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読書記録「コンビニ人間」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、村田沙耶香さんの「コンビニ人間」文藝春秋 (2018)です!

村田沙耶香「コンビニ人間」文藝春秋

・あらすじ
コンビニエンスストアというものは、どこか無機質なところがある。定められた位置に商品が陳列され、決められた通りの機械が動き、マニュアル通りの接客をする定員。何も変わらない、変わることのない空間が作り上げられる。
18年間コンビニ定員として働いている古倉恵子は、周りから異質な存在と見られている。コンビニの定員としては模範通りに働くが、こと社会において一般的に常識とされているものが通用しない。そんなある日、社会に適合出来ない男 白羽と出会い、「普通の人間」になろうとするが…。

あまりにも常識はずれで、世間を疑問視するどころか、そもそも"常識が通じない"恵子。
全てを社会や周りのせいにし、被害者意識だけ高く、全く"世渡りが出来ない"白羽。

読者としても、多分知り合いにいたとしたら、なるべく避けたいと思うだろう。そんな人たちを、我々は"異物"と称して距離を置いたり、悪口を言ったり、ネットで晒したり。そして、異物に対して"一般的な"人間は、「普通」に正そうとする。

コンビニは強制的に正常化される場所だから、あなたなんて、すぐに修復されてしまいますよ。

同著 73頁より抜粋

時代と共に商品や機械は変われど、コンビニエンスストアは常にマニュアル通りに、同じような商品が、同じような機械で、同じような定員で構成されている。"異物"があれば棚から消え、改良され、シフトを削られ首になる。それは、社会であっても同じ側面がある。

私たちが当たり前のように生きている社会。時に世知辛いと思うときもあるし、社会や組織に迎合しなければ生きていけないと思うときはある。誰もが"異物"にならないよう、周りから"普通"に見られるように生きている。

だが、マニュアル通りに働くことで、安全に生きていけることもある。

「つまり、皆の中にある『普通の人間』という架空の生き物を演じるのです。あのコンビニエンスストアで、全員が『店員』という架空の生き物を演じるのと同じですよ」

同著 95頁より抜粋

恵子は、コンビニエンスストアではまるで人が変わったように生き生きと働いている。冒頭では「コンビニの音」を聞き、効率よくオペレーションをし、誰よりもハキハキと声を出す。家に帰ってもコンビニで働くために体調管理を行い、誰よりも早く出社する。

だが、社会というマニュアルが存在しない場では、いわゆる「普通の人間」として生きられない。なぜ就職しなければならないか、結婚しなければ、子供を持たなければ…。

だからこそ、このタイトルなのだと。そのようにしか生きられないのだと。是非読んで貰いたい。それではまた次回!

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