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【2019シーズンJ1第5節】名古屋グランパスvs北海道コンサドーレ札幌 マッチレポート

 天気予報が雨から曇りへ変わり、そしてまた雨に。Jリーグ中断にいよいよ業を煮やして待ちきれない。10日前から気になるのはチームのコンディションと現地の天気予報。そんなJリーグな日常が帰ってきました。先週の土曜日に。
 中断後の一試合目はAWAY名古屋グランパス。風間監督体制3年目。昨シーズンの終盤~今シーズン、明らかに以前よりもプレースピードが上がっています。コンサドーレの現在位置を確認するには十分すぎる相手でした。

いざ、豊田スタジアムへ

実は人生初の豊スタでした。名古屋駅からの所要時間を読み違える。それにしてもこの橋とスタジアムの曲線美が良いですね。

スタグルを楽しみ(諭吉のからあげ・ニッカハイボール)、試合に向けて英気を養います。屋外のスタグルブース、曇天の中でしたがやっぱり解放感あります。

試合前。念入りに水をまき、素晴らしいパススピードの試合を予感させます。ピッチとの距離感も程よく、反響もあり。とても良いスタジアムです。

特別指定選手金子拓郎が初のベンチ入り

 スタメンは3-4-2-1のフォーメーション。前節に続き、システム上噛み合わせの悪く対戦相性の悪い4-4-2との対戦に。
 この試合で、深井選手が怪我を乗り越えJ通算100試合出場。まさに不屈の男です
 そして、ベンチには来シーズン加入内定の特別指定選手(前橋育英→日大)金子拓郎が入りました。適正ポジションはウィングバックかシャドーだとばかり思っていたら、起用はボランチ。運動量と展開力があり、左利きで懐の深いボールの持ち方をします。キック前の予備動作が少なく、蹴れる球質も多そうなのでディフェンスはパスのタイミングを測りづらそう。シャドーやボランチとしても今後重宝されそうな印象です。将来的には、かのスナイフターンの後継者となるような、そんな予感があります。それにしても、最近の左利きコレクターぶりは意図的なのでしょうか。
 個人的な注目相手選手は昨シーズンまでサガン鳥栖に在籍した左SB吉田。攻守ともにインテンシティの高いサッカーを体現することはわかっていましたが、風間サッカーへのフィットが成されたならばどうなるのか……同い年ということもあり、要チェックです。
 そして長谷川アーリアジャスールのスタメン起用は意外でした。ここまで好調な赤崎を控えに、単独破壊力は落ちるがユーティリティ性の高い長谷川を2トップの一角に据えることで、前プレスのクオリティが上がるだけでなく、結果コンサドーレの守備組織をかなり混乱に陥れることとなります。長谷川と言えば、ポポビッチ元C大阪監督は今どこにいるんでしょうか。少し気になりました。

大敗の影にあるものは

 結果としては0-4。前半で試合が決してしまったというのは間違いなく、特に底からのビルドアップにおいて効果的な展開を作り出せなかったことにより、全体のリズムを損ない、選手の距離感においても相手に優位な状況を作らせてしまいました。
 試合後に見たサポーターの声の中に、"ミシャサッカーがどこからも分析をされ対策を打たれてしまった。絶望感ある"というものも多くありました。しかし、帰ってからまたDAZNで試合を見返したところ、正直あまりそうは思えませんでした。
 というのも、"前プレスで嵌められて底からのビルドアップが出来ない"という状況を生み出したのは、別に何かしらスペシャルなによるものではありません。数的同数を作ったプレッシングは可変システムを採用する多くのチームに対して汎用的に取られる、メジャーな方法論のひとつです。
 そして、コンサドーレはチームとしてそうした主流の打ち手に対して構造的に無策だったわけではなく、少なくとも何手かのパターンを持って試合に臨んでいました。無論、こうした予想可能性の高い方法によって機能不全を起こしたこと、そしてその要因である個の能力劣位を正当化するわけではありません。しかし、この試合で抱いた絶望感とやらは、あくまでコンサドーレというチームの絶対的な力不足によるものではなく、名古屋グランパスという完成度の高いチームに直面しての相対的な感情なのだと思うのです。

この苦手意識は”徹する”ことで払拭したい

 ミシャが試合後に語った通り、ビルドアップにおいて怖がってはいけない。消極的な選択や狙いの薄い逃げはおよそ守備側からすると嵌めやすいのです。具体例としては武蔵への放り込み。5トップ気味のシステムに変化しているタイミングで前線でCBを背負ったCFに向けたロビングは、これがジョーやジェイでもない限り、相当な狙いが共有されていなければ意図的に起点とすることは難しいものです。
 ビルドアップにおいて良い選択をし続ける判断と勇気。勇気を継続するための技術と備えを持って次節臨むことが重要です。技術はすぐに上がりません。特に備えの部分、選手の位置取りの話だけでなく、ミシャの言う所の"2点取られても3点取れば良い"という哲学がうまく作用すれば良いなあと思っております。これは精神論ではなく、チームが戦術を着実に遂行していくために必要な意志レベルの統一と、判断軸を置くことに意味があります。

 こうした形のロングボールはやはり二次攻撃にほとんど繋がらなかった。

グランパスの何がすごかったのか

 この試合でのグランパスが攻守で徹底してきたことはまとめると以下の通り。

相手ビルドアップ時、前線はカバーシャドウで繋がりを断ち擬似的な数的同数を作る。マンマーク気味に対応することで、時間とスペースを与えない。中央で持たせたらプレスバックし複数人で潰す。
効果的距離感を維持し複数名で嵌めることで、ルーズボールの確保率向上。ポジティブトランジションにおいて相手側の即時奪回チャンスを減らす。
③攻撃時は効果的距離感の維持を徹底。間受けを多用し能動的に守備側のバランスを崩す。中央の制圧によりサイドの突破確率を高める。
④ネガティブトランジションにおいて、距離感を生かしスピーディに囲む。

 単純に”コンパクト”なだけではなく”適切な”距離感を維持した際のグランパスは、攻守ともに抜群の迫力を誇りました。上記の4点はひとまず試合見ていて自分が思ったこと。風間監督の元、他にも具体的かつクリティカルな方向性が示されていたんだろうなと思います。


 長谷川の起用が予想外だったと述べましたが、この選手が攻守に渡って気の利いたプレーをします。ユーティリティがただの便利屋ではないということを、強く示したと思います。
 バランスという点では、強いて言うならば両SB背後のスペース。吉田・宮原ともに高い位置を取っており、コンサドーレの両WBを押し込むことや、ハーフレーン活用などにも機能しましたが、その反面、最終ラインをCB2枚でカバーしなければならないという高めのリスクを抱えていました。開始7分頃、ロペスがカウンターでそのリスクを露見させる形となりましたが、その後は具体的なオプションとしてこのスペースを活用できるケースはほとんどありませんでした。

コンサドーレに生じた諸問題と一部解決案

 上記に対して、コンサドーレに生じた問題はざっくりと以下の3点。

①ビルドアップにおける時間的猶予の消滅可変システムの弱点を突かれる。よりスピーディかつ正確、効果的にボールを動かさなければならないという意識の中で技術的ミスが多発。

②人基準なのかスペース基準なのか、守備対応において迷いが多発(特に中央~右サイド)。技術的、フィジカル的に劣る対面を作られるも、単独でボール奪取を狙うシーンが多く結果バランスを崩す。

本来質的優位を取りたい両WBが劣勢になった際の停滞感。

削られた時間を取り戻す

①について。前述した通り、チームとしては相手がハイプレス仕掛けてくることは想定内です。その中で、何が出来るのか。
 山王工業高校に対する宮城リョータの如く単騎突破出来ればおよそ解決なのですが、如何せんここは現実。マンツーマン気味のハイプレスに対するセオリーとして、“ズラす、溜める、飛ばす”が有効です。”ゾーンには縦のスライド、マンマークには横のスライド”というのが最近の定説のようです。現に、コンサドーレの選手は今までの試合の中でもこうした行動を試しています。
 HOME清水エスパルスのケース。ゾーン気味ですが、注目は福森選手の横にずれるドリブル。これにより、横方向にマークの受け渡しを強いながら、中盤で深井とチャナティップが前後ローテする時間を確保します。

 これ以外のシーンでも、宮澤が横にドリブルするシーンは今シーズンいくつか見ることが出来ます。横ドリブルでプレッシングを回避しながら時間をコントロールし、可変システムにより後方のゾーンディフェンスを打開するというチームの意図が見て取れます。駒井のように中央で溜めを作りながらスペースめがけてボールを運べる選手がいると中盤でもこれが可能になるため、更に有効な手法となってきます。
 また、福森が時として取る謎のポジショニングも、もしかするとこうした試行錯誤の過程なのではないかとまだ思っているので、回答を得るのにひとまず急がずにいようかと思っています。

 続いて、AWAY浦和レッズ戦でも見せたソンユンからの1枚飛ばしのビルドアップ。ボールが動くのと並行して、チャナティップがボール受けに空いたスペースへ落ちてきています。これは、昨シーズンなかったやり方です。


奪う準備は出来ているか。攻める準備になっているのか。 

 ②について。コンサドーレはネガトラにおいてはまず即時奪回を狙い、その後陣形を整え5-4-1(or5-1-2-2)のシステムで構える守備に移行するという優先順位で守ります。しかしこれは過去の記事でも題材にしていますが、コンサドーレはともかく”奪うためのプレッシング”の色が濃い。シミッチやジョーがスペシャルだからというだけでなく、J1の舞台でイーブンな状況でボールキープする相手から単独でボールを奪取するのはかなり難しいのです。なので、まずはボールが保持される前の段階で奪う(インターセプト)、相手のボール保持の状況を悪くする(ヘッドダウン・選択肢を与えない・パスの誘導等)、複数人で囲む、といったプレー原則が存在するのです。”奪う”アクションの連続性だけでなく、その手前のアクションにこそ精度を求めたいところです。
 また、右サイドにおける守備対応についてはこの試合でもがっつりやられました。人を基準にするのかスペースを基準にするのか、個々の判断にゆだねるよりも、現状のメンバーでは人基準で決めて対応しないと厳しいように思います。


ぶらりルーカス一人旅

 最後に③について。4-1-5の攻撃時システムにおいては4-4-2の守備システムに対してもウィングバックがオープンになります。しかし、対面するSBとの力関係で劣勢となる際の打開策は非常に単調です。
 左の菅は福森へのバックパス、ルーカスはフォローがほとんどいないので基本はドリブルの仕掛け。ロペスとの間での単純なパス交換を挟むこともあります。以下の動画に見て取れる通り、バスケのアイソレーションのような約束事があるのか、画面上にフォローの選手は最後まで現れません。守備で高負担の進藤にこの役目も負わせるには少しばかり過負荷にも思えますが……。


大分トリニータとの試合に向けて見えた兆し

 まずは岩崎。カップ戦での出場を見ると、なかなか時間がかかるのかなあなどと思っていましたが、主力組に加わり4-1-5の構成が出来た中でプレーするとだいぶ印象が変わりました。

 加えて、武蔵の裏を目がけたスルーパス。この手のパスに対する反応とスピードはさすが。この試合、ポスト役として意志を持って取り組んでいたように思えた武蔵ですが、やはり真骨頂はスピードを生かしたプレーなのだと思います。


最後に

 スコア以上に、相手との差を感じる大敗を今シーズン早々に経験することとなりました。サポーターとしての振る舞いだとか、ブーイングの是非だとか、いろんなところでいろんなことが口々に言われているのを聞きました。色んな楽しみ方があるのはわかりますが、それを他人に押し付けないこと、同時に鷹揚な姿勢で受け入れる度量を持つことの大事さを感じたところでした。ケンカ、ヨクナイ。ミンナ、トモダチ。
 まただらだらと長文になってしまいました。明後日に迫ってしまった大分トリニータ戦。HOMEで勝ちましょう。
 

 

 

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