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台湾海軍国産潜水艦を導入~台湾潜水艦はどう戦うのか?~

 9月28日に台湾は初となる国産潜水艦「海鯤(かいこん)」を進水させた。
 この新潜水艦から見る台湾海軍の潜水艦の戦い方とは?

台湾海軍の潜水艦


台湾海軍潜水艦「海龍」



 台湾海軍が保有する潜水艦は通常動力艦で4隻だ。
 オランダが建造した潜水艦を購入した「海龍」級が2隻、アメリカから売却された「テンチ」級を改修した型が2隻と合わせて4隻だ。
 「海龍」級は1982年から1988年にかけて作られた潜水艦で、日本では「はるしお」型が同時期の潜水艦だ。
 古いとはいえ、「テンチ」級改修型よりはまだ新しい。
 「テンチ」級改修型は元の「テンチ」級が第二次世界大戦に建造された潜水艦だ。
 この「テンチ」級を戦後にアメリカ海軍が行った潜水艦の近代化改修計画で改造した潜水艦から「カットラス」と「タスク」が台湾に売却された。
「カットラス」が「海獅」、「タスク」が「海狐」と改名された。どうもこのかなり古い2隻の潜水艦はまだ現役らしいとされる。
 そんな台湾の潜水艦事情を考えると、自国で開発と建造をしたいと考えるのは自然なものだろう。
 「海龍」級となる潜水艦をオランダから購入する際に、中国からの圧力をオランダが受けてしまう過去もあり自国開発と建造を台湾は模索する。
 他国からの潜水艦技術の入手を始め、台湾の造船能力で潜水艦を作れるように向上させた。
 台湾の地道な潜水艦建造技術習得と、欧米の協力が「海鯤」として形になったのです。

台湾有事での台湾潜水艦の戦い方


台湾周辺の海底の地形。台湾の東と南が深く、西と北は浅い(Googleマップより)



 台湾海峡は浅い深度の海域であり、島々もある複雑な地形でもある。
 この地形特性では台湾海峡で潜水艦を使うのは難しい。
 浅い深度は航空機から発見される確率を高くし、複雑な地形は座礁や衝突など事故の可能性がある。
 中国人民解放軍が台湾に攻め込む時に、台湾軍潜水艦が台湾海峡で活躍できる場所ではないと思われる。
 (台湾海峡の海上防衛はドローンや地対艦ミサイルの使用が望ましいように思う)
 では、台湾軍潜水艦が真価を発揮する場所は何処か?
 それは台湾東部の太平洋側の海域だ。
 ここなら潜水艦が活動しやすい深さの海がある。
 台湾西部は中国軍の攻撃の矢面に立たされるものの、東部ならば幾分攻撃は届かないとされている。
 しかし、近年では中国軍は航空機や艦艇を台湾より東の海域を通過する行動を見せている。もはや中国軍は台湾をどの方向からでも攻撃可能だと示している。
 そこで台湾の潜水艦の価値が出て来る。
 台湾東部の太平洋に台湾軍の潜水艦を潜ませ、太平洋から台湾を攻撃しようとする中国軍艦隊を迎え撃つのだ。
 太平洋での伏兵が可能なのは現状では「海龍」級2隻だけだ。
「海鯤」級の就役が進めば台湾東部の守りは固まって行くでしょう。
また、「海龍」級から台湾海軍潜水艦はハープーンミサイルを魚雷発射管から発射できるようになっている。
 「海鯤」級もハープーンの運用が可能だ。
 元はアメリカ製の艦艇に搭載する対艦ミサイルであるものの、対地攻撃も可能とされている。
 現在運用されている型は射程が120kmほどとされている。
 射程が1000kmを越えるトマホーク巡航ミサイルと比べると短い射程であるものの、潜水艦が使うとなれば射程の短さを補える。
 台湾海軍潜水艦を攻撃的に使うとすれば、台湾に上陸した中国軍が築いた拠点や海南島の中国海軍基地を攻撃するところだろうか。
 とはいえ、現状でも少ない潜水艦戦力を投機的に使うよりも伏兵となって中国海軍の行動を少しでも抑えられる方が効果が大きいだろう。
 新たな潜水艦就役がどれだけ進むかで、台湾有事が起きた際の台湾軍の防衛計画は違ってくるかもしれません。

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