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【子育て難しいんじゃ】マリオカートはお姫様言葉でやるべきな理由を説明できて?
「あら、ごめんあそばせ」
「よろしくってよ」
我が家の夕方にはこんな声が響きわたる。
テレビゲームは解禁していなかったものの、いい加減解禁しないと新しいハードが発売されそうな気がしてきたので、子供たちに任天堂スイッチを開放する事にした。
開放。と言えば聞こえはいいが。当然電源をどうやって入れるかは教えていないし、どうやってゲームをスタートするかも教えていない。
あくまで監視官の私が居るタイミング、かつ子供の音読やら小学校の準備が終わっている等あらゆるタスクに「完」と印が出ている時限定でゲームができるという条件だ。念能力の「制約と誓約」で言うならば、心臓に鎖巻き付けているよかはるかに重い制約。いうなれば掛け算。すさまじい破壊力になる事は容易に想像できる。ゴンさんなんて目じゃないね。
さらに家の守護神こと私のワイフは機械に関する知識の差がちょっと激しい。得意なものは何処までも得意だが、不得意な事は何処までも不得意。インターネットにつながればどこから見つけてくるんだよみたいな気色悪いyoutubeを眺めたりしているし、かと思えば、「ウィーフィーが繋がらないんだけど」ってWifiの設定を求めたりしてくる。頭脳系おバカさんの代表格みたいな人物なのだ。
だもんで任天堂switchは知っているが、電源の入れ方が分からない(変なところを触ったら壊れそうだし)っていう人なのだ。家電買ったら説明書を読まないで触るタイプとはまた違う。私はどちらかと言えばガンガン触ってみるとか、ボタン押してみるタイプなのだけど。核スイッチを前に凡ミスで世界を滅ぼすとしたら私の方なのだろう。
つまりもう一人の管理人はずばりポンコツ。彼女にゲームを所望した所で「私は!電源の入れ方が分からない!(そして調べないッ!)」って列海王みたいな大声で返事されるのが関の山なので子供たちはお父さんが居るときはゲームができると息巻いている。
よぅし!今日はお父さんいるからゲームしようか!
「YEAH!!!」
その盛り上がり方はちょっと異常なレベルでミニオンズがゲラゲラ笑っている時のテンションを想像していただければちょうどいいだろう。結構うるさい。
で、これが始まれば家族で大盛り上がりなのだが・・・
言葉遣いがちょっとね。
確かにゲーム中というのは素が出てしまうものだ。反射的に奥底に潜んだ感情が水面から姿を現す。その昔CoDで相手にぼこぼこにされたときは「おめえ何してんだよ!このゲーム二度とやるんじゃねえ!」って海外の人に怒られたし。上手になってボコボコにしたときは「おめえみたいなのが居るからゲームがつまんなくなんだよ!クソが!!!!」って海外の人に罵られたこともある。ほんと言葉ってナイフになるわよね。
どこから覚えてきたんだよそんな単語。そんな言葉を上の娘がバシバシいうもんだから・・・まぁそれは百歩譲って。それをコピーロボットかよってぐらい正確に下の娘が真似するのよね。本人が全く意味わかっていなくて姉の事が好きすぎるが故にそういう事態になってしまうのだけど。まぁかわいいと思えればいいのだけれど。
そのあたりは厳しくせんといかんと考えている。大人が同一空間に居るわけだ。
子供には申し訳ないが、私はその手の人を傷つける言葉、いや、直接相手に投げないとしても周りの気分を害する言葉については非常に厳しい。そして妻もこのあたりには私以上に厳しいものがある。
子供たちは当然ゲームが下手糞なので、下位をウロウロしている。そしてキャッキャ言いながら失敗したりすると暴言を吐きまくるのだが。それに伴って妻の操るヨッシーも負のオーラをまとってくる。怒りの真紅甲羅が私の操る狸マリオに放たれる。「ヨシ。」落ち着きに落ち着いた現場ネコみたいな、ヨシ。誰にも聞こえないけど。ヨシ。そんな感じで私のカートがクラッシュする光景を確認することで留飲を下げる妻。こんな遊び見たことない。
と、いうわけで導入さるに至った。「マリオカート中はお姫様言葉を使おう」というルールだ。
お姫様は暴言を使わない。国の重要なアイコンである。「クソ」とか「んだよ!」とか「ビィィッッチ!」とか言わないのだ。だからこそお姫様言葉を自由に操る事で、とっさに暴言が出る事を防ぐのだ。ディズニープリンセスたちはそんなこと言わないでしょう。だからお姫様言葉を操ってゲームを心から楽しみましょう。という甲羅ぶつけ魔からの提案。
でも、俺分かんないんだよ。お姫様言葉。
ルールを設定したはいいものの、お姫様言葉のルールが分からない。どうやって使うんだお姫様言葉。娘たちは分かるのか?あいつら確かにディズニープリンセス好きだけどさ。今ディズニー+は解約しちゃってるし・・・っていうか、妻。あんたもお姫様言葉わかんないじゃん。
「アタシを誰だと思ってんだい?」
うん。戸籍謄本も見たことあるけど、お姫様ではねぇよ?
「まぁ黙ってみてなって…」
と、お姫様言葉のルールを覆す「黙ってろ」との妻の提案に空いた口がむしろ塞がる形になったのである。
やってみると、これが面白いもんで。
誰かを抜かすときは、「ごめんあそばせ」
コースアウトした時は「落下しましたわ」
曲がり切れないときは「曲がり切れなくってよ」
誰かが抜かすのを偶然にもサポートした時には「よくってよ」
………
…あってる?これ。お姫さまってこうやってマリカーすんの?
走るピーチ姫あたりに一つ一つ確認したいところだが、あいつゲーム内で「キャホー!」とか「ワァーォ―!」ぐらいの事しか言わないんだよ。語彙力。この中で唯一って言ってイイ程希少なのに。姫。桃姫。水道管工事おじさんに助けられる姫。結構すごい設定。他のやつは大抵人外。人だとしても悪男(ワリオ)とか悪爺(ワルイージィ)とかろくな奴がいない。
で、概ねさっき上げたパターンで会話が成り立つ形となる。我々が辞書とか広辞苑とか正しい言葉のマナー研修とか積んでいるのに結局は「よくってよ」に集約されるんだなぁと強く感じた。お姫さまってすごい。
「あら、私に赤甲羅をおぶつけなさったのはどなたかしら?クッパさんかしら?」
「ちょっと、バナナをお落としになったのはどなた?」
「あのゴリラ、どうにかしてくださる?」
「ゲソね。よくってよ。」
「あらあらまぁまぁ」
「あの畜生(狸マリオ)を毛皮にして下さらない?」
「今の甲羅。いけませんことよ」
「ギリギリで抜かれてしまいましたわ!!!」
「爺やを呼んで!!!よろしくってよ!」
・・・あってるのか?これ。
お姫様言葉の正しい定義が分からないままだし、デヴィ夫人やなぜか黒柳徹子さんが時折現れる為、レースがよりエキサイティングになる。子供達も我々がゲラゲラ笑いながらやっているのを見て真似するようになった。
結局子供というのは、親や周りの環境から色々なものを吸収する。いいものも悪いものもそこにはあまり無いのだろう。もちろんそこで判断できるものもあるかもしれない。しかし基本的に子どもというのは無垢だ。だからこそ怒るのではなく、教えて、伝えてあげなくてはいけないのだろう。慣れていくうちに子供たちは汚い言葉を全く使わなくなっていった。親の楽しそうな姿を。自分も一緒にその場で笑っていることを忘れてもいいが、そうやって楽しいことや、その場で使ってはいけない言葉を学んでいってほしいと思う。やっぱり一人でやるゲームもいいけど。複数でゲームをやることをデフォルトにしていってほしいなぁ。
結局オンラインでどこまでも人は繋がっていくのだし。いい面もあれば悪い面もあるんだろうけど。誰かと何かをすることに楽しさを覚えていて欲しい。そしていつか本当につらいことがあったとしても、一人でふさぎこまずに、誰かと何かをする方法がいくらでもあるという事に気付けるようになって欲しいなと思う。共有とは偉大である。
しかし、先日。食事中ご飯のお代わりを確認したら下の娘が茶碗を差し出しながら「よくってよ!」と元気に答えた。
うん。お姫様言葉をちゃんと調べないといけないね。コレ。
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