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民主主義はめんどくさい~カギは『教育』~

 毎年12月になると、「今年一年、実はそんなに学んでないのでは?」「少しも成長してないのでは?」との思いに肩を落とし、暗澹とする。アメリカに留学していた2019年の12月は、そんな気持ちがスカッと晴れ、光明が差す思いをした。「アメリカの外交政策」という授業で、Walter Russel Mead著の “The Paradox of American Democracy Promotion (アメリカの民主化支援というパラドックス)”という記事を読んだ時のことである。

一朝一夕にはいかない民主化

 アメリカ合衆国の外交政策は、ブッシュ政権以降「民主化支援」を重視している。イラク、アフガニスタン、アラブ世界の幾つかの国で民主化の支援が行われてきた。しかし、ほとんどがうまく行っていない。Walterによれば、民主主義の確立は時間が掛かるめんどくさいプロセスだから、である。

 日本の歴史を振り返っても、1890年に明治憲法が施行、帝国議会が開設。政府と議会や政党の間の抗争があり、学者や一般市民レベルによる政治参加拡大の試みはその後数十年続く。実際に血が流れることもあり、戦時中は民主主義が後退したりし、戦後ようやく現在の憲法・国会が整うのである。当事国の国民で何十年もかかって作り上げる民主主義体制を、外国の介入による政治体制の転換や民主化支援があったからと言って、一朝一夕に成し遂げるのは難しいのである。

民主主義に不可欠な教育

 民主主義が民主主義であるためには、単に議会や行政府といった形だけを作るだけでは不十分だ。形が整っても、その使い方、あるいは使い方を改善するための方法を人々が知らなければ意味がない。

 Walterは、当事国において民主主義に基づいた教育を促進する、あるいは若者の海外留学を支援し、民主主義的価値観の拡散を促進することが大事である、という。そこに住む人々が、暴力的手段や、金権、汚職などに拠ることなく、自らの言論と行動により政治に参加しようとする。そのような態度や能力を持つことが民主主義の成立に必要、ということだ。

 知識を増やすこと以上に、情報を収集し、分析し、理解する。何が分かって、何が分からないのかを自分の言葉で言語化することを重視するアメリカの大学。確かに、お金、時間、労力はかかっているが、そのような環境で育まれる態度こそが、人々を民主主義の大事な構成員に育てるのだと思う。

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