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最近のあの子の可愛かったとこ

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最近のあの子の可愛かったとこ 18こめ

あの子と回転寿司を食べに行った。 

土曜の夜ということで多くのお客さんが順番を待っていた。
それも想定していたことなので店を変えるという選択肢はなく、あの子は迷わず名前を記入しに行った。

記入を終えたあの子が戻ってきた。

「うんとさ、偽名使って”長澤まさみ”って書いてきた」

「え」

「みんなびっくりするかな」

「そりゃするでしょ」

「だよね。あー楽しみ」

絶対にみんな長澤まさみじゃ

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最近のあの子の可愛かったとこ 17こめ

あの子と動物園に行くことになった。

嘘みたいな快晴。

大人になってから動物園なんてめっきり行かなくなったので久しぶりのことで気分が高揚していた。

でも向かってる途中、些細なことで喧嘩とまではいかないけど言い合いになり険悪なムードになってしまった。

会話が減りどこかギクシャクしたまま動物園に到着した。

入り口には動物たちの顔はめパネルがあった。

真ん中にどーんとでっかくライオン。右隣がゾ

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最近のあの子の可愛かったとこ 16こめ

「”憂鬱”の”鬱”って漢字、いつまで経っても覚えられないんだよね」

あの子が言った。サービスエリアでソフトクリームを食べながら。
僕は恐らく歴史上初めてソフトクリームを食べながら憂鬱の鬱のことを考えた人を見ている。
もしかしたら僕と一緒に居るこの時間が憂鬱だったもんだからそんなこと思ったんじゃないかと不安になった。

「本とかで出てくる度に空書きしちゃうんだよね」

空書きしてるあの子を想像して

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最近のあの子の可愛かったとこ 15こめ

「やっと調子出てきたかも」

今頃調子が出たのか。

あの子とカラオケに来てはや1時間。
そのうち僕が歌ったのはたったの一曲。
56分23秒はあの子が歌っている。
あの子が歌ってるときにこっそりその曲の時間を調べて3分37秒だと知ったのではっきりとそう言い切れる。

僕は最初はタンバリンで盛り上げていたが次第に虚しくなりタンバリンを置いた。

「使わないなら私が使うねー」

と、あの子は右手にマイ

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最近のあの子の可愛かったとこ 14こめ

あの子と大阪にある”なんばグランド花月”へお笑いを観に行った。

あの子はそこまでお笑いが好きというわけではないが、”一度生でお笑いを観てみたい”と前々から言っていた。

あの子のお目当ては新喜劇。
特に島田一の介さん。
あの子は島田一の介さんが舞台に出てきたときにする「おじゃまします〜」というギャグが特別好きだ。

いよいよ開演。
テレビで観たことある芸人さんが次から次へと出てきて、会場を笑いで

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最近のあの子の可愛かったとこ 13こめ

”なんか無性にやりたくなった”
という涼宮ハルヒを彷彿とさせる理由であの子がジェンガを持って家にやってきたのが22時を少し回った頃。

そして現在時刻は23:03

予想だにしない大接戦。

最初は面倒臭かったが、最早勝ちたい気持ちが芽生えていた。

お互い考える時間が次第に増えていき、ワンターンに5分以上かかることも当たり前になってきた。

これはまだまだ続くと高を括った。

がしかし、その瞬間

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最近のあの子の可愛かったとこ 12こめ

シンガーソンングライターのあの子は家でよくアコギを弾きながら曲を作っている。

その夜僕はいつもより疲れが溜まっていたのか、お風呂から出たあと缶ビールを1本飲み切らないくらいのとこでウトウトしてしまった。

微かに聴こえるギターの音で目が覚め、いつの間にかベッドで寝ていたことに気づく。

寝ぼけ眼で音のする方を見ると、あの子がソファーの上で胡座をかきアコギを弾いていた。
歌詞のないメロディを口ずさ

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最近のあの子の可愛かったとこ 11こめ

売れない役者である僕はその日、税理士事務所にいた。

確定申告

擬人化したら間違いなく全ての個人事業主から2、3発ぶん殴られる行事である。

莫大な体力と時間を必要とする。
終わる頃には脳みそが灰へと化している。

そんな確定申告を白色申告から青色申告に変えることにした僕は税理士さんに帳簿の仕方を教えていただくことになった。

あの子はそこの税理士さんだった。

何も分からない僕は矢継ぎ早に質問

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最近のあの子の可愛かったとこ 10こめ

あの子と映画館に行ったあとカフェで一服することに。

日曜の昼下がりということもあって店内は賑わっていた。

「席空いてるか見てくるからレジ並んどいて」

そう言うとあの子は店内の奥へと消えていった。

僕は席が空いてなかったらまぁテイクアウトしたらいいやと呑気なことを考えながら列の最後尾へと並んだ。

するとあの子が小走りでやってきて、

「空いてたよ!」

と満面の笑みで教えてくれた。

2人

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最近のあの子の可愛かったとこ 9こめ

"まだ1回も行ったことがないから行ってみたい"
とあの子が言うので一緒にバッティングセンターに行った。

「ホームラン打ったらでっかいピザ奢ってね」

なんてあの子は言ってたけど結果は散々。

全部で3ゲームやったけどまともにバットに当たったのは10球ほど。

そのうち前に飛んだのはその半分ほど。

機嫌が悪くなったあの子は

「なんで30キロがないのっ」

と拗ねる始末。

そして打席から出てき

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最近のあの子の可愛かったとこ 8こめ

あの子と一緒に高速バスに乗って日帰り旅行をすることになった。

あの子曰く、電車よりゆっくりできるし景色を眺めながらお菓子を食べる時間がなにより好きらしい。

出発時間になり、あの子がシートベルトを締める。

「ちゃんとシートベルト締めるんだね」

「だって回らないお寿司食べれなくなるかもしんないじゃん」

”死にたくないから” って言わないんだ。

最近のあの子の可愛かったとこ

最近のあの子の可愛かったとこ 7こめ

時刻は2:37

物音がして目が覚めてしまった。

なんだ?

物音の正体はあの子の寝言だった。

「んんラー…メン」

ラーメン。
ラーメン食べてる夢でも見てるのか。

僕が再び眠りにつこうとしたらまたあの子の寝言が聞こえてきた。

「は、半チャーも…」

セットだったんだ。

最近のあの子の可愛かったとこ

最近のあの子の可愛かったとこ 6こめ

あの子は家に着くなりコンビニで買ってきたアイスの『パピコ』を手に取り、

「今日は一気に2個食べずに残りの1個はお風呂上がりに食べることを誓います!」

と宣言した。

あの子はいつもパピコを一気に2個食べる。

でもどうやら今回は違うらしい。

そしてパピコを1個ずつに分けると宣言通りお風呂上がりに食べるため片方は冷凍庫に閉まった。

その時友達から僕に電話がかかってきた。

どんな用件か分から

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最近のあの子の可愛かったとこ 5こめ

ある日の昼下がり。

「しりとりしよ」

とあの子は言った。

「どうしたの急に」

「いやなんかしりとりしたいなぁって思って」

よほど退屈だったからではなく、本当にしりとりがしたくなったのだろう。

「先いいよ」

普通言い出しっぺが先なのに。

「じゃあ、りんご」

「ごぉ…五目並べ」

「べぇ…べ…ベルト」

「とぉ……豆腐ハンバーグ」

「グミ」

「み、み、み…みかん!あいや、みかん農

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