なぜ人間は乗り物が好きなのか?(仮説)
こんにちは。交通技術ライターの川辺です。
今回は、「なぜ人間は乗り物が好きなのか?(仮説)」というテーマで書きます。
最後に(仮説)と入れたのは、私が導いた答えがまだ「仮説」の段階であり、これが正しいか否かの議論や、データに基づいた定量的な検証が充分にできていないからです。
これから説明することは、私が考えた、現時点における「ざっくりとした答え」です。「人間と乗り物」の関係を俯瞰した試みとして、お楽しみいただければ幸いです。
■乗り物が好きな人は多い
さて、本題に入る前に、みなさんに質問させてください。
みなさんは、乗り物が好きですか? ここでいう乗り物とは、自動車・鉄道・航空機・船といった輸送機関を指します。
私はnoteでおもに交通関連の記事を投稿しているので、それらを読んで下さった方の中には「好き」と答える方が多いでしょう。かくいう私も、乗り物が「好き」です。
私は、「乗り物が好き」という方が、日本全体で多く存在すると考えています。なぜならば、乗り物を趣味の対象としている人が少なからずいるからです。
もし日本に「乗り物が好き」という方が多くいなければ、書店に自動車や鉄道、航空機などを扱う趣味誌が並ぶことはありません。逆に考えれば、「乗り物が好き」な方が多く存在するからこそ、乗り物を扱う趣味誌のニーズが高く、それを制作・出版・販売するビジネスが成り立つのです。
このような傾向は、世界全体でも見られると私は考えています。もちろん、日本よりも乗り物を扱う趣味誌が少ない国もあるでしょうが、私は海外の駅や空港で「鉄道ファン」や「航空ファン」と思われる人を見て、また海外の鉄道博物館で「鉄道ファン」と思われる人を見て、「どこの国でも乗り物好きは存在する」と感じたことがあります。
また、「鉄道ファン」や「航空ファン」と自称するほど鉄道や航空機が好きとは言い切れないけど、乗り物で移動することは「なんとなく好き」という方もいるでしょう。むしろそのような方が、全体から見れば多数派だと私は考えています。
■人間は乗り物が好きな動物?
そこで私は、思考を掘り下げた結果、以下のような仮説を立てました。
こう書くと、「『人間』という主語が大きすぎる」とか「すべての人間が乗り物好きと断言するのは乱暴」といったご批判もあるでしょう。
それでも私がこう言い切ったのには、明確な理由があります。
その理由を端的に言うと、乗り物は人間が持つ根源的な欲求を満たしてくれるものだからです。
人間をふくむ動物には、「自由に動き回りたい」という根源的な欲求があります。なぜならば、生命を維持するうえで動き回ることが必要だからです。もし動物が動き回れないと、水や食糧の輸送や、外敵から離れ身を守るための移動ができなくなります。
いっぽう人間は、他の動物とくらべると、頭脳が発達しているものの、移動が得意であるとは言えません。
つまり、人間は、チーターや魚、鳥に対してコンプレックスを抱かざるを得ない動物なのです。
このため人間は、「自由に動き回りたい」という欲求を満たすために、陸上・水上・空中を自由に移動できる「道具」を創りました。それが自動車・鉄道・船・航空機といった「乗り物」だったのです。
乗り物は、人間による移動や輸送の範囲を大きく広げてくれました。そのことが人類の生活に与えた影響は計り知れません。
また、文明が発達して、水や食糧の調達に困らなくなると、人間は移動を「レジャー」としてとらえるようになり、乗り物を利用することを「エンタテインメント」として楽しむようになりました。豪華客船による世界一周旅行は、まさに乗り物による移動をエンタテインメントにした代表例です。
となれば、人間が乗り物に興味を持ち、魅力を感じても不思議なことではないと考えられます。
また、映画作品の中には、登場人物が非現実的な移動をするものが多く存在します。たとえば、めずらしい乗り物を操作して空中で自由に飛び回るシーンや、危険なカーチェイスを繰り広げるシーンは、多くの映画作品で見られます。
このようなシーンは、人間が持つ「自由に動き回りたい」という欲求を満たし、視聴者が楽しめるように意図的に盛り込まれたものではないかと私は考えています。
以上のことをまとめると、冒頭で紹介した「なぜ人間は乗り物が好きなのか?」という疑問に対する私なりのざっくりとした答えは、「乗り物は『自由に動き回りたい』という根源的な欲求を満たしてくれるから」となります。
もちろん、「好き」の程度には個人差があります。しかし、人間は、移動範囲を広げてくれる乗り物が根源的に「好き」であることには変わりがないと、私は考えました。
■私が答えを出そうとした理由
ここまで読まれた方々の中には、「なぜこの人(この記事を書いた私のこと)はその疑問に対する答えを求めてきたのか?」と思う方もいるでしょう。
それは、交通関連の書籍の企画を立案するのに必要だったからです。
私は現在「交通技術ライター」と名乗っていますが、実際は原稿の執筆だけでなく、書籍などの企画を立案し、出版社の編集者に提案する仕事もしています。
後者の仕事で重要なのは、ニーズを把握し、自分ができることと合致させ、出版社の編集者が魅力的だと思う企画をまとめ上げることです。これができないと、出版社の編集会議で企画を通すことはできません。
だから私は、「交通をテーマとした場合、どのような書籍が世の中から求められるか」と繰り返し考え、思考を掘り下げた結果、「なぜ人間は乗り物が好きなのか?」という素朴な疑問に対して、自分なりの答えを見つけ出す必要に迫られた、というわけです。
■検証が必要な「仮説」
ただし、私が導き出した答えは、冒頭で述べた通り、あくまでも「仮説」に過ぎません。
これが正しいと言えるかどうかを判断するには、データに基づいて定量的に考え、他の方のご意見を参考にさせていただきながら検証を重ねて行く必要があります。
そこで、現時点で私が立てた「仮説」をnoteの記事として公開することで、多くの方にご覧いただき、ディスカッションをさせていただきたいと考えました。
この記事に対するご意見、ご感想などございましたら、コメント欄に書き込んでいただけると幸いです。よろしくお願いいたします。