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活性化エネルギーで人間の行動を読み解く


1. あらすじ

健康的で文化的な最低限度の終わりなき引きこもり生活。

世の中的にコロナの関係で自宅勤務となり、すごく時間が増えた。「出勤」「退勤」という区切りがなく、「ずっと自宅」というスタイルに圧倒的に慣れない。今までと比較して、時間は増えたのに生産的な活動ができていない!という悩みをどう解決すべきかをグルグル考えている。

自分は典型的な「家で勉強できないから自習室行って勉強する」タイプの高校生だったし、社会人になっても家で生産的な活動をできた試しがあんまりない。しかしながら、世の中的に自宅勤務を強いられており、近くのカフェにこもって仕事するスタイルすら危うくなっていることから、何か対策を打つ必要があるとひしひしと感じている。

ちなみに、どれくらい非生産的な活動をしているかというと、ここ2週間で
・かまいたちの全てのコントとYoutubeチャンネル視聴(濱家好き)
・パワプロ2020でオールS1育成達成(育成人数100人)
・ドキュメンタル(〜Season7)視聴(山内やるな)
・リッチマンプアウーマンを映画含めて一周する(日向徹はやはり最高)
などなど。もはや「暇つぶしが見つからない」ほど暇をつぶしてきた。

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(余談ですがリッチマンプアウーマンの第3話、日向に解雇されたエンジニア、坂口が復活をかけたソフトを開発。日向がそれに対して「大丈夫だ、お前のアイデアは面白い」と言ったシーンが最高に良い)

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そんな中、頭の中でこびりついている概念がある。
リモート作業となっているから特に強調して意識されてきたのかもしれない。それは、活性化エネルギー

自宅勤務で前より時間があるのに生産的な活動ができていない」ことは、活性化エネルギーで説明できるのではないか。活性化エネルギーを人間の行動に当てはめたら面白い説明ができるのではないか、という思いつきから、まとめて書いていく。

2. 活性化エネルギーとは?(化学編)

そもそも活性化エネルギーとはどんな概念だったか。

活性化エネルギーとは、化学反応の際に必要なエネルギー。活性化エネルギーについて講釈を垂れたい訳ではないけれど、復習の意味も兼ねて簡単に振り返ってみたいと思う。

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身の回りには燃える素材も酸素も大量に存在しているのに、なぜ燃えないのか。これは活性化エネルギーで説明がつく。
活性化エネルギーとは、反応を起こすのに必要な起爆剤のことである。

活性化エネルギーについての復習(読み飛ばしてもOK)
木材(炭素)を燃焼させることを考えよう。

1. 物質の状態とは?
酸素や炭素は、単体として存在するよりも二酸化炭素となった方が状態が安定している。「状態が安定している」とはどういうことか。状態が極端な例を挙げるとイメージしやすいかもしれない。ガソリンは、いつ発火してもおかしくない、「不安定な状態(≒エネルギー準位が高い)」である。きっかけさえあれば酸素と結ばれて安定な状態、二酸化炭素に成り下がりたいのである。化学において状態、とはしばしばエンタルピーとして数値表現される。

2. 活性化エネルギーとは?
では、活性化エネルギーとは結局何なのか。
活性化エネルギーとは、既存の結合を破壊し、新しい結合をするために必要なエネルギーのことである。炭素が酸素と化学反応を起こすためには、現在の原子同士の結合を引き離し、バラバラにするだけの衝突をするための物理的な運動エネルギー(活性化エネルギー)が必要なのである。

木材はなぜ燃焼するのか。
それは、火が周囲に熱エネルギーを与え、活性化エネルギーを賄うのだ。

ちなみに、活性化エネルギーそのものについて厳密な議論をしたい訳では無いので、これ以上は掘り下げない。

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3. 活性化エネルギーとは?(行動編)

化学的な解釈は一旦置いておいて、

活性化エネルギーはとどのつまり、人間が行動する原理に当てはまる?

そう思った。
先ほどと全く同じグラフを人間の行動に置き換えたグラフを表す。

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例えば電車の中で席を譲る、という行動について、感謝される、という絶対的な恩恵がありながらなかなか譲れないのは何か。それは、腰が重い(活性化エネルギーが大きい)からだ。

腰が重い理由としては、
・席から立つのは文字通り腰が重い
・初対面の人に声をかける勇気が無い
・譲る姿勢を見せたものの断れれる空回りリスクがある
などなど。

要するに、面倒なのだ。座り続けている方が楽だ。ここをどのくらい面倒と捉えるかで人間性が垣間見れるかもしれない。人によって腰の重さは違うので、フットワークの軽い人間、テキパキと仕事をこなす人間、というのが出てくる。

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電車の中でスマホをぼーっといじっているとき、読みたい本があるのになぜ自分はさして生産性のないスマホの画面を見て眼精疲労を起こしているのだろう。疑問を感じた。そんなときに活性化エネルギーの話を思い出した。

ぼーっとYoutubeを見ているより読書する方が知的生産性の高い行動であることは言わずもがなだけれど、なぜぼーっとYoutubeを見てしまうのか。それは、「スマホを取り出す」方が「本を読み始める」ことよりも軽い動作だからである。ただぼーっと動画を見ることに必要とされる思考の負荷は、ほぼゼロである。それと比べて、読書は解釈したり記憶したりと思考の負荷が大きい。

つまり、
・Youtube/ゲーム
・読書/勉強

という二択がある時、
人はできる限り楽な方を選択するのである。

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では、重い腰をあげて読書や勉強をするにはどのような着火剤を用意すればいいのか今後の生産性のある議論がしたい。そのためには、触媒について説明する必要がある。

4. 殿下の宝刀、触媒とは?(化学編)

触媒とは何か。触媒とは、活性化エネルギーを引き下げる効果のある物質である。一般社団法人触媒工業協会のグラフを拝借する。これ以上でも以下でもない。触媒は、活性化エネルギーの負担を抑える。

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5. 殿下の宝刀、触媒とは?(行動編)

では、人間の行動に置き換えた際の「触媒」は何を表しているだろうか。
腰が重くて取り掛かれない行動があるとき、活性化させるアプローチ(触媒)は「精神的アプローチ」と「物理的アプローチ」とがあると思う。

精神的なアプローチとは、その行動自体を習慣化してしまう、など。歯磨きや髭剃り自体は面倒な作業だけれど、習慣化してしまえば苦ではない。朝活なども、早起き自体は苦行以外の何ものでもないが、毎朝続けてしまえば楽になる(と言われているが実際実践はできてない...)。

あとは、取るべき行動の具体的なイメージが湧かないと腰が重くなる傾向がある。例えば「議事録を作成する」というタスクよりも「開催日時、参加者リスト、アジェンダ、会議要旨、質疑応答を記入する」という具体性のある記述にするとタスク終了のイメージがわき、作業負荷が下がる、と言われている。読書する、ではなく「10ページ読み進める」など具体的な数字を意識することで活性化エネルギーが下がるのだ。

物理的なアプローチでは、作業環境を変える、などが有効だ。同じ読書するという行動でも、自宅よりも図書館の方が自然と本を開ける。つまり、読みたい本があるのであれば図書館で読めばいいのである。取り掛かりやすい環境を作るのが手っ取り早いアプローチだ。

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もっと突き詰めて考える。

なぜ図書館だと目的の行動(読書)に移しやすいのであろうか。
自宅と図書館の違い、それは自分が取ることができる行動の数だと思う。

図書館では、音のなる機器の使用が基本的に禁じられているし、人との会話も禁じられている。読書や勉強以外の行動がかなり制限されているのである。Youtubeを見ようものなら白い目で見られる。スマホゲームをしようものなら、特に注意されることはないだろうけれど、「ここで何やってるんだ自分」と自責の念に駆られるだろう。

取れる行動が複数あるとき、人間は楽な方を選びがちである。であれば、物理的にその行動自体を制限してしまうのは即効性のある手だ。ゲームならアンインストールしてしまう、Youtubeならブラウザからアクセス制限をする、など。自分は以前、オンライン麻雀にハマっていたが、その行動を制限すべくそのサイトだけJavaScriptの設定をオフにしたりIDを復元できないようにしてプレイ困難な状況にしたところ、始めるの自体面倒になり、しなくなった。スマホも、FaceIDではなく20桁の暗証番号を入力する、などと設定すれば開くこと自体が面倒になるかもしれない。

一方で、「禁止」するというアプローチは弊害がある。

タバコをやめたければ、「タバコをやめる」という目標よりも「爽やかでクリーンな人間になる」というのの方が行動として根付きやすい、と言われているように、何かを禁止されるとその行為がしたくなるという人間の本質がある。したがって、前向きな目標を立てることで目標に付随する行動が取りやすくなる、というのも精神的なアプローチとしてありそうだ。これは掘り下げていくと長くなりそうなので省く。

6. まとめ

自宅で生産的な活動ができていない」ことは、職場と比べて自宅は「取れる行動の数が違う」ことが一つの要因。食事をすることもできれば、本を読むことも動画を見ることもできる。活性化エネルギーで説明すると、取れる行動の数が違うと、人間は楽な方を選びがちである。であれば、したい行動に対する活性化エネルギーを下げる工夫が必要である。具体的には、スマホからアプリを削除する、動画を視聴できなくする、など取れる行動の数を制限することがとても有効なのではなかろうか。

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