東京で道路整備がうまくいかない理由
こんにちは。交通技術ライターの川辺謙一です。今日は、「どうする東京の道路」というテーマでTOKYO MXテレビの番組『田村淳の訊きたい放題』にゲストとして生出演しました。今回は、そのとき私が発言したことの一部をnoteに記しておきます。
近代都市にとって、道路は都市全体を支える骨格です。道路は、人体の骨格と同様に、きわめて重要な役割をしているのです。
ところが東京では、都市計画で決められた道路(都市計画道路)の約6割しか完成していません。つまり、残り約4割の道路が未完成であり、都市そのものも未完成なのです。
なぜ東京では道路整備が進まないのか。その理由を簡潔に答えるのはとても難しいです。なぜならば、複数の要因が複数に絡み合っているからです。具体的に言うと、おもに次のような要因があり、互いに関係し合っているのです。
・ベースとなった都市(江戸)の構造
・骨格は道路ではなく江戸城のお濠だった
・防衛のため車両交通を拒む構造になった
・放射線(街道)はあるのに環状線がなかった
・東京の歴史の特殊性
・関東大震災直後まで、系統的な道路網を造る都市計画がなかった
・パリやベルリンのように、強い権力による都市改造が進められなかった
・人口急増により、道路整備より先に住宅地開発が優先された
・多くの住民が道路整備や区画整理を拒んだ
・自動車保有台数が急増した1950年代まで、道路整備の重要性が認識されていなかった…など
私は、これらの要因に加えて、「人間」の本能と「都市」の特性の違いが関係していると考えます。
「人間」は、生命維持のために変化を嫌うという本能を持った動物なので、慣れ親しんだ街並みが変わることには感情的になりがちです。だから、街の姿を変える要因になる道路整備を拒む傾向があります。
一方「都市」は、変わり続けないと発展できません。東京が国内最大の都市になり、日本全国から多くの人を惹きつけてきたのは、時代の変化に応じてその姿を変え、都市としての魅力を高め続けてきたからです。
つまり、「人間」と「都市」では、変化に対する考え方が異なるので、双方で意見がたがってしまい、結果的に道路整備などの必要性が高い公共事業がなかなか進まなかった…というわけです。これは都市が衰退する要因にもなりかねない不幸なことです。
こう書くといろいろとご批判もあろうかと思います。個々の人間の考えによって、都市の発展が阻害されるという話は、感情的に受け入れがたい方もいるでしよう。
ただ、それでも私は東京にはもっと道路が必要だと考えます。東京の最大の弱点である交通渋滞を緩和し、今後起こり得る災害に対処する上も、道路はきわめて重要なインフラだからです。
このため、東京という都市が今後も長く輝き続け、これからの日本の発展に寄与するためにも、東京でも道路整備が少しずつでも進んでほしいと考えます。
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