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「変えること」にも目を向けよう


多岐にわたる企業経営者の悩み

私はこれまで15年以上、グローバルな経営コンサルティング会社でコンサルタントとして働いてきました。それ以外にも個人で活動していた期間がありますので、それなりに長い間、「企業経営者の悩みを聞いてその解決に向けた支援をする」という活動を繰り返してきたことになります。

私は主に、経営戦略や事業戦略、新規事業創出、デジタル戦略といった分野を専門としていますので、経営者から相談される悩みも、ある程度そういった分野に偏っています。しかしそれでも、企業経営者が抱える悩みは多岐にわたっています


悩みの2分類 ー 「続けること」と「変えること」

そのような多岐にわたる悩みは、シンプルに考えると「続けることに関する悩み」と「変えることに関する悩み」の2つに分けることができます。

ここで、「続けること」とは、既存事業の安定運営と成長、収益性の向上に向けた取り組みのことであり、「変えること」とは、DXなどの事業の変革や、新規事業の創出といった取り組みのことを指しています。

多くの日本企業は生え抜き社員中心で「変えること」が苦手

経営に土地勘がある方であれば、
短期的な視点では『続けること』に集中する方が収益向上に直結するが、同時に中長期視点で意図的に『変えること』に取り組むことが必要」
ということをおっしゃるかもしれません。全くもってその通りです。

そして、「しかし多くの日本企業は、続けることは得意だが変えることは苦手だ」と続けられるかもしれません。これもその通りです。

1つの理由には、伝統的な日本企業は生え抜き社員が中心で、スキルや経験が偏りがちだということがあります。慣れた事業を効率化しながら続けることは得意でも、経験のないことに取り組んでいく変えることは苦手だというわけです。

ただ実は、伝統的日本企業に限らず、中途採用人材を多く集めている新興企業や外資系企業であっても、企業が大きくなるにつれて「続けることが中心となり、変えることが苦手になっていく」というケースは多いです。つまりそれだけ「変えること」は難しいのです。

念のために補足しておくと、「続けることは簡単だ」と言っているわけではありません。企業が高いレベルを目指す限り、常に「続けること」にも難しい問題が数多く存在しています。
ただ、そうは言っても、やはり「変えること」はおそらくそれ以上のチャレンジが伴うものです。


自然に増える「続けること」の悩み

さてここで、「続けること」と「変えること」について素直に考えると、企業が抱える悩みの多くは「変えること」に関係するものになりそうな気がします。組織として経験が足りない分野にチャレンジするのですから、それについて悩むことは自然だと思うわけです。

しかし不思議なことに、私が世の中で見聞きする経営者の悩みは、必ずしも「変えること」に関するものだけではなく、むしろ多くが既存事業の継続に関するものだったりします。得意なはずの「続けること」に関して、「今はなんとか動いているが常に人手が足りない」とか、「事業成長と共に組織を拡大しているが、常にそれをうまく管理できるマネージャー人材が足りない」とか、そういった「続けることに関する悩み」を抱える企業経営者が多いのです。

そして、そういった「続けることに関する悩み」が発生すると、多くの場合、担当している人(現場だけでなく、ミドルや時に経営陣までも)は、それにかかりっきりになってしまいます。これは、「続けること」は短期的な問題であることが多いためです。

理想的には、組織としてうまく役割分担をして、現場が短期視点での「続けること」の問題解決にかかりっきりになっている時こそ、経営者は中長期視点での「変えること」の問題解決をうまくカバーできれば良いのですが、実際には、組織として両方をバランス良くカバー出来ていることはそれほど多くありません。

そして結果的に、経営者の中にも、続けることに関する「人が足りない」などといった具体的な悩みが自然に増えてきます。逆に「変えることに関する悩み」は、「なかなかうまくいかない」「やり方がわからない」といった浅い段階の悩みだったり、「そもそも考えていない」といった悩み以前の段階に留まっていることが多くなってしまいます。

上述した通り「変えることは難しい」という別の理由も相まって、尚更、「変えること」は十分に手を付けられないまま実質的にほとんど放置されているといったことも珍しくありません。


結論 ー 「変えること」にも目を向けよう

以上で述べたように、自然に任せていると「続けること」の悩みばかりが増え、結果的に「変えること」について手を付ける余裕がなくなってきます。だからこそ経営者は、意識的に「変えること」について考え、取り組むことが重要になります。

具体的には、組織内でイノベーションや変革に関する議論を定期的に行い、新しい取り組みやアイデアを試す機会を設けましょう。また、社員が変革の必要性を理解し、主体的に行動できる環境を整備し、リーダーシップが変革をサポートする姿勢を示すことも重要です。

このような取り組みにより、「変えること」への悩みも健全なものとして捉えられ、組織全体が持続的な成長とイノベーションを実現できるでしょう。

結論 ー 「変えること」にも目を向けよう




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