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中途採用における"転職回数"のリスクを考える

中途採用を行っている際に、転職回数というのはチェックポイントの一つになる。

書類選考で不合格となりやすいパターンとしては、短期間での離転職が繰り返されている場合だ。短期間というのは、1年未満の退職くらいのイメージ。
それが、1度だけではなく、2度3度と連続していたり、数年継続して勤務した仕事を挟みつつ、10年間で7社ほど経験しています なんていうケースも、転職歴が懸念材料となることが多い。

これは純粋に、採用したとしてもすぐに辞めてしまうんじゃないか?という懸念を感じるからだ。
採用と言うのは、企業にとって大きな投資である。中途採用を人材紹介会社を使って行う場合、採用した人の年収の30%くらいを紹介会社に支払うことになるので、採用職種やレイヤーにもよるけれど、数百万円単位の費用になるし、受け入れについても人的コストや時間コストが発生する。一般的に、新規採用した人が企業に価値をペイするのは、2,3年目くらいからと言われるので、それより早くに退職となると投資ロスになる。

同じような能力の人がいれば、長く続けてくれそうな人や、短期間で成長が期待できそうな人を採用する傾向が強いのはこのためだ。


もちろん、短期離職の原因が就業先の企業にあるという場合もある。
入社前に聞いていた条件や仕事内容と違った、ハラスメントなどの問題があったなど、本人に原因がないというケースもある。

しかし、そういった”致し方が無い事実”があったとしても、同じ理由での短期離職が繰り返されると、採用担当は「経験から学びを得なかったかのかな?」などと邪推してしまう。
逆に言うと、不運にも短期離職となってしまったとしても、それが連続していなければ「そういうこともありますよね」と理解も出来るし、過度にネガティブな印象を持つこともない。


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もう一つ、転職歴について、懸念を感じるパターンがある。
それは、新卒で入社した企業で長く働き転職などの経験がない方の場合だ。

これは候補者の立場からすると理不尽に感じるところかもしれない。1社で真面目に頑張ってきたことが裏目に出るなんて!と憤りすら感じるかもしれない。

なぜ1社で長く働いたことが懸念になるのか。

ちなみにここで言う長くとは15年とか20年くらいのスパンを指している。すなわちアラフォー以上で初転職というようなケースが当てはまる)

そういう真面目にコツコツされてきたような方の場合、募集要項に当てはまる経験やスキルがあれば、書類選考で不合格になることはあまりない。
では、なぜ面接で不合格となるケースがあるのか。

それは「環境変化への適応能力」について、シビアにみられることがあるからだ。転職というのは、全く別の文化を持つ組織に移ることを意味する。そこに適応するためには、本人の資質(関係構築力、ストレス耐性、学習能力)などによるものが大きい。

例えば転職歴が2度、3度とあって、それぞれの企業で3~5年くらい働いていれば、違う環境でも適応できそうだと、大きな懸念には感じない。

それが1社だけだと、適応できるかな?そもそも変化を好まない人なのでは?そいった疑問やバイアスを持たれがちになる。

もちろん、この部分については適応能力の高さを面接で伝えることが出来れば、払拭できるので、必ずしも採用されないというわけではない。
しかし、そういう目線で見られる可能性があることを認識しておく必要がある。


また、1社経験の場合、大きな成果を出している人だとしても、ポータブルスキルが弱いという可能性がある。
ポータブルスキルとは、ビジネス上で汎用可能なスキルの事で、特定の企業内でのみ活用できるといったものではなく、他の企業やビジネスにフィールドが変わったとしても、活用できるスキルのこと指す。例えば、英語のような言語スキルだったり、プログラミング言語などは分かりやすいポータブルスキルと言える。

1社での経験が長くなると、成果を出すために必要なスキルが特定の専門性よりも、上司など影響力の大きな人を巻き込む力だったり、部署間の調整をいい感じで行う能力の方が重宝されることがある。

社内で成果を出して、高い評価を得て、昇進を果たしていたとしても、転職したとたんに上手くパフォーマンスが発揮できないというのは、スキルセットのバランスが悪く、ポータブルスキルが不足しているということがある。

転職などによって、異なるフィールドでも成果を出したという事実は再現性があり、何かしらのポータブルスキルを持っている可能性が高いと判断される。

もちろん、実際にどれだけのスキルを持っているかということは、面接の中で過去の業務経験や実績を確認していけば、すぐにわかることなので、採用する側からすると大したリスクではない。どちらかというと、候補者側が自信の能力を過大評価してしまっているという可能性があるという点だ。

この辺りの認識をチューニングしたりバランスするには、同じ社内にいる転職者(他の企業から移ってきた人)に話を聞いてみたり、実際に転職するかどうかはさておき、転職活動を行ってみて、他の企業から自分自身がどう評価されるかということを体験してみてもいい。(人材紹介会社のエージェントに話を聞くだけでも、多少の情報は得られる)


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先日、投資に関する勉強会に参加した際に、講師の方が話していましたが、一番リターンの大きな投資対象は、金融商品ではなく”自分自身”だという事でした。
勉強をすることや資格を取ることだけではなく、遊びも含めて色々な経験を積むことや人間関係を構築することなど、目の前の環境にだけ捉われることなく、幅広い見識を持つことが大事ということですね。


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