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読書記録「舟を編む」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、三浦しをんさんの「舟を編む」光文社 (2015)です!

三浦しをん「舟を編む」光文社

・あらすじ
神保町のとある出版社 玄武書房 辞書編集部は長年の夢である辞書「大渡海」の編纂に取り組む。主人公 馬締 光也はどこか抜けた所があるものの、"言葉"に対して真摯に向き合うことには卓越したものがある。辞書という完成することのないものに、十数年も情熱を捧げる編集部社員達の物語。

仕事に対して(名前の通り)真面目に取り組む馬締。同じ下宿に移り住んだ香具矢さんとの恋や、先輩社員や外部の先生方とのやり取りに、不器用ながらも、真摯に向き合う姿。燃え盛る炎というよりは、内なる灯火を絶やさずに情熱を捧げる姿に応援してしまう作品でした。

「大渡海」に注力してくれ!という会話に対し、クリスタルキングの「大都会」を歌い出すシートがあったり、全く理解に苦しむ恋文を香具矢さんに送ったり(文庫版には恋文が収録)と、馬締のすっとんきょうさに思わずくすりとしてしまうところもありますが、辞書や言葉に対してはどこまでも一生懸命に取り組む姿は私も励みになりました。

今回は、言葉について書いてみようと思います。

辞書は言葉の海を渡る舟

どれだけ言葉を集めても、解釈し定義づけをしても、辞書に本当の意味での完成はない。一冊の辞書にまとめることができたと思った瞬間に、再び言葉は捕獲できない蠢きとなって、すり抜け、形を変えていってしまう。

同著 90頁より抜粋

先日、読書会でこの本を紹介した際に、言語学を専攻している方とお話ししました。

その方が仰るに、言語学において言葉というものは使い方が徐々に変化するものである、言葉は共通財産である、と。

例えば、「的を射る」という言葉は、本来このように書くのが正解ではあるが、時折「的を得る」と誤った使い方をする人もいる。

しかし、言語学においては、「的を得る」という誤った使い方を否定するのではなく、一般社会で常識になりつつある言葉として、受け入れつつあるそうだ。

「言葉は、言葉を生みだす心は、権威や権力とは全く無縁は、自由なものです。また、そうであらねばならない」

同著 283頁より抜粋

作中でも上記の如く、言葉というものは自由であるべきです。言語統制をされない限り、我々の使う言葉は、かくも自由です。

自由だからこそ、辞書というものは完成することはありません。そんな不完全なものを作り上げる人々の情熱を、是非堪能しみてはいかがでしょうか。それではまた次回!

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