【寄席エッセイ】写輪眼のカカシもといウチの妻の倹約っぷり


妻は倹約家である。


その倹約っぷり。ただの倹約に留まらない。
お肉は産地とグラムの金額を。卵の値段は。野菜の値段は。君の名は。
その辺りは皆やっている事なのだろうか。一緒に買い物にまわる私はいつも目を点にする。



「おいおい、スーパーを回る時間がもったいなくないか?」






なんて野暮な台詞を吐くもんじゃない。そういう所だぞ。メン。





そんな倹約家の妻はモノを大切に使う。壊さないように使うとかそういう感じではない。壊れてもお墓に行けない。おわかりいただけただろうか。例え壊れた洗濯ばさみでもビニールテープで補強。洗濯ものを大量に干すやつ。ピンチハンガーね。プラスチックが紫外線でボロボロにも拘らず、あらゆるところが骨接ぎされてフランケンシュタインな仕上がりを見せる。マッドサイエンティスト。マッドマックス。怒りのデスロード。あらゆる異名を持つ我が家の倹約家は、ゾンビを作り出す親玉みたいなノリなのだ。




スティーブジョブズがiPhoneにケースをつけているのを見て怒ったエピソードがあるらしい。「傷がついたってそれが自分の使っているモノの証なんだ。なぜ傷をつける事を恐れるのか」




美しく、力強いセリフだ。




そんなジョブズもウチのピンチハンガーを見たら「ZYOUBUTSU(成仏)サセテ!!!」と日本語で言ってくれるだろう。「ゴーホーム!」かもしれない。通訳の鼓膜が破けちゃう。傷・・・と呼ぶには生温い。バラバラになった後「合体!」みたいになってる。リアル合体ロボみたいな見た目になってるのだ。元が一つだったから、合体ロボは表現が違うのか?拷問みたいになっちゃってる。まぁジョブズはもういないんだけど。



とかくそれも普通に使えているので特に口出しはしない。ピンチハンガーはまだ生きている(という事にしておこう)










こういった私生活のモノ以外も倹約家が故に様々な発明をしている。


例えば、シルバニアファミリーの小道具。
ケーキやら、目玉焼きやら、皿やらなんやら。妻が手作りしている。
何でもレジンを固めて着色すればいい感じにできるらしく。
「買うのもなんかもったいないし」なんて一言で済ませて大量生産をしている。知り合いの家族が遊びに来た時に、「え!?これ自分で作ったの!?」ってビックリするリアクションしか見たことが無い。妻はそれほど難しくないというが、そもそもそれを代用するとかじゃなくて作り出してしまう所が凡夫との差なのだろう。


あとはキーホルダーとか。
子供がマカロンだかエンゼルパイみたいなものをぶら下げていると思ったら「紙粘土で作って、色を塗った」なんて真顔で言いやがる。えぇー。一般家庭の嫁さんって皆こんな感じなの?パッと見ただけでコピーできちゃう「はたけカカシ」みたいな感じなのかしら?写輪眼ついてんの?インテル入ってるってレベルじゃねえぞ?



そんな感じであらゆるものをその目で捉えて千の術をコピーしたを歴戦の上忍みたいな感じなのだ。彼女の目に留まればクリエイトされてしまう。ちょっと放っておいたら商標登録されている品すらも完コピしそうでちょっと怖い。

ただ妻は絶望的にプレゼンやマーケに関する知識が無い為、そういったものを販売しようとしたりする発想には何故か至らないらしい。もっと自分出していけばいいのに。



そんなうちのはたけカカシがビックリな発言をしたのは、子供の習い事のあるワンシーンだった。



何でもチームTシャツなるものの販売があったのだ。1枚3500円。まぁかわいいというかなんというか可も不可もないどこにも売っていないようなロゴが入った何の変哲もないTシャツだ。

「うーん、一枚ぐらいなら買ってもいいか。子供のモチベに繋がりそうだし」

そんな呑気な事を考えている私を尻目に子供たちは「全色欲しい!」と騒いでいる。3色展開。1人につき約1万円。子供は二人だから合計2万円。
子供の願いを叶えてあげたいのはやまやまだが、2万円の出費はでかい。しかも長い事着られるわけでもない普通のTシャツだし。この成長は早いのだから確かに子どもたちに与えたいのは山々なんだが全色はちょっと・・・


なんて私がまごついていると





「シルクスクリーン・・・」



と我が妻もとい写輪眼のカカシが怖い事をつぶやき始めた。







えぇ!?マジで!?






こいつ。Tシャツ作る気だ。本気か。


シルクスクリーンするための道具なんて家にあったか?いや認識していないだけか?レジン固める道具だって四次元ポケットみたいな何もないところからずるりと出てきて私の心臓が止まりかけた過去だってある。物置に手を突っ込めば「ピャピャピャピャー!」みたいなドラえもん的効果音(文字化困難)が部屋に鳴り響き「シルクスクリーン!」って皆皆皆叶えてくれるんだ。シルクスクリーンは未来の道具じゃねえけどさ。



妻が本気を出したら3色展開なんて訳ないだろう。下手したら48色展開なんてこともあり得る。洋服棚がパンクする。「その赤は子供の着たい「赤」じゃねえよ!」みたいな色彩検定みたいなお着換えタイムが容易に想像できる。なんだそれは地獄か。






「今日・・・先生が着てたデザインだよね・・・」





どうやらすでに写輪眼で現物は捉えていたらしい。いつ木の葉の額当てをグイっと持ち上げたんだ。再不斬戦。面白かったよね。ナルトっていいマンガだよね。しかしまぁ、色々と発言が怖いぞ。妻。その目は何を見ていたのか。お前、子供の動き見ないでなんで先生の着てたTシャツのデザインコピーしてんだよ。忍びの戦うべき領分はそこじゃないだろ。火影に怒られるぞ。カカシ。






うちの妻は本当に倹約家だと思う。偉い。

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