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1話:月の出逢い(絵本様に描いてもらったイラストを追加しました)
何とか歩ける様になって2日目、僕はやっとお母さんの様に走れるようになったんだ。
名前は・・・まだない。
でもお母さんは僕の事を坊や坊やって呼んで優しくしてくれる。
その坊やっていうのが僕の名前って事なのかな?
![](https://assets.st-note.com/img/1718089668577-1GBXsmTO10.jpg?width=1200)
ある日、僕は見つけたんだ。
暗くなったお空いっぱいの点々の中に細長く光っているものを見つけたんだ。
お母さんに聴くと
「あれはね、お月さまっていうの。あのお月さまには女神さまがいて、私たち猫の守り神なのよ。」
って教えてくれた。
ふぅん、お月さまには女神さまがいるのか?
僕はお月さまにいる女神さまを見たくなって、よく見えるところに登ってみたんだ。
だけど全然近くに行けない。
ねぇお母さん、どうやったらお月さまの近くに行けるの?
「お月さまはね、お空の高い高いところにあるの。私たちの手の届かない遠いお空に。
でもね、お月さまはいつも私たちと一緒にいて下さるの。
お母さんの目を見てごらん。お月さまの見えない昼間にはこうして私たち猫の目にお月さまが映っているのよ。」
![](https://assets.st-note.com/img/1718089688660-b20BTsJrax.jpg?width=1200)
女神さまってどんな方なんだろう?
僕のお母さんより綺麗なのかな?
僕のお母さんより優しいのかな?
でも、それからしばらくして、お母さんは僕を残していなくなってしまった。
ねぇ、お母さん、どこへ行ってしまったの?
何故、僕を残していなくなってしまったの?
僕はお母さんがいなくなった訳を聴きたくて、ますます女神さまに会いたくなって、ますます高いところに登りたくなった。
![](https://assets.st-note.com/img/1718089963920-OJloFDZrYv.jpg?width=1200)
高いところに登れば絶対にお月さまに近づけるよね。
僕は絶対にお月さまに近づいて女神さまに会ってみたい。
女神さまに会ってお母さんがどこに行ったか聴いてみたい。
何日か経った夜。
お月さまはまあるくなっていた。お母さんの優しい笑顔の様に。
「まるでお母さんがお月さまと一緒になったみたいだ。」
![](https://assets.st-note.com/img/1718089994920-W7WWr0q8EH.jpg?width=1200)
僕はお母さんに会いたくなって大きな建物に登ろうとした。
そしたらたくさんの人間に追いかけられてとっても怖い思いをした。
道端の木に登ろうとした。
そうしたら、スズメさんやカラスさんに追い払われてしまった。
![](https://assets.st-note.com/img/1718090118938-r3GzAdiYJ9.jpg?width=1200)
「どうしたらお月さまに近づけるんだろう?」
僕は辺りを見回して道の真ん中にそびえ立つ、木よりも高い光る棒を見つけて夢中になって昇って行った。
「お月さまに近づくんだ。女神さまに会うんだ!」
そう思って一心に昇って一番高い場所に着いた。
でも、まだまだお月さまはどこまでも遠くにしか見えなかった。
「お月さま、月の女神さま、僕のお母さんはどこに行ってしまったの?」
お月さまは何も答えずにただ静かに微笑んでいるだけだった。
![](https://assets.st-note.com/img/1718090136976-nA2LBHSJWC.jpg?width=1200)
僕はふと、目を落とした。
すると見下ろした足元には何も見えない!
いつの間にかすっごく高いところに登ってしまっていた事に気が付いて、僕は足がすくんでしまった。
「お母さん、高いよ。怖いよ。助けて。女神さま、助けて!」
そう言って泣き続けていると、どこからともなく人間が乗った箱が近づいてきた。
「なになに?人間が近づいてきたよ。怖いよ。助けて。僕に怖い事しないで!」
そう思って泣いていると、その箱に乗った人間が手を伸ばしてきたんだ。
「猫ちゃん、怖くないよ。こっちにおいで。」
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それはこの前、大きな建物から追い出されたときにいた人間たちとは違ってとっても優しい雰囲気の人だった。だけど、まだ怖かった僕は手をすり抜けてその人が昇ってきた箱の中に飛び込んで隅で震えてしまった。
しばらくすると、僕たちの乗った箱は地面に降りて行き、瞬く間に人間たちに囲まれた。
僕はますます怖くなって箱の中を逃げ回ったけど、箱の中にいた人間に僕はとうとう捕まってしまった。
「この猫、どうしよう?」
「保健所に引き渡すしかないな。」
という話が聴こえた。
僕は嫌な予感がして、ますます身体がすくんでしまった。
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すると、周りを囲んでいた人間の一人が、
「この子、私がもらってもいいですか?」
と言って手を伸ばしてきた。
僕はお母さんや女神さまと同じ雰囲気がするその人間の手に思わずしがみついてしまった。
![](https://assets.st-note.com/img/1718090255961-wtR3i3G9rC.jpg?width=1200)
それが、大好きなお嬢様とこの僕の出逢いだったのさ。
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