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『ハローサマー、グッドバイ』/本・SF青春恋愛小説

夏休暇をすごすため、政府高官の息子ドローヴは港町パラークシを訪れ、宿屋の少女ブラウンアイズと念願の再会をはたす。粘流が到来し、戦争の影がしだいに町を覆いゆくなか、愛を深める少年と少女。だが壮大な機密計画がふたりを分かつ…少年の忘れえぬひと夏を描いた、SF史上屈指の青春恋愛小説、待望の完全新訳版。

 タイトルがいい……。ビートルズは『Hello,Goodbye』が好きだし、くるりは「ハローもグッバイもサンキューも言わなくなって」が好きだし。もしかすると簡単な英単語が好きなのかもしれない。
 そんなわけで、夏なので、ほんとクソ暑いので、夏っぽい小説を読みました。ああ、早くグッドバイサマーしたいね……。
 ざっくりした感想としては、『何かが道をやってくる』を読んだときに近いかも。季節を合わせてみたけど、「青春恋愛」の部分はもう少し……あ、うそ、少しじゃなかったごめん……"もっと"若いうちに読んだほうが楽しめたかなあ。SFの部分は楽しんだけど、フルで受け止めるなら、思春期の甘酸っぱい気持ちを共有できる感性があったほうがいいよね、っていう。この辺の感覚は、そういう類の話でもいまだに刺さるやつがあったりなかったりするので、よくわからないんだけどね。『Night in the Woods』はふつうにやられたので。

 では、またいつものように引用したり感想添えたり。


「だいじなのは、お話の裏にこめられた意味なんだよ、ドローヴ少年。お話ってのはある目的があって語られるもので、その語られかたにもやっぱり目的がある。お話がほんとかそうでないかなんてのは、どうでもいいことなんだ。それを忘れるなよ」

p.36

 めちゃくちゃ思わせぶりなセリフ。フィクションに対する姿勢的にも、この作品自体にも匂わせてくる。


 ストロングアームはにこりとして、「おれもそれを自問しつづけたよ、みんながふらふらとここにやってきて、野営地を造りはじめたときには。みんなに、なぜ家を捨たと聞いたら、答えはなんだったと思う? だって、ここに残ったって大しで意味ないじゃないか、そうだろ、だと。だからしばらくしておれもここに来て、いまはおれにもわかった。自分が死にかけているとわかってるときに、よそのどこかに命があるのが見えると、そのそばに身を寄せたくなるんだ、命の小さなかけらが自分にも伝わってこないかと期待して」

p.348

 滅びゆく中の、人々の行動に弱い気がする。『三体』とか、『渚にて』とか、『星の大地』とか。うわー、『星の大地』懐かしい!!! 思い出してテンション上がってきた!!!(自家発電)


「新しい名前の前半は住んでいる階層によって決まり、これで名前をいえば、その人の身分を完全に識別できるようになる。前よりもずっとよい。これなら礼を失することもなくなるしな。古い命名法では、身分に関するまちがいが非常に起きやすかった。これからは、まず政務官さまがいらして、政務官さまの廷臣はみな、名前の前半に"第二級"とつく。議員の方々は、"第三級"だ──わが家のよき友人たるスローンさんは、ゼルドンースローンではなく、第三級スローンと呼ばれることになる。そこの
ところをよく覚えておけよ、ドローヴ。いや、こう呼ぶべきかな?」といって父はあけっぴろげに笑い、「──第四級ドローヴ」

p.364

 ここが妙に好きでした。身も蓋もない実用性一辺倒の命名法と、お父さんのキマっちゃってる雰囲気で。
 たぶん感想として多いと思うけど、ある程度歳を重ねちゃうとどうしても父のほうに感情移入しちゃうところもあるよねえ……。最後はさっくりと切り捨てられちゃうし、息子に怒りを覚えつつもどうにかブラウンアイズに対しても共感しようとした父親に哀しさを感じるよ。

 大オチには「おおー!」って思ったけど、できたらもっとその部分をもっと味わわせて!! って気持ちが強くもあり……やはり本作をまるっと味わうには青春と恋愛の志向性がマッチしないとだね!

 なんかあんまり面白くなかったのかな、みたいな言葉ばかり並べてますけど、お嫁に本作の天体図を説明している夢を見るくらいにはハマったので、続編も読んでみる予定です! では!


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