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鉄道車両はすべて「電車」?

こんにちは。交通技術ライターの川辺謙一です。
今回は、「鉄道車両はすべて『電車』?」という話を書きます。

■鉄道車両には種類がある

一般の方の中には、線路を走る車両をすべて「電車」と呼ぶ方が多いようです。たしかに、後述するように日本では鉄道車両の多くが「電車」なので、そう呼ぶ方が多いのは、不思議なことではないかも知れません。

しかし、鉄道車両をすべて「電車」と呼ぶのは誤りです。なぜならば、鉄道車両には「電車」以外の種類が存在するからです。

鉄道車両を用途で大きく分けると、以下の4つに分類されます。

機関車:旅客や貨物を搭載せず、動力を持ち、もっぱら他の車両をけん引する車両
旅客車:旅客を輸送する車両
貨物車:貨物を輸送する車両
特殊車:特殊な構造や設備を持つ車両
『鉄道技術用語辞典』第3版を参照して要約した説明です

これら4種類の車両をさらに分けると、多くの種類の車両に分類できます。「電車」は、その一部です(★の部分)。

鉄道車両を用途で分類した図

「電車」は、電気を動力として自走することができる「客車」または「貨車」の総称です。一般的には人を輸送する「客車」の方(正確には「旅客電車」と呼びます)を指すことが多いですが、日本では貨物を輸送する「貨車」である「貨物電車」と呼ばれる車両が存在します。

JR貨物の「貨物電車」。貨物コンテナを搭載して運ぶ。筆者撮影

つまり、「電車」は、さまざまある鉄道車両の種類の一部にすぎないのです。

■日本では、鉄道車両の多くが「電車」である

ところが、冒頭で述べたように、一般の方の中には線路を走る車両をすべて「電車」と呼ぶ方が多いようです。

それは仕方がないことです。なぜならば、日本では、鉄道車両の多くが「電車」だからです。

たとえば、新幹線や地下鉄では、すべての旅客列車が「電車」で運転されています。東京圏のような大都市圏では、線路を走る車両のほぼ100%が「電車」です。

「ブルートレイン」と呼ばれた寝台特急(機関車けん引の客車列車)がすべて消えた現在では、JR東京駅を発着するすべての定期旅客列車が「電車」で運転されています。

となれば、「鉄道車両=電車」だと思う方がいても不思議でありません。

■「旅客車」の95%を占める

それでは、日本の鉄道車両のうち、「電車」はどれほどの割合を占めているのでしょうか。具体的にデータで見てみましょう。

日本の鉄道事業者が保有する車両の割合

一般社団法人日本鉄道車輌工業会が公表しているデータ(2020年4月1日時点)によれば、「電車」は、日本の鉄道事業者に在籍する車両全体の81%を占めています。「旅客車」(旅客を輸送する電車・気動車・客車)に限定すると、その割合は95%となります。

※なお、執筆時点では、同会が2021年4月1日時点のデータを公開しています。

つまり日本では、人を乗せて運ぶ鉄道車両のほとんどが「電車」なのです。

東京圏に限定すれば、人を乗せて運ぶ鉄道車両のほぼすべてが「電車」であると言っても過言ではありません。

これは、日本の鉄道の大きな特徴でもあります。なぜならば、これほど「電車」の割合が多い国は世界的にはめずらしいからです。

この点については、また別の機会にお話ししましょう。

※この記事は、拙著『図でわかる電車入門』(交通新聞社2022年)の内容をもとにしてリライトしたものです。


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