたのに、文句でもあるの?」

「ヒッ!?」

 ボクは反射的にブンブンと首を横に振った。
 しまった。また奴隷根性が……。

「ふん、ならいいのよ。にしても変な身体ね……あっ、そうだわ! あんた、そのままの格好でお父さんに会いなさいよ。お父さんにも見せてあげようっ。きっと驚くこと間違いなしねっ!」

「!?!?!?」

 いやそれは、ちがう意味で驚かれるわ!?
 娘が唐突に裸のおっさんを連れて来て、驚かない父親なんかいねーよ!

 いや、いたらいたでそっちのほうが問題なのだが。
 ……って、え? 本気でボクを裸のまま連れて行こうとしてる?

「そうと決まれば急ぐわよ! 今からお父さんのところに行くから!」

「ぃ、ゃ……そ、の……」

「あ゛ん?」

 水を差されるのがイヤだったのか、ドスの聞かせた声で脅される。
 ボクは頷くことしかできなかった。チクショウ。

「よしっ。じゃあ――マジック<フロート>」

 エルフ少女が唱える。
 ボクたち2人と1匹の身体が、淡い魔力の光に包まれた。

 身体が今にも浮いてしまいそうなほどに軽くなる。
 すごい! ある意味、これが一番ファンタジーらしいマジックかもしれない。

「ついて来なさい……よっ、と!」

 エルフ少女が枝を蹴り、宙へと飛び出した。
 ボクはその様子を見て……。

(いやいやいや、ムリ! ここから飛び降りるなんて怖すぎる!?)

 足がすくんでいた。
 命綱があるからってバンジージャンプするのは怖いだろう? それと同じだ。

 と思っていたら、後ろから軽く『ドンッ』と押された。
 ボクは枝から足を踏み外した。

「ぅびいいいゃあああ!? 落ちてるぅうううっ!?」

 空中でジタバタと暴れていると、あとに続いてきたテオに腕を掴まれた。
 ていうか、さっきボクを突き落としたのお前だろ!?

「でも、きれい……」

 360度、遮るもののない絶景にボクは目を奪われる。
 落下はボクが想像していたよりもずっと、ゆっくりだった。

 ちょっと、思ったより、これ楽しいかもしれない。
 風圧でチンポがぶるぶると震えてることを除けば。

「――ここから、冒険がはじまるんだ」

 ボクはすこし先を飛んでいるエルフ少女の背中を見ながら、そう呟いた。
 物語はまだ、はじまったばかり――。



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