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10人に1人の"必要な"中間管理職とは -週刊カツオ #14

こんにちは。
情報システム部門の中間管理職として勤務しているカツオです。

上司と部下の「中間」で仕事をする管理職に求められるものは多岐にわたりますが、人間関係や成果の出し方など、悩みも多い仕事です。
私も例にもれず、上司や部下との人間関係に悩むことや、日常業務をこなしながらマネジメント業務もしなければならず、プレイングマネジャーとしての忙しさに閉口する日々が続き、休んでも疲れが取れない時期もありました。

このままではよくない、でもどうすれば良いのか?
という悩みにぶつかると、私は様々な書籍を読んでヒントを得ることにしています。

今回は、佐々木常夫さんの「9割の中間管理職はもういらない」(宝島社新書)から得られたヒントをまとめてみたいと思います。

読みやすい新書「9割の中間管理職はもういらない」

昨年からのコロナ禍で、ビジネスの現場ではとてつもない変化を迎え、情報システム部門としては、テレワーク、リモート会議など、様々な対応が求められました。全国の中間管理職の方の仕事もずいぶんと変化があったのではないかと思います。特に、対面の会議がなくなり、リモート会議中心になったことで、これまでの「直接会わなければ仕事は進まない」という固定観念が崩れました。

このような仕事を「ブルシット・ジョブ」と呼ぶという話を耳にした矢先、1冊の新書と出会いました。その本が「9割の中間管理職はもういらない」でした。

190ページに及ぶ新書で、序論から始まり、本論は全体で5章構成となっています。

序論-管理職は「ブルシット・ジョブ」か?
第1章 使えない中間管理職と使える中間管理職
第2章 アフターコロナ時代の働き方
第3章 デジタルトランスフォーメーションが働き方を大きく変える
第4章 働き方改革
第5章 来るべき中間管理職の条件-必要な1割になるために-

決して読むのが早い方ではない私が、通勤電車の約1時間半で読めました。下記のツイートでもつぶやいたように、サクッと読めるにもかかわらず、中身の濃い1冊です。

この本の優れたところは3点あります。

1.ブルシット・ジョブの概要が把握できる

まず、「ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論」で有名なデヴィッド・グレーバーの複数の著書を佐々木さんが読み込み、多面的にわかりやすく解説してくださっている点です。言葉だけは聞いたことがありましたが、原著に当たらずとも、「この仕事は『ブルシット・ジョブ』だな」と日常で使えるようになるレベルまでの理解ができるようになります。ブルシット・ジョブについて詳しく学びたい方は、原著を読むことで深堀りができると思います。

2.2020年以降の働き方の全体像が見える

次に、コロナ禍と働き方改革の波の中で、中間管理職のふるまいについて解説がなされている点です。アフターコロナ、デジタルトランスフォーメーション(DX)、働き方改革というキーワードから、新しい働き方について、佐々木さんがご自身のこれまでの経験を交えて解説されています。

3.中間管理職の行動規範が書かれている

最後に、時代が変わっても普遍性のある中間管理職の行動規範が示されており、これまでの佐々木さんの著書のエッセンスが詰まっていることです。
「そうか、君は課長になったのか。」など、佐々木さんの著書は数多くありますが、まずこの本から読んでいき、さらに深堀りしたい内容について、他の著書を読み始めても遅くはないと思います。

10人に1人の"必要な"中間管理職とは

いよいよ、この本の本題である「9割の中間管理職はいらない」について考えてみたいと思います。9割の中間管理職がいらないということは、言いかえると10人に1人、全体の1割の中間管理職は”必要”だと、佐々木さんは言います。
この本を手に取ったときに直感的に浮かんだ問いである「必要な中間管理職になるにはどうしたら良いのか?」について、第1章と第5章から、佐々木さんの考えを読み取っていきたいと思います。

使えない中間管理職と使える中間管理職

この章で言われる「使えない中間管理職」とは、次のような人です。
・ブルシット・ジョブを増やす中間管理職
・承認するだけ、挨拶するだけ、チェックするだけの中間管理職
・なにも生み出さない、連絡・報告を主な仕事とする中間管理職
・部下に任せず、自分の実績にしたい中間管理職

一方、10人に1人の「使える中間管理職」としては、次のように述べられています。
・エンゲージメント(※)を高める中間管理職
 ※エンゲージメントとは
  個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献し合えるような関係
・組織の目標に向かって人々を導けるリーダーシップのある中間管理職
 リーダーシップのある人とは、主に次の2つのスキルを持つ人。
 クリティカル・シンキング:問題の本質を正しく把握できる考え方
 クリエイティブ・シンキング:本質を見極め、問題解決ができる考え方
・部下の時間を邪魔せず、部下の考えを聴き、力を引き出せる中間管理職
 1on1を週1で行うなど、人の力を掛け合わせて組織の力を高められる人。
・部下のパフォーマンスを最大化させ、組織として成果を出す基盤を作り出せる中間管理職
・質の高い雑談ができる信頼関係を部下と築ける中間管理職
 目標と目標達成のための具体的指標を設定して、仕事の意味やプロセスを明確にしていく過程で、個人の信念、価値観をきちんと把握するために行う、「質の高い」雑談ができる人(テレワークにこそ、雑談が必要)。
・適時的確に判断し、決断できる「中間経営職」としての中間管理職
・部下と人間的に向き合い、全人格をかけてやり取りできる中間管理職

「使えない」方の観点は、既成概念にとらわれた中間管理職、という人物像が浮かんできます。これまでの自分の仕事を振り返ると、従来の慣例に沿って、「なぜこの仕事が必要なのか」をそこまで考えずに、生産性の低い仕事を続けている部分もあると反省しています。

一方、「使える」方の観点では、一言で言えば「質の高いコミュニケーションができるかどうか」ということだと思います。
私自身は、職場での雑談を大切にし、部下の時間を邪魔しないことを心がけていますが、クリティカル・シンキングなどのリーダーシップについての考え方について、自分にはまだまだ弱い部分があると感じています。

最後に、第5章に書かれている中間管理職の条件のうち、第1章で述べられている部分以外の点をまとめていきたいと思います。

来るべき中間管理職の条件

この章で説かれている中間管理職の条件の中で、第1章で述べられている「質の高いコミュニケーション」以外の内容をまとめてみました。

・自分の考え方というものをきちんと持つ
 必要とされる中間管理職は、組織の力を最大化することに貢献できる人。  
 働き方は生き方である。
 自分がどう生きるのかということは、どう働くかということでもある。
 会社や周りに振り回されない「自分の考え」を持つことが大切。
 自分の考え方・目的を明確にして人に伝え、責任をもって実行すること。

・自分のミッションは何かを意識する
 部下のやる気を引き出し、仕事の喜びを見出せるように導く。
 多くを語らず、多くを聞き、部下との信頼関係を築く。
 組織のエンゲージメント力を高め、イノベーションを生み出す。
 上記のような「中間管理職のミッション」を意識すること。

ここまでこの本を読み取って感じたことは、管理職像としての目新しいものはないということです。
つまり、従来から「中間管理職とは」「リーダーとは」と論じられていることの本質は時代が変わっても大きく変化する事はないということです。
それでも、多くの書籍で繰り返し説かれているのはなぜか。
それは、「現実には実践が難しいから」だと思います。
様々な性格の人が集まるビジネスの現場で、これらの管理職像に向けて、人材育成を行うための様々なアプローチが今も生み出され続け、論文や書籍が発行され続けているのではないかと推測しています。

その前提で、昨年からのコロナ禍によって、「ブルシット・ジョブ」と呼ばれる仕事が明らかになったという社会の大きな動きがあります。負の部分が大きいコロナ禍は、人類にとってはピンチの側面が大きいです。
しかし、ビジネスの現場に限定していえば、この社会の変動を、自分の組織の変革への足掛かりを見出すことができるという、前向きに捉えられる部分もあると感じています。

いかに生産性を高めていくか、ということは長年、わが国に言われている大きなテーマですが、今後、「ブルシット・ジョブ」を減らし、自分の組織の成果を最大限にするために、中間管理職としての在り方を改めて考える機会となりました。

本を読んで学んだら、次は現場での実践です。
次に出勤したら、多くを語らずに多くを訊ね、よりよいアイデアを実現するために、面倒な調整などに勇気をもって取り組んでいこうと思います。

今回もお読みいただき、ありがとうございました。



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