最近のあの子の可愛かったとこ 19こめ

晩御飯を一緒に食べようと駅で仕事終わりのあの子を待っていた。
改札の向こうにあの子が見えた。
なにやらニコニコしながら歩いてくる。
明らかに嬉しそう。

「お待たせ」
「お疲れ様。なんか嬉しそうだけど」
「じゃん!」

差し出されたあの子の両手には北里柴三郎が描かれた千円札、いわゆる新札が持たれていた。

「やっと巡ってきた!」

なるほどそれで嬉しそうだったのか。

「え、凄いじゃん。俺も初めて見た」
「あとは一万円札と五千円札か」
「どっちが先に集めるか勝負しようか」
「あ、いいねやりたい!うわぁ勝ちたいな」
「これは負けられないな。じゃあ行こっか」

目的の店に向かって歩き出す。

あの子の足が止まる。自動販売機の前。

「ちょっとちっちゃいお茶買っていい?どうしても喉渇いて」
「うんいいよ……え?」

久しぶりに二度見した。

あれだけ舞い上がって見せてきたさっきの新札をあの子は躊躇なく使っていた。

そりゃいずれ使うだろうけどそういうのって最低3日ぐらいはシガんで持っとくんじゃないの。

「ごめん行こ」

で使ったことについて一切触れないんだ。


最近のあの子の可愛かったとこ

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