シナリオプランニングが生んだ老舗企業の変化/まちづくりプレイヤーに聞くvol.3
はじめに/シナリオプランニングと二拠点事業者について
「シナリオプランニング」とは、パンデミックや物価上昇など先が見えない時代に生きる今、このような環境変化に振り回されることなく、不確実な出来事をチャンスに変えていくための手法のこと。起こり得る不確実な未来のシナリオを設定し、それに対する分析や戦略を検討していくステップを経験することでより鮮明な未来を描くことができるというもの。
今回二拠点事業者としてシナリオプランニングを主導し、ラコームの企業成長サポートを行った講師は山本彩代さん。ファシリテーター/グラフィッカーとしての肩書を持ち、京都をベースにこれまで行政や企業の場づくりを成功させてきた専門家です。
大好きな勝山で事業を続けていくために
ー まずはシナリオプランニングを実施しようと決めたきっかけについて教えていただけますか?
2020年から始まった新型コロナウイルスによるパンデミックにより、世界における「この先の未来」が大きく変わりました。それに近年は物価上昇、人件費や資材費も高騰していますよね。人件費なんかは先進国と比べると日本の単価はかなり安くなってきています。これまでと同じことばかりやっていては、縫製事業なんかだとベトナムや中国にいつの間にか追い抜かされて、私たちが出稼ぎに出なければならない時代が来るかもしれない。老舗企業として危機感が高まるばかりです。でも私たちは勝山市が大好き。この地でずっと事業を続けていきたいという想いが強くあります。その想いを実現し続けるためには、いま何をすべきなんだろうと真剣に考えていた時に、地域おこし協力隊の西垣さんからシナリオプランニングの提案を受けて、取り入れてみようという流れになりました。
ー 経営者であるご自身だけでシナリオプランニングするのではなく、今回は社員を巻き込んで実施されたと思います。その理由は何ですか?
実は以前、商工会議所の補助事業でシナリオプランニングを受けてやった経験があります。その時は一人でやったのですが、経営者だけが世の中の変化に気づいて新しい未来を描いてるだけではダメだなと。社員自身が起きうる未来の変化を自分たちでプランニングして、それを「自分ごと化」できて初めて会社に変化をもたらすことができるのではないか、そんな風に考えで今回は営業部8名を巻き込みました。
具体的なイメージが「変化」を生む
ー 実際にどのようなプロセスで進んでいきましたか?
講師の山本さん主導で、4つのステップを踏んでいきました。
具体的には、
①これから変化しそうな要素を洗い出す(例:縫う技術が必要ではなくなる製品が増える、日本の環境規制が強くなる、中国の工賃が増える・・etc)
②その要素をグループ分けする
③グループ分けされた軸の中から2つ選ぶ
④シナリオ毎の未来を考える
事前準備では、社員全員に社会現象や時事リサーチなどの役割を受けてもらいました。その背景には、想像力を存分に膨らませてもらためであったり、共通して全員が同じ想いを持ってもらいたいという、私から社員への期待が込められています。
ー 進めてみて社員のみなさんの反応はどうでしたか?
やっぱり初めての試みだったのでみんな困惑していましたね(笑)こんな風に頭を使ったことない!という感想もありました。ステップの踏み方を観察していくと、今までより深く、社員それぞれの特性を理解する時間にもなりました。「こんな価値観を持ってたのか。」とか、気づきが多かったですね。
ー そんな気づきもあったのですね!実際に行動が変わったなどの目に見える変化はありましたか?
シナリオプランニングから未来をイメージできたり、プロセスを通じて同じ危機感や想いを持てるようになった社員は他のメンバーを巻き込むようになり、顕著に行動の変化がありますね。やらないといけないアクションに対するマインドセットもできたように思います。やっぱりイメージが膨らんだ人から「変化」していくんだなと、シナリオプランニングによるイメージ具現化の価値を感じましたね。
ー 大きな変化が生まれたのですね。それを主導した講師の山本さんの印象はいかがでしたか?
とても話しやすくて、講師としてはベストな方でした!私たちの職場には女性が多いので、女性同士楽しく会話しながら伝えたいことはスバっと発言できる、そんな場づくりが印象的でしたね。
老舗企業の未来を創るチャレンジ
ー シナリオプランニングで描いた未来を元に、今後チャレンジしていきたいことなどありますか?
私自身が設定したシナリオは4つあるのですが、その中でも一番最初にチャレンジしたいのは「縫製会社として自社プロダクトをつくる」ことです。ずっと前からDtoCのようなものづくりをやりたいとは思っていましたが、シナリオプランニングでその目標がより明確で意義のあるものになりました。
その流れで最近はアーティストの方々と残布を使ったプロダクト開発のコラボレーションを積極的に行うようにしています。コラボを通じて自社プロダクトのアイデアを膨らませていき、ゆくゆくはプロダクト開発・生産・販売の一気通貫の仕組みを完成させたいなと。また、それと同時に確固たるブランドづくりにも取り組みたいですね。
新事業立ち上げなどの多展開から、老舗縫製企業としての新しい未来をつくっていきたいなと思っています。
最後に、講師からコメントをいただきました
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織田さん、貴重なお話ありがとうございました!
シナリオプランニングは企業の未来像が明確になるだけでなく、社内の「変化」を生む有効な手法であることがお話を通して良く理解できました。
今回のように、勝山市では企業成長を促進する「二拠点事業」を積極的に推進しています。今後も多くの企業の成長をサポートする取り組みを行ってまいります。
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