そこからしか得られない体験がある「一年のふりかえり」、そのやり方を解説します
2021年は12月24日で仕事納めだったので、組織での稼働としては年内終了しました。(個人としては、まだ年内のコーチングセッションがあるのでもう少し続きます)
今月は各所でふりかえりのプログラム設計やファシリテーションを行なっていたのですが、「一年をふりかえる」という機会はこの時期ならだし、一年という単位でふりかえるからこそ、見えてくるもの、得られる体験があります。またプロジェクトやチームでふりかえる機会はあっても、自分自身のことをふりかえる機会がない方も多いのではないかと思うので、この年末年始に、ぜひふりかえる機会を持ってもらえればと思い、そのやり方を解説してみたいと思います。
なお、今回取り上げる一年のふりかえりは以下の記事を参照し、私が複数回の実践からアレンジした内容となっています。
(ふりかえりシートもほぼそのまま使わせていただいています)
一年のふりかえりの前提と概要
今回取り上げるふりかえりは1人でもできなくはないですが、3〜5人くらいで行うとちょうどいいかと思います。
基本的には個人のふりかえりになるので、同じ部署やチームの人でも、普段縁がない人と行っても、どちらでも大丈夫です。
そして一人1時間くらい時間を取れるといいのですが、そこまで時間を取ることが難しい時は、使える時間によって、一人あたりの時間や一緒にふりかえる人数を調整してもらえればと思います。
一人あたり20分で実施した機会もありましたが、短くとも30分くらいは取りたいところです。
前提としてこのふりかえりは参加者一人一人が自分の一年についてふりかえるためのものなので、「自分のための時間」であることを意識して参加すること、そして他の参加者の話を聞くこと、質問することも自分のためであると考えてみてください。
また、参加者自身が自分自身についてふりかえりを行いたいと思っていることは大前提となります。
なお、今回はオンラインで行いましたが、基本的にオフラインでもやり方は変わりません。
ふりかえりプログラムの構成と解説
私が提供した場では以下のようなプログラムで進行しました。
事前にふりかえりシートを共有、シートを記入してきてもらう
事前に各自で思い出しとふりかえりを行なってシートを記入してきてもらいます
チェックイン
話しやすくするために「今年、○○○したこと、○○○だったこと」のように今年に関連したテーマで一言ずつ言葉を出す時間を取るとよいでしょう
(人数が多い場合はチャットに書き出すチャットインでもOK)
この場がどんな場であるかを伝える
参加者一人一人のふりかえりの時間であり、自分のための時間であることを伝え、グランドルールとします
ふりかえりの進め方を説明
一年間の流れを語る
他の参加者からの質問
発表者からの質問
発表者によるまとめ
他の参加者からのコメント
順番にふりかえりを進める
時間管理をしっかりと、ついついて長くなりがちですが、時間で区切る前提にします。(これも最初にグランドルールとして伝えておくことが大切です)
チェックアウト
時間があれば最後に一言ずつ言葉を出してこの場を終えます
ふりかえりシートの書き方
上述の記事内で提供されているシートをほぼそのまま使っていますが、一点だけ「イベント」と「メモ」の順序を入れ替えています。
これはまずイベントを思い浮かべるところからはじめてほしいためです。
そして、以下の項目説明を参照してもらいながら、書き進めてもらえればと思います。
ふりかえりシートの項目説明
イベント
カレンダーやジャーナル、当日の記録があればそれを参照しながら思い出してもらえればと思いますが、印象に残っているイベントを書き出します
すべてのイベントを書き出す必要はありませんし、イベントがない時期があってもOKです
メモ
3ヶ月ごとに、その期間がどんな期間だったかをメモしておきます
注力したこと
期間ごとにどんなことに注力していたか、がんばっていたかなどを矢印で記載します。注力の度合いによって矢印の太さを変える、期間が続いているようであれば期間をまたいでもOKです
言葉
その期間ごとに一言で言うとどんな期間であったのか、キーワードや言葉で表現してみます
キーパーソン
それぞれの時期に印象に残っている、また自分に影響を与えた人について記載します
ふりかえりの手順とポイント
ふりかえりを行う際に留意してほしい手順とポイントです。
事前に思い出し、ふりかえりをする
このふりかえりのプログラムでは事前に一年間を思い出して、ふりかえりシートに記入してくることが大きなポイントになっています。一人で思い出してふりかえりシートを記入することで、ふりかえりを行なっているわけです。その上で、他の人がいる場で語ること、このプロセスが今回のふりかえりのプログラムでは不可欠となります。
また逆に言えば一人で思い出してふりかえりシートを記入している段階では、まだふりかえりは終わっていないことになります。
一年間の流れを物語として語る
自分の一年を他の人に物語として語る、たんに情報を伝えるのではなく、自分がふりかえりシートに記載したことの前後の文脈を含めて伝えようとすることによって、整理され再解釈されます。そのプロセスの中で自分自身があらためて気づくこともあるでしょう。他の人に語ることによって、そういった効果を得ることができます。
そして、その場にいる人たちにどのように一年を過ごしてきたかを伝えることができるわけです。
オンラインの場では、これを語る際にはふりかえりシートを画面共有しながら進めるとよいでしょう。
他の参加者からの質問
発表者が一年間の流れを物語っている時に他の参加者は随時質問をしていきます。発表者が話し終えるまで待つ必要はなく、対話するように質問を交えつつ、進めていきます。
この時にオンラインであればチャットを使って質問やコメントを入れていく。それを発表者は確認し、拾いながら進めると参加者はキャッチボールしながら進めることができますので、発表者は話しやすく、参加者は聞きやすくなります。
同じ話を聞いたとしても、参加者によってその見え方や受け取り方はことなります。それぞれの視点や考えからさまざまな質問や問いかけがされるかもしれませんが、その質問や問いかけが自分では気づけなかった、新しい視点や考えを得る機会になり得ますし、自分のふりかえりをさらに豊かなものにすることができるかもしれません。
なお、ここではアドバイスや批判は行いません。
発表者からの質問
自分が語ったことについて、自分にとってはこう見えている、こう思った一年であった、またなやんでいることを他の参加者に伝え、問いかけることによって、他者視点によるアドバイスやコメントを求めることができます。
上の「他の参加者からの質問」に似ていますが、実際は他の参加者の視点が変わるため、扱われるものが異なります。
発表者によるまとめと、他の参加者からのコメント
最後に発表者がここまで話してみてどう思ったかの感想を伝えることで、自分自身にふりかえりの内容を定着することができます。
その発表者の言葉を受けて、他の参加者からもぜひコメントやアドバイスを発表者に伝えてもらえたらと思います。
複数人での一年のふりかえりから得られる体験
一年のふりかえりをプロジェクトやチームではなく、自分自身の一年を複数人でふりかえる。これはありそうで、あまりない体験ではないでしょうか。
プロジェクトやチームのふりかえり(レトロスペクティブ)、そして一人で個人のふりかえりをする機会はあるかもしれません。でも、この自分自身の一年を複数人で行うということからしか得られない体験が確かにあります。
上述している内容から、それを知ることはできるかもしれませんが、実際にやってみることで得られる体験がありますので、ぜひ試してみてもらえればと思います。
年末、または年始にふりかえることによって、自分が今年一年やってきたこと、変化したことをあらためて確かめることができるかもしれません。
ふりかえりをより豊かにするための参考書籍
また、このふりかえりの中で用いる質問や問いかけについては、ちょうど参考となる書籍が出版されましたので、よければこちらも合わせて読んでもらうと、ふりかえりの場がより豊かになると思いますので、手に取ってみてもらえたらと思います。
この記事が参加している募集
コーヒーを飲みながら書いていることが多いので、サポートいただけたらコーヒー代として使わせていただきます!