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茶道で本物のイマーシブを体験できる理由


みなさんこんにちは!
現在イワケンラボという技術好きの学生を応援するコミュニティに所属しやTNXRという森ビルさんが主催している都市の新しい体験を形作る都市XR実装コミュニティのリーダーとして運営をしたりしています。
また、社会的な分断を解消し異なる世界を繋ぐことを目指したなめらかな社会を実現するためにデジタルツインSNSのサービスを作っていたり、XRセンサリーマップという感覚過敏の方々が安心して外出できる社会を目指して事業化およびプロダクト開発をしています。

背景

今回はその森ビルさんが主催しているTNXRコミュニティであるイベントが発生しました!

それは「お茶会」です。

茶道を趣味でやっている方がXR体験と茶道には共通点があり非常に面白いからぜひ興味のある方は来てくださいというきっかけがあり、茶室にご招待いただきました。

茶室体験に行った目的

僕の目的は非常に単純でただの好奇心と同時に、ある噂を聞いていたからです。それは、茶室に居る間はHMDを被っている体験と同じ体験が得られるというものです。
これはあくまで噂だったので、それが本当なのかどうかを確認したくて参加しました。

どんな茶室体験をしたのか?

全く何も知らない状態から待合室に案内されました。するとOculus Questのコントローラーがおいてあったり、掛け軸には生成AIの画像が描かれていたりと、独特の世界がすでに広がっていました。

そして、後にこれらがなぜ置かれているのか?その真意を聞かされることになります。参加するメンバーと少しの時間話していると、今回快く募集してくださった亭主の方に茶室に案内されました。(これにも理由があることも知らずに。。。)


意味深な掛け軸とコントローラー
ヘッドはあなただ。


縁起と行列。そしてバタフライエフェクト

その方は普段はゲームエンジニアをしている方で、TNXRでも作品を出されており、趣味で茶道を習われています。その方が茶道の場はエンジニアを育成するための最高の環境だと大絶賛しておりますので、ぜひ一読してみると非常に学びがあります。

茶道の場は、絶好のエンジニア育成環境である|野中健吾

亭主の野中さんに茶室に招待されてから、少し隙間の開いた障子を開け茶室に入ると日常とは全く別の世界に入り込んでしまいました。それでいて日常以上に没入したような感覚に襲われました。

その後座る場所を案内され畳に座り、野中さんとメンバーの間で自己紹介を行ったり、茶道に関する簡単な知識をご共有してもらったりしました。
その茶室の中にも様々なものが配置されていました。

まず最初に目についたのは、床の間にある掛け軸と生け花です。その後、その横にあるものをおける棚の上には、縄文時代の土器がありました。さらにその横には現代風の生成AIの絵が飾られていました。


人類の想像と創造は縄文から変わらない。

メンバーと野中さんや野中さんの師匠の方との会話が非常に弾みました。茶室に置かれている様々なものや、茶室に入る前のお部屋に置かれていたQuestのコントローラーや掛け軸の絵、少し時間をおいて茶室に招待した意図など野中さんが我々のために本当に多くのことを考えて、お茶体験を設計していることがわかりました。

僕は、野中さんのすべての意図を汲み取れたわけでは正直に言うとありませんでした。しかし、それでも野中さんと僕らの間で心の距離があの短い時間で縮まったのがわかりました。

お茶体験は基本的には亭主が招待する客人や季節などに合わせて、茶の間に配置する物や掛け軸の内容、お茶の種類、出すお菓子やその形、器などを変えるそうです。そして会話する内容も客人のメンバーによっても変わりますし、同じメンバーで一人欠けているだけでも全く別の会話が繰り広がれられることになります。

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瞬時の生成もいいけど、過程も尊い


30分まえに心こめて作って頂いた舌で優しく溶ける和菓子

おそらく野中さんはこれ以上に多くのことを想像して、客人である我々のこと思ってお茶体験を設計したのだと思います。

つまり、お茶体験は

  • 決して再現性のなく今しか体験できない

  • 客人を想定して作られたその特定の茶室で

  • その時集まった特別なゲストのために

作られた体験であることがわかりました。

これは、お茶会で現場でも野中さんから切り出された話でした。かいつまんで話すと、今のインターネットは「いつでも、どこでも、だれとでも」ということを重要視しているという話です。

確かに、常時接続していつでもバーチャル上で会えたり、話せたり、人種や性別、宗教や地理的立地に限らずどこでででもコミュニケーションが取れることが重要視されています。

しかし、茶室では「いつでも、どこでも、だれとでも」の真反対のことが行われていたのです。

そんなインターネットやテクノロジー、XRと茶室との関係性やお茶体験の意図など、様々な会話に花を咲かせながら濃茶や高級和菓子を振る舞っていただきました。

彼の作ってくださったお茶を喉に通すと、僕の中で体験したことのない濃くて舌の奥に違和感が残るような苦い味がしました。
しかし、その濃いめのお茶の味と同時にこれは人思いの味なのだと気づきます。

お茶体験は予定では1時間半を想定したのですが、いつの間にか会話が盛り上がり、想定の倍の3時間ほど時間が一瞬で経ってしまいました。
もっと多くの事を話したいのですが、言葉では説明しきれない身体性を拡張する体験がそこにあるので、ぜひ一度読者の方には体験していただきたいと思います。

下記に僕の体験の感想を書きたいと思います。

茶室での体験についての感想

僕が感じたお茶体験の感想は3つあります。

  1. 茶の間は意図の宇宙である

  2. お茶体験はメディアである

  3. お茶体験は瞑想である

茶の間は意図の宇宙である

これは、どのような意味なのかというと一見すると茶室はただの畳の部屋です。しかし茶室を設計した本人と会話をし、各オブジェクトの配置意図を聞いていくと、これは小さな畳の部屋ではないぞと気づきます。自分たちが想定している以上の意図が小さな茶室の中に組み込まれていて、会話をすればするほど空間が実際以上の広がりを見せてくるのです。

これは例えるなら想像しきれない広さを持つ宇宙しか無いと思いました。
東京大学の稲見先生は知識って身に付けると世界の感動が増強される究極のARだと表現しましたが、まさに茶室に入出するのはもはや究極のメタバース空間にログインするようなものです。

お茶体験はメディアである

ここでいう、メディアとはただのニュースや新聞メディア、テレビのことを指しているわけではありません。

メディアという言葉を聞いて想像するのは、大抵の場合においてテレビで天気予報やニュースを放送しているマスメディアだと思います。そのメディアという言葉をより広く捉えその本質を的確に表した人物がいます。それがマーシャル・マクルーハンです。

マクルーハンは、メディアとメッセージの関係を分析し、メディアを単体ではなくメディアと人間との関係を含むものとして広く定義しました。彼のいうメディアとは「人間の身体および神経の組織を拡張したもの」と捉えました。

非常に省略すると身体性を拡張するものをメディアと表現したんですね。
茶室とどう関係があるのかというと、茶室は身体を拡張する空間メディアだということです。

具体的には、瞬間にちょうど目を凝らすとよく見えるくらいの薄暗い空間に茶室が設計されていてお茶の湯気をじっくりみれたり、お茶を作っている途中はいつも以上に耳を澄ましてお茶をかき混ぜる音に耳を傾けられます。日常生活以上に自分の普段使っていない神経や身体を使ってお茶体験を楽しむことができたんですね。

茶室からでて帰宅するときにはいつの間にか、普段以上に諸感覚が研ぎ澄まされたような感覚になりました。

これはまさにメディアであると思ったわけです。

茶室という空間メディアにログインしたことで、自分の身体性が拡張されました。そのため、お茶体験はメディアであると表現してみました。

お茶体験は瞑想である

僕は普段から瞑想を家で10分~20分ほど行っています。自分の呼吸に全神経を集中して、今この瞬間に集中しながら浮かび上がってくる思考に気づいては、雲が流れていくように受け入れて流していきます。

家で行う瞑想は10分~20分程度で途切れてしまうのですが、茶室での体験はすべてに集中できて、スポーツで言うゾーン状態になった没入体験でした。

ここで、最初に話していたお茶会に行った目的である茶室はHMDを被ったような没入感があるという噂の真意に気づくことができました。

そうか、茶室では日常以上に没入できるということか。

茶室には時計が設置されていないのですが、その時間をすべて忘れていつの間にか3時間ほどが経っていたほどお茶体験に没入していました。
僕の感覚ではお茶体験は瞑想していたような没入体験をしていました。そのため、お茶体験は瞑想であると表現してみました。

さいごに

このように、お茶体験を通じて野中さんの意図の宇宙のなかにログインし、自分の身体性を拡張され瞑想・没入状態を体験することができました。
今回野中さんの募集に参加しなければ、もしかすると一生お茶とは無縁の人生を送っていたかもしれません。そう思うと本当にゾッとします。本当に野中さんと師匠の岡田さんには感謝しかありません。

10万円払ってでも体験したいほどの3時間を経験することができました。(ないですけど、、)

千利休が戦国や安土桃山時代で活躍する理由も体で理解できますし、スティーブ・ジョブスが禅を学んだのも体感できます。
今回のお茶体験を通して身体が拡張されたので、次は日常をよりお茶体験にするようなXRコンテンツを作ってみたいと思うようになりました。

最後までお読みいただきありがとうございました~

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