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読書記録「イニシエーション・ラブ」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、乾くるみさんの「イニシエーション・ラブ」文藝春秋 (2007)です!

乾くるみ「イニシエーション・ラブ」文藝春秋

・あらすじ
非モテの大学4年生 鈴木は友達に誘われて行った合コンで、成岡繭子と運命的な出会いを果たす。合コンの頃から一目惚れしてしまった鈴木、仲間と一緒に行った海でマユ(繭子)に電話番号を教えられ、一念発起してデートに誘い、次第に打ち解けていく。

最初こそ外見よりも中身が大事、服装や見た目に気を配らなかった鈴木も、マユのアドバイスを受けてメガネからコンタクトに変え、服を新調し、車の免許を取るようになった。

愛はさらに深まり、いよいよ二人は肌を重ねる。クリスマスイブはたまたまキャンセルが出たホテルでディナーを取り、プレゼントを交換しあい、世界中で誰よりも幸せな時間を過ごす…。

鈴木はその後、東京への出向を命じられる。マユと過ごすために地元の企業に勤めたにも関わらず突然の辞令である。期間は2年間、最初こそ毎週末は車を走らせてマユに会いに行ったが、長距離恋愛の運命か徐々に疎遠になっていく。

しかも東京本社では同僚の石丸美弥子に好意を持たれてしまう。最初こそ地元に彼女がいるからと断る鈴木だったが、徐々に魅力に惹かれていってしまう。

その時、美弥子は鈴木にこう話す。

「もし鈴木くんとマユちゃんの関係が、そのイニシエーション・ラブなら、私にもまだチャンスはあるかなって」

解説の大矢博子さん曰く、80年代後半を舞台に誰もが通り過ぎるごく普通の恋愛を、けれどもとても一生懸命な恋愛を、そしてとても素直で正直な恋愛を描いた物語。

しかし、ただの恋愛小説と勘違いしてしまったら大間違い。最後の結末に思わず再読必須の作品であった。

作中でも述べられているが、イニシエーションとは通過儀礼の意味である。

「子供が大人になるための儀式。私たちの恋愛なんてそんなもんだよって、彼は別れ際に私にそう言ったの。初めて恋愛を経験した時は誰でも、この愛は絶対だって思い込む」

同著より抜粋

お恥ずかしい話、二十数年生きてきて恋愛というものをしたことがない。知り合いからも彼女作ったらいいのに、そうしたらもっと垢抜けると思うんだよなとありがたいアドバイスをいただく。

それゆえにこの物語の鈴木くんにはひどく共感していた。いやわかるよ、内面が大事だよな、見た目だけが本質じゃなよなうんって。

でも恋人を作るべきだという言葉の裏には、いわゆる大人の階段を早く登れと言っているのかもしれない。

誰もが通過儀礼のように通る道。自分達の恋だけは永遠だと信じるも、この世に絶対的な、永遠の愛がないように。

理想を掲げるよりも、早く恋愛というものを経験した方が心の隙間を埋めるためにも必要かもしれない。いや、必要性のために恋愛するのも変な話だが。

それはさておき、思わず前編から見返してしまう衝撃のラスト、ぜひ味わってみてはいかがだろうか。それではまた次回!

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