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人事のお仕事③ 採用担当の腕の見せ所

リモートワークが当たり前になって、外出することが減って、
緊急事態宣言が発令されて、飲食店が酒類の提供をしなくなって、
お酒との付き合い方が変わった人もいるでしょう。

ふと前職にいたお酒が好きな方の言葉を思い出しました。

月曜日は1週間で最も体力があるから飲むんだよ。
火曜日は残りの週を頑張るために飲むんだよ。
水曜日は真ん中まで頑張ったご褒美に飲むんだよ。
木曜日はスタミナ回復のために飲むんだよ。
金曜日は週末のお祝いで飲むんだよ。

こんなことを言いながら、毎晩深夜2時くらいまで飲み、
翌朝9時にはシャキっとした顔でバリバリ仕事をされる方でした。

お酒をたくさん飲むことが偉いとは思わないけれど、
"バブル"を経験した方の遊び方の豪快さと、タフさ、
そしてバイタリティには脱帽でした。


さて、そんなことを思い出した今日のテーマは、
私が採用担当だった頃に、
一番楽しくて、ドキドキしていた仕事について。


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昔、採用担当になりたての頃に、ある先輩に言われたことがある。

「オファーは採用担当の腕の見せ所だからね」

本当にその通りだと思う。
採用計画の立案から始まって、母集団形成、選考、合否判定など、
いくつものプロセスを経て、
数か月がかりのプロジェクトの最後を締めくくるのが、
このオファー(内定通知)というプロセスである。

このオファーが上手くいかず、辞退されようものならば、
また最初からやり直しになってしまう。
#もちろん複数の候補者を同時に進めていても 、それでも大変。

さらに、オファーの際に、
候補者のモチベーションを高めておくことで、
入社日直前の辞退を防ぎ、
高い意欲をもって入社してもらうことが出来る。

要するに、採用活動においても、
入社後の就業という観点で見ても、
とにかくオファーは大事なプロセスというわけだ。


*******
しかし、オファーが大事だからといって、
オファーの時だけ、頑張ったところで、上手くはいかない。

候補者は選考の全てのプロセスの中で、
その企業が自分が働くにふさわしい場所かどうかを見極めている。

説明会の受付の社員の様子、
選考案内のメール連絡のスピード、
面接官の言葉遣いやマナー、
インターネットでの口コミや企業の評判、
そして、オファー(内容)だ。


仮に内定まで候補者が至ったとしても、
そこまでのプロセスで候補者の気持ちを掴めていなければ、
「今さらスキとか言われても・・・だったら何であのとき優しくしてくれなかったのよぉ」となってしまう。
#昭和の月9かな?


内定までいい感じで進んでも、
ある企業が魅力的と感じる候補者に対しては、
他の企業にとっても魅力的であることが多い。
従って、最後のオファー(口説き方)で勝負が決まることもある。


よって「オファーは採用担当の腕の見せ所」というわけだ。


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オファーは、まるで好きな人に告白するようなドキドキがある。
受けてくれるだろうか・・・
断られたらどうしよう・・・
#実は採用担当はとっても緊張している

オファーの出し方は、いくつかある。
対面(面談)形式、電話、メール、紹介会社を通じての連絡 等。

候補者側の都合や、こちらのスケジュールによって、
どの方法になるかは、ケースバイケースで対応するが、
私は対面でオファーするのが、一番好きでした。



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私の前職でのオファーの出し方はこんな感じでした。
基本的には対面でも電話でも伝える内容は同じです。

①結果の通知(あなたに内定を出します~)
②選考の評価点に関するフィードバック
③入社後に期待していることの共有
④オファー内容(条件等)と雇用契約内容の説明
⑤質疑応答
⑥最後のもう一押し

①結果の通知

忙しい中、選考に参加してくれたことのお礼や、
最終結果の連絡までお待ちいただいたことの謝意を伝えます。

この時に「選考に参加してどうでしたか?」という軽い感じで、
候補者の感想や印象を聞くことにより、
志望熱意や重要視している点などを拾うことが出来るので、
その後のトークのポイントに組み込みます。


②選考の評価点に関するフィードバック

その候補者に対して「なぜ内定を出すのか」ということを説明します。

「○○の経験、能力が高く、入社後に活かせると考えています」

上記のように、面接の中で高い評価がされた点などについて、
出来るだけ具体的に、でも完結に伝えることが重要。

さらに、履歴書などの書面から分かる内容だけではなく、
面接の中で出てきた過去事例やエピソードなどを交えながら、
評価の内容を伝えることで、
候補者側にとっても、納得感や理解してくれている感が伝わります。

また良かったところだけではなく、課題として見えている点についても、
しっかりとお伝えすることも重要です。

「○○の経験がない点については、正直なところ入社後の課題になると考えています。けれど、□□の強みを生かせばリカバリーも出来ます。また、チームとして△△のような体制でカバーします。」

このように具体的な課題点も伝えておくことで、
ある程度の覚悟を持って入社意思を固めてもらいやすくなります。

また、課題を伝えて不安を煽るのではなく、
どのように対応するのか、サポート面などの情報もあると、
安心材料に変わります。
#当然ながら、出来もしないことは言っちゃだめ

強みと課題を伝える割合については、
基本的には強味が6~7割くらいで多くなるようにしますが、
候補者によって、チャレンジが多い方が燃えるというような方の場合は、
課題を多めに伝えることもあります。


③入社後に期待していることの共有

入社後に実際にどういう業務を担当することになるのか、
またその際の社内的な環境や挑戦にはどのようなことがあるのか、
その中でどういった価値を発揮してもらうことを期待しているのか、
候補者に対して期待することと、現場の様子を共有し、
「期待値のすり合わせ」を行います。

この③に関しては、職種とその部署の役割のことを
採用担当が完璧に理解していれば、採用担当から伝えればよいのですが、
自信がない場合は、採用部門のマネージャーや上司になる予定の方に、
説明&魅力訴求を依頼します。


④オファー内容(条件等)と雇用契約内容の説明

一番のポイントは年収の説明です。
大抵の場合は、この内定通知で金額を知らせる前の段階で、
募集広告や紹介会社によって、
ある程度の想定年収は、候補者に通知されているはずなので、
大きなギャップが生まれることはないはずです。

しかし、企業で働く上で給与というのは、
めちゃくちゃ重要な要素であるため、丁寧に説明をします。

また、2年後、3年後の想定年収について、
候補者からよく質問を受けることがありますが、
ある程度の説明は必要です。
しかしながら、具体的な金額の提示というのは、
期待権が発生してしまうリスクがあるので、
"あくまで過去の実績で、将来を確約するものではない"
という説明が必要です。

⑤質疑応答

候補者からの質問に答えます。

「これまで選考中だったのでお伝えできないこともありましたが、
 今日は何でも聞いてください」

と、質問しやすい雰囲気を作り、
候補者の不安を解消していきましょう。

基本的には、候補者の疑問には、
一つ一つ丁寧に真摯に回答します。

絶対にやってはいけないことは、
なんとなく回答する」です。

分からないことがあれば、
「すみません、正確な情報を持ち合わせていないので、
 確認をしてから、回答させて頂きます」
と伝えて、面談後に速やかに調べて連絡すればOKです。

いい加減に回答して、事実が異なった場合に失う信頼からすれば、
その場で回答できないことなんて可愛いものです。
#とはいっても、その場で回答出来ることは大事
#嘘、ダメ、ゼッタイ


⑥最後のもう一押し

候補者からの質疑応答が終われば、
オファー面談もいよいよ大詰めです。

最後にもう一度、
一緒に働きたい」ということを伝えましょう。

一緒に働きたいことの伝え方は、
その候補者の素晴らしさが、どれほど企業にとって重要で、
必要とされているかを語ることでもいいでしょうし、
採用担当自身の経験から、
カルチャーフィットしているかを語ることも効果的かもしれません。

けれど、忘れてはならないことがあります。
それは、採用担当の役割は「内定承諾を得る」ことです。
間違っても熱く語る事ではありません。
熱く語るのは目的ではなく、手段です。

改めて、候補者がどういう人物で、
どのようなアプローチをすることが、効果的なのか、
冷静に考えて、適したコミュニケーションで伝えることが必要です。


面接の際に、候補者の嘘がすぐにバレてしまうように、
採用担当の嘘も候補者にすぐにバレてしまうと、
私は考えています。

なので、オファーで口説くときも、
口から出まかせでは、決して口説けません。

事実としてあることを、
どうすれば伝わりやすくなるか、
受け止めやすい形になるか、それを考えることが大事。

データで示すのか、情熱を見せるのか、はたまた金額で示すのか。


やっぱりオファーは採用担当の腕の見せ所なんだと思います。
#熱くなるなと書きながら、ちょっと熱くなってしまいました。


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最後に少しだけ私の自慢話です。
#苦手な方は退避してください

私が中途採用の担当だった頃の、内定承諾率は約90%くらいでした。
正確な数は覚えていませんが、
5年間にわたって、550名~600名くらい採用した結果の数字なので、
ある程度、実績としての信ぴょう性はあると思います。

ちなみに、一般的な中途採用の内定承諾率は、
80%を少し下回るくらいだそうです。

この投稿でオファーの流れや方法について
つらつらと書いてきましたが、
私がオファー時に続けていて、
他の同僚の採用担当が行っていなかったことが一つだけあります。

もちろんその方法は同僚にも共有していましたが、
面倒だったのか、すぐにやめてしまう人がほとんどでした。


それは、
オファー面談の際に、メッセージを手書きした名刺をお渡しすることです。
文字でみるとずいぶんアナログな方法です。

表面には企業のスローガン的な文言と、
裏面には、内定者の人柄や、職種に合わせて、
1行くらいの簡単なメッセージを書いていました。

例えば、
「Always Safety First !!」とか
「Respect and Team Work」とか。
本当に簡単な1行というか一言です。

外資系でドライな印象を持たれやすかったので、
ギャップが良かったのかもしれません。

もっと言うと、たかだか名刺一枚のインパクトなんて、
ほとんど無いかもしれないので、
オマジナイ程度の効果だけだったかもしれません。

けれど、実際に入社した方の何名かからは、
そのメッセージが嬉しかったと言ってもらいましたし、
きっと多少なりのプラス要素はあったのでしょう。


時代はデジタルで、リモートな世の中で、
ハンコもサインも不要になりつつありますが、
”アナログさ"を活用していくことも大事かもしれないですね。

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