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夫の慣れない家事にイライラ…「働くこと」で守ってきた居場所 ー子育てフリーランス9話ー

フリーランスイラストレーター歴12年のカワグチマサミが、妊娠・出産・育児と夫の関係に向き合い、試行錯誤しながら「いい感じ」の働き方にたどり着くまでの赤裸々エッセイ。著書「子育てしながらフリーランス」の原作。火・金更新!

前回のお話。

フリーのイラストの仕事が軌道に乗った頃、妊娠発覚。

ペースを緩めて仕事を続けていたものの、妊娠後期に低置胎盤と診断され、仕事を全て断り、寝たきり状態に。
1日中、布団にくるまって過ごしていました。




一人で何もすることなく過ごしていると、頭の中が不安や心配でいっぱいになりました。

妊娠や出産へのリスクなどをネットで調べたりして、さらに不安を膨らませてしまっていました。

妊娠中は、もっと楽しく過ごせるものだと思っていました。

こんなに不安や心配でいっぱいになるなんて…。

トイレとお風呂以外は出来るだけ寝ておかないといけないので
食事は夫がスーパーで買ってきたものや宅配に頼っていました。


しかし…



ある日、突然、夫が言い出しました。




夫が料理を作ってくれるのは初めてでした。

嬉しくて、布団の中から眺めていると…



夫は、包丁を天井に向けて掲げていました。その時包丁を生まれて初めて持ったのです。

ある意味本当に伝説に残りそうです。

夫が初めて作ってくれたご飯は…






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



洗い物も、頼りない様子…。



かといって、私は今、家事ができない。元からあまりしないけど、夫よりマシだと思う。

あまり頼りたくなかったけど、助っ人を呼ぶしかない…。

正直、イラストレーターになることをあまりよく思っていなかった母に頼るにはためらいがありました。

しかし、そうも言ってられません。

母に連絡すると、翌日に来てくれました。



母は、テキパキと動いて、掃除をしたりご飯を作ってくれました。

これは、とんでもないことです。
青天の霹靂というやつです。

母は、実家ではほとんど寝ていて、部屋は荒れ、
私は生涯一度も、友人を家に呼んだことがありませんでした…。

そんな母が掃除をしている…!



母は不器用なので、言葉にはしないけど、赤ちゃんを楽しみにしてくれてるのだと思いました。



ドロドロなうどんの汁を見て、私は夫への不満が溢れました。



しかし、不満を言う私に対して母は…



私はこんなアグレッシブな家庭で育ちました。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

なんと…。

父のほうも青天の霹靂です。
霹靂すぎて、世界壊滅するかもしれません…。

父とはずっと、目が合えばバトルし合うほど、仲が悪かったのに…。







母は、食事の用意と慣れない掃除をしてくれました。
「また来る」と言って帰っていきました。


ー数日後ー


夫は相変わらず、仕事が忙しいにも関わらず定時で帰宅してくれました。




しかし、すぐに料理の腕が上達することはなく…


ご飯はお世辞にも美味しいとは言えないものでした。


正直、私ならもっとうまく作るのにって思う。
見ていてもどかしい気持ちもある。
イライラしちゃうこともある。


だけど…


それは慣れてないんだから仕方ないことなんだ。
みんな初めてのことは、うまくいかなくて当然なんだ…。

だから………






結果じゃなくて、頑張ってくれたことへの感謝の気持ちなら伝えられる。

そう気付きました。

この日、私の中で心の不安が少しだけクリアになりました。






そう思った時、ふと気付きました。

安静令で仕事がなくなったとき、私はなぜ、どん底まで悲しんでしまったのか。

小さい頃から実家も学校も馴染めなかった私は、
イラストを描くことだけが自分の居場所になっていました。



それしか自分にはないと思って、イラストを仕事にしてからは、さらにその思いが強くなりました。

そんな風に、自分が一生懸命作ってきた大切な場所が、妊娠出産をキッカケになくなってしまったのがとても悲しかったのです。


私にとって、「働くこと」が、自分の自信に繋がる居場所になっていました。
夫は働くことを続けられるのに、なぜ、私だけ失ってしまうの?って八つ当たりもしてしまいました。

だけど、私はイラストレーターになること以外にもう一つ、欲しいものがありました。

小さい頃からずっとずっと欲しかったもの。


それは、「家族」を持つこと。

家の中にいても、ビクビクしなくていい。
普通にご飯を食べて、仕事して、普通に会話できる家族が欲しかった。


今、それが叶っている。


これから、新しい家族も増える。

命を生み、育てることは、簡単なことじゃない。

少なくとも私にとっては、できなくなることが増えたし、体調も、生活も変わりました。

でもきっと…



その日、私は、久しぶりに深く眠ることができました。





夫が、どんなこのとき何を思っていたのか、どう言う状況だったのかは、
この時はまだ知る由もなく……。


つづく

読んでいただきありがとうございます! 今のカワグチだよ〜!
今回は妊娠中の安静令をキッカケに、夫が家事をデビューしたお話でした。

安静令の間は、本当に辛かったです。
今まで営業したり交流会に行ったり、少しずつ信頼を重ねてもらってきた仕事を自分から手放すことになったので。

それに加えて、無事に出産できるかわからない恐怖や不安…

さらに、3.4ヶ月の間も安静にしていないといけないから
外に出かけて気晴らしすることもできませんでした。

だから、ネットしかすることがなくて…
ネガティブなことばかり調べてしまって…
私はどんどん底無し沼に落ちていきました。

さらには…慣れない夫の家事…
もどかしい気持ちで布団から眺めてました。
自分にできることが、夫は全然できない。

私は大変な時期なのに! 好きな仕事もやめたのに!
マタニティブルーもあいまって
不満もたくさん言っちゃいました。

八つ当たりもしちゃった…。
夫は悪くないのにね。
頑張ってるのにね。

あの頃の私は、自分のことでいっぱいいっぱいだったと思います。
でも、少しだけ夫の立場や、気持ちをわかってあげたらよかったと思います。

これは育児にも言えることかもしれませんが、最初はできなくて当たり前なんですよね。家事が本当に苦手な人だっているし。
私なんて長い間、家事してるけど苦手だし。

家事が得意な人に、「下手くそぉ!」と注意されたところで、直りません。
それどころか、デコピンの嵐を起こすでしょう。

結果は「できなくても」仕方ない。うん。
結果は、継続や成長次第で変わるものだから。

でも、「頑張ってくれた」ことは事実。

だから、夫が慣れない家事に頑張ってくれたことに、「ありがとう」と感謝をすることを心がけました。

本当もう心がけましたよ。
「いやいや頑張ってるんだから!」って、強く思い込みましたよ。

だってやっぱりイライラしちゃいますから〜!
人間だから〜〜〜!

でも相手に対して、不満を抱く時って、よーく考えてみると、
「自分の思い通りにならない」って思う自分のわがままでもあるんですよね。

他人のことなんて、思い通りにならないのが普通です。
だけど、向き合ってくれてる時点でありがたいなぁ…と、自然に思えるいい感じの妻になれたらいいね★と思ってます。

私の場合は、その思いを、安静令を過ごすことで気づくことができました。

とても辛かったけど、赤ちゃんから、「お母さんになるための宿題」を出されたような感じもしたりしなかったりします。

では、またね〜!

カワグチマサミ(ほぼここにいます


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子どもと親の自己肯定感を高める、「子育て言い換え事典」(KADOKAWA)出版。



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