【かつらのお話:チュール】
映画、テレビ、演劇の全鬘の生え際は【チュール(網)】に毛が植わっています。
こんにちは。京都時代劇かつらです。
今回は【チュール(網)】のお話です。
これは洋の東西にかかわらず使われている材料です。日本の時代劇だけでなく、華流、韓流時代劇でもヨーロッパの時代物でも。
時代物だけでなくハリー・ポッターのような映画でもウィッグにはチュールが使われています。
このチュールの厚さや堅さ伸縮性の違いによって映画、テレビ、演劇と使うチュールの種類を変えています。
演劇はより丈夫で長持ちするように、映像はよりわかりにくいように使い分けています。
以前は、映画はもちろんのことテレビ時代劇は全てフィルム撮影でした。
フィルム撮影は画面に奥行きが出ます。また、一枚フィルターのかかったように、人物と風景の輪郭がいい感じにあいまいになります。
フィルム撮影だとチュールもおでこと羽二重の境目も分かりにくくなっていました。
しかし最近ではデジタル高画質でより細部も鮮明に見えるようになりました。
ですから映像向けに以前より透明感がありより薄く見えにくいチュールを使っています。
しかしどれだけ薄いチュールにしてもやはり皮膚に一枚人工物が乗るわけですから、アップになったり、角度によってはどうしても見えてしまいます。
撮影現場では見えてはいけないものをバレと言います。
そのバレを照明技士さんがライティングでより見えにくくしてくれたり、ワンカットワンカットごとメーキャップが手直ししたりと頑張りますが、やはりどうにもならない時が格段に増えてきました。
現在は役者さんの肌の質感、衣装のシワやほつれ、継ぎ、小道具の傷、反射物の写り込み、セットの釘穴一つまでバレてしまうのですから鬘のチュールなどバレて当然の高画質です。
そんな中、最近では鬘のバレ隠しにもCGが使われるようになってきました。中剃り鬘のおでこの境目や生え際の網のバレをCGで消してしまうのです。
以前は撮影現場で時間をかけ、冷や汗をながしながらあーでもないこーでもないとバレを隠していたものがCGでかなり目立たなくなってきました。
令和四年の大河ドラマ、鎌倉殿の13人には丸坊主のキャラクターが何人も出てきました。
その特殊メイクの坊主の境目もやはりCGによる映像処理で加工しています。
今の高画質は、特殊メイクの技術をしてでもバレを隠すのは厳しいのです。
映像加工技術の進歩はめざましいものがあります。
令和五年の大河ドラマ、どうする家康では乗っている馬がCGになったと話題になりました。
おでこの境い目はアップになった時は綺麗にCG加工されています。
そのうち髪形自体もCGで作り、役者さんも鬘を掛けずに撮影する時代がくるかもと鬘を作りながらふと考えてしまう時もあるのです。
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