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UFO

朝、今は朝で、

駅までのいつも通りの道のりをいつも通りに歩いていると、

空からすごい速さでUFOが現れて、

目の前を歩いている人をさらって、

またすごい速さで飛んで行った。

私はびっくりして、

腰をぬかして、

これまで経けど験したことのない程に、

例えば叫ぶとか、

そういう風に、

慌てふためくべきだったのに、

たまたま、

というかちょうど、

学校火事で全焼とかで無くなってないかなーとか、

何かの犯人的な人が立てこもってたりとかで学校封鎖されてないかなーとか、

そんなような、

主に学校に行かなくてもいいことにならないかというようなことを、

朝に、今の朝に似合う程に、

食パンの、朝食の、

奥歯の凹みにはまり込んでいる塊を、

舌で溶かそうと弄りながら歩くのと同じくらいに、

適度にチンケに、

あらゆるパターンで、

考えながら、ぼーっと、

私はぼーっとしている最中で、

目の焦点と、視覚の、認知の焦点が、

視界の、縦というか、奥行き方向にたぶん、

二十センチくらい離れていて、

その二点の、

二十センチくらいの間の、

ぼんやりとした風景を眺めたりしているところだったので、

たまたま、その時。

UFO、と今とりあえず言ってみたそれは、

結局のところ、

色も形も、見えてなんていなくて、

何かものが、

もののようなむにゃむにゃが、

空というか、ぼんやりとした、

でもカラフルな、

視界の上の方から降ってきて、

下の方で何やら揺れ動いて、

また上の方に流れて飛んで行ったような、

大きくUの字を描くように、

漂って、消えて行ったというような、

そんなことだった。

頭の回転も2周くらい、

しっかりと遅れていたので、

そのUFO、みたいなものが、

Uの字を描いて消えて、

次にミドリムシみたいなものが、

ミドリムシかもしれない、ものが、

視界の左の方に見え始めた頃になって、

Uの字に何かが流れたなとか、

それにやっと、気がついたほどだった。

私の耳は、叫び声を、

前を歩いていた、男の叫び声を、聞いた。

iPhoneがシャッフルで演奏していたビーチボーイズの、

メロディーの、お気楽な、

純正イヤホン越しに、

男の叫び声を、

それはリアルタイムに、

音の早さで、

うっすらと聞いた。

だから私は、

今大変なことが起こったということは、

ぼーっとしてはいたけれど、

耳の情報から、

瞬時に感じ取ったはずだったのに、

何かが起こったことを知っただけであって、

ビーチボーイズの、

私にはさっぱりわからない英語の、

でも雰囲気として、

あんま考えちゃダメだよ。

楽しけりゃいいじゃん。

楽しいことだけしていこうよという、

私の、勝手なイメージは、

この場の、

状況を把握する必要性を、

波乗りのように軽々と乗り越え、

イヤホンを外すことさえせずに、

つまりは何も起きなかったのと何ら変わりなく、

そのままの足取りで、

いつも通りの道のりをいつも通りに歩いている。

学校自己破産とかしてないかなーというような。


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