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自社CXOポジションを複業人材で受け入れる、ということ

みなさん、こんにちは。
世の中の「優秀な方々」を、スタートアップや新規事業に対し、「副業CXO」としてご紹介・ご活躍いただいている、株式会社ダブルキャリア・プロの中野大亮です。
平たく言えば、複業人材紹介会社ですが、人材のレベルは役員やCクラスの方に限定しているサービスです。

CXO、Cクラス、それに準ずるポジションの採用をしたいけど、なかなか見つからない…見つかってもうまくいかなかった…といった方々に、ご参考になればうれしいです。

ダブルキャリア・プロ 中野大亮

優秀な人材はたくさんいる

スタートアップ経営者のみなさんや大企業の新規事業・投資を担当されている方々が、日々悩んでいらっしゃることのひとつが、いい人が採用できない…ってことですよね。特に重要なポジションにおいて。

いろいろな理由があって、なかなか採用できないものです。
採用はwin-winでなくてはいけませんから、片方でもloseになってしまえば、成立しません。

  1. 能力が見合わない

  2. 自社カルチャーと合わない

  3. いい人材だけど報酬がフィットしない

  4. 一介のスタートアップや新しい事業にフルコミットすることに、不安を感じてしまう

第一の、能力が見合わないという点ですが、そもそもジョブマーケットに有望人材が少ない、という問題があります。しかしもちろん、ジョブマーケットの外側にはたくさんの優秀な方がいます。流動化されてないわけです。
たとえば、CMOと呼ばれるようなマーケティングのエキスパートは、スタートアップや新規事業にとって極めて重要なものですが、なかなか採用できません。しかし、世の中にはマーケッターと呼ばれる方々はたくさんいる。中堅企業以上になると、ブランドやプロダクトごとに存在するし、それぞれごとにアシスタントもいますから、ブランド・プロダクト×複数人いるということになります。しかし、彼らはなかなかジョブマーケットに出てこない。

第二の、自社カルチャーと合わない、という点。ただ、これは実際に働いてみないと判断しづらいことです。組織のカルチャーと合うかということと、自分の好みかということは、必ずしも一致しません。事業を成長させられれば、多少の人間関係のフィットは大目に見てもいいはずなのに、人間はけっこうそこを気にします。

第三の、いい人材だけど報酬がフィットしない。これは無理もないことです。優秀な人材が、できたばかりの会社や事業において、まだ十分に稼げていない中での低い給料を、なかなか許容できません。最近はスタートアップでも、2000万円ぐらいの報酬を出す会社も増えてきましたが、まだほんの一握りですし、優秀な方はそれ以上の報酬を既存企業でもらっている人も少なくありません。SOや生株、ってのいうのはありますが、先行きは誰も保証できない。家族やお子さんがいる場合はなおさら不安でしょう。

第四は、一介のスタートアップや新しい事業にフルコミットすることに、不安を感じてしまう。これは、その人の性格や立場、事情にも大きくかかわるところではありますが、全員にリスクをとれ、ということは不可能です。このリスクは取り除いてあげられるものでしょうか。

というように、様々な理由で採用がむずかしい。
しかし、逆に言えば、これらの理由を取り除いたり、解決できたりすれば、実は人材は豊富に存在するということになります。
とはいえ、人材はたくさん存在していたとしても、時間は有限なのだから、それを分け合うことはゼロサムゲームであり、取り分は少ないと思われるかもしれません。
しかし私は、これはゼロサムゲームではないと思っています。CXOクラスは、全員が全員、タイムコンシューミングな仕事(とにかく時間をかける仕事)をしているわけではないからです。必ずしも、かけた時間とバリューが比例する、という仕事ではないんです。

また、マーケティングを例に出しましょう。
マーケッターに、どうやったら事業に対してバリューが出るか、と聞いたら、何と答えるでしょうか。入念にデータを集め、分析を緻密にやって、そこに時間をかける、と言うでしょうか。違います。仮説をつくれるか、それが思いつくかどうかです。それをデータで検証する。それはほかの誰かがやるでしょうし、あるいは昨今のテクノロジーの進化で、それは一瞬でできるようになるかもしれない。

そう、CXOクラスの仕事は、時間をかけてバリューをつくりあげるものでないとすれば、その能力を流動化でき、社会や経済のために、マルチにその能力を活用できる人たち、ということもできるわけです。もちろんすべてがそうだとは言いませんが、そういう傾向が強いことをわたしは確信しています。

複業での人材活用は不安?

複業人材は、上記の四つを高度に解決できます。

  • 現職の活躍を見れば、能力はある程度確度が高い

  • カルチャーフィットについては、合わないならやめればいい

  • 報酬も期間限定であり、コストも限定的。やめてもらえるし、雇用リスクも抱えない

  • 人生をささげるほどの切迫感はないから、不安もない

いやしかし、それでも経営者の方々は、複業人材の採用に不安を覚えるでしょう。
フルコミットしてくれないということは、イコール、適当に仕事されてしまうかも。
同じ船に乗れるひととじゃないと、一緒に仕事できない。
もうすぐ人材を「採用」できるかもしれないし、いまは複業の選択肢はない。

よくわかります。
もしかすると、オペレーショナルな副業だったら、会社の成功を考えず、惰性で仕事をしてしまうかもしれません。
しかし今回はCXOクラスを想定しています。彼らはプロフェッショナルとしての自負があります。これまでの名声やプライドがある中で、果たして適当な仕事をするでしょうか。
そして、なにより彼らの思いやニーズをくみ取る必要があります。
主に彼らは、大企業・中堅企業・外資企業などで働いています(優秀なスタートアップ、メガベンチャーもありえます)。彼らの思いは、例えばこうです、「今の仕事に不満があるわけでもないし、安定的だ。しかし、新しいことに挑戦せずにこのままでいいのだろうか。そしてもそのことがさらに自分を強くし、現職での貢献をさらに向上できるのではないか」と。
そういう意味では、彼らはフィーなどの報酬を必ずしも気にしていません。その機会の貴重さ、得られるものを見ています。それを提供できるかどうかが、実質的なコミットを引き出すのです。

発想を変えなくてはいけません。有形的な報酬でなく無形的な報酬、そしてその人材が抱える不安をできる限り取り除いてあげる、ことです。

海外でも、そして日本でも、複業CXOは浸透中

海外では、複業CXOはかなり浸透しているようです。
事例は枚挙にいとまがありません(古い例も多く混じっていますが)。

  1. CMO(最高マーケティング責任者):

  • アンドリュー・ヤング(Andrew Young)- Stripeというオンライン決済企業のCMOを務めながら、Astronomerというデータ配信プラットフォームの取締役も務めています。

  • ケリー・ベネット(Kelly Bennett)- NetflixのCMOでありながら、Walmartの取締役も務めています。

  1. CFO(最高財務責任者):

  • ブラッド・ディケンソン(Brad Dickinson)- Zoomというビデオ会議ツール企業のCFOを務めながら、Automation Anywhereというロボットプロセスオートメーション企業の取締役も務めています。

  • ティナ・ブラウン(Tina Brown)- SlackのCFOでありながら、Plentyという持続可能な食料生産企業の取締役も務めています。

  1. CTO(最高技術責任者):

  • ジョン・カーマック(John Carmack)- Oculus VRというバーチャルリアリティ企業のCTOを務めながら、SpaceXという宇宙航空企業のコンサルタントも務めています。

  • ジョナサン・ローゼンバーグ(Jonathan Rosenberg)- Googleの元CTOであり、Cisco Systemsの取締役も務めています。

  1. CSO(最高戦略責任者):

  • リサ・ハムルトン・ジョーンズ(Lisa Hamilton Jones)- IntelのCSOを務めながら、The Aerospace Corporationという宇宙航空企業の取締役も務めています。

  • クリス・マッチェット(Chris Matchett)- Zendeskというカスタマーサポートプラットフォーム企業のCSOを務めながら、Kognitivというテクノロジー企業の取締役も務めています。

日本も徐々に増えてきています。大企業が複業を奨励する傾向が、少しずつですが浸透しつつあります。
結果、複業をしてもらうことで、彼が得た知見が社内に還元された事例があります。とある広告会社などは、複業を奨励した結果、そこから新しい事業が生まれ、それと広告会社自身とのシナジーをつくり、大きな事業に成長していった事例は数多くあります。

「三方よし」のエコシステムが、この市場を加速する

ここでの登場人物は、主に三つです。

  • 複業人材

  • 複業人材を受け入れる会社

  • 複業人材を擁する会社(人材を雇用している企業)

このみっつが前向きにうまくリンクすれば、すばらしいエコシステムになるわけです。複数の仕事をやって成長したい人材がいて、それを雇用している企業が認める。それを受け入れる会社がいる。新しいミッションに対して、複業人材は熱心に取り組める。そこが価値を生み出し、ひいては雇用している企業にその価値が還元されていく。
これは、ゼロサムではない、掛け算の価値創出ではないでしょうか。

人材の絶対数自体がこれから減っていく日本において、こういった人材の流動化やマルチ化、そして掛け算による価値の増大は、経済発展において非常に重要なものだと思います。創業の増加にも寄与することでしょう。ゆえに、このエコシステムをつくることは重要であり、この市場は確実に伸長するものと思うのです。

あらためて、それぞれこの三つの主体が、このエコシステムをつくっていくべき、ないしこの複業を推進すべき理由を述べましょう。

複業人材にとって

  • プラスの収入はもちろん魅力。ただ、それはほんの一部のメリットに過ぎない

  • 複業を通じて、新しい能力と運がつかめる。あなたのさらなる新しい人生を切り開ける

  • 運とは、「打席数」「多様性」「察知力」「回復力」によって獲得できるのだそう。複業はまさにこれ(次回以降述べます)

  • 「仕事はフルコミットであるべき」はよく言われることだが、正しくて正しくないと思う。成功者の言うことを必ずしも盲信せず、複数の打席に立つことが大事、ともいえる

  • やりたいがやれない障害、は取り除ける。企業は複業を奨励しつつある

複業人材を受け入れる会社にとって

  • CXOなんて簡単に採用できない。複業人材活用は、比較的容易

  • 採用できたとしても、失敗するケースも多く、時間を無駄にしてしまう

  • 普段はアクセスできない人の経験や能力を、効率的に活用できる

  • 海外ではすでに複業CXOは当たり前

  • 副業人材との交流を通じて、自社の社員たちも刺激を受け、新たな成長機会を手に入れることができる

複業人材を擁する会社(雇用している企業)にとって

  • 彼が得た知見と経験を社内にて還流できる

  • その結果、イノベーションが生まれたり、新しい前向きな文化をつくることができる

  • 企業にとって、ある意味、好き勝手やるミニ出島(この場合、複業をやる人材や組織)をつくることは重要。対極が革新を生む

  • いろんなことをやりたいのにやらせてくれなかったら、どうせ結局やめてしまう

けっこう、新しいことも書いてしまいましたが、また別の記事などで触れたいと思います。

三つがwin-win-winになることによって、大きな掛け算となる

最後に

あえて、副業ではなく「複業」と書いてきました。
副業だとどうしても、本業に対して劣後した概念になってしまいそうだからです。
もちろん主軸はあっていいとは思います。ただ、副業は小遣い稼ぎ、といった観念を払拭したいのです。「複業」は、足し算ではなく、掛け算になりえます。新しい経験と能力を、既存の経験と能力と掛け算する。現職と複業を掛け算する。これで新しい価値が生まれえます。

少々コンセプトよりの話が多くなってしまいました。
今後は、実際の複業CXOの具体例や、複業の大きなメリットについてなど、いろんなトピックで記事を書いていきたいと思っています。
これまで手掛けてきた複業CXO紹介の例を、人材の観点、および受け入れた会社の観点、雇用企業の観点で、お話していきます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

弊社ダブルキャリア・プロのご紹介は、こちらです。
複業人材と企業のお引き合わせ、そしてエコシステム創生に、より一層貢献していくつもりです。
よろしくお願いします。


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