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開発者からみた小説投稿サイトUI比較
多数ある小説投稿サイトの中から代表的なものを以下の5サイトピックアップして、開発者目線でレビューしてみたいと思います。開発者目線なので、読者数やランキング、ポイント、収益化、アプリなどは全部無視して、純粋にWebのUI面にフォーカスし、使いやすさを検証しています。
小説家になろう
カクヨム
エブリスタ
アルファポリス
ノベルアップ+
今回検証したのは「作家サイド」で小説を投稿した場合に限定しており、読者目線についてはあまり深く追跡していないです。
動いているのが奇跡!?「小説家になろう」
作家・読者いずれも最もユーザー数が多いサイトですが、年季もすごくて、NetscapeNavigator時代に作られたであろうUIが現役で稼働しています。例えると、手回し式蒸気自動車に少しずつ手を入れつつ公道を走っているような感じです。
このサービスはユーザー層も歴の長い人が多く、大幅な改修とかモダン化ができない事情にも絡んでそうです。これだけ長期に渡って改修を積み上げているので、セカンドシステム症候群に陥っているとみて良いでしょう。
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謎めいた新規小説作成
通常の投稿サイトの場合、そのデータ構造に即して
小説情報登録
エピソード追加
という流れで新規小説作成を行いますが、小説家になろうは違います。
最初のエピソード投稿
小説情報編集
第2話以降のエピソード追加
この途中に現れるボタンキャプションが「投稿」になっていて、「押したら公開されちゃうの!?」と焦ってしまいます。こういう迷ってしまうUIはあちこちに見られます。
ダイレクト投稿だと小説情報編集から先に現れますが、結局第1話は必ず投稿しなければならず、手順が1+2になっただけで何も変わりません。
データ構造が第1話=小説情報なのではないかと思われます(第1話だけ何故か消せないし)。
予約投稿のバリデーションとソート
小説家になろうでは予約投稿日がテレコになることを許可しません。なので投稿日をミスして「エピソードが飛ばされて公開されてしまった」という事故が起こらないようになっています。
エピソードの順番変更が移動位置指定型なので使いやすいです。数百話の大作に「プロローグ」を追加したとき、矢印ボタンで先頭に移動させるようなことにはなりません。
複雑なサイト構造
管理画面がかなり複雑で、慣れないと小説一覧すら見失います。メニューもありますが、どれが何のメニューなのか学ぶ必要があります。表示画面に無関係なリンクやメニュー、情報が表示されているせいで迷ってしまうことが多いです。
内部的なデータについても、trueが0、falseが1になっていたり、文字列キーだったり、知らずに触るとぶっ壊れそうな危険な構造になっています。
ユーザーサイドで実際に使う機能やみるべきところはそれほど多くないので、慣れてしまえばなんともありません。感想が届けば気づくように表示してくれます。
総評
今どきアプリUIに慣れてる人は初見でビビる気がします。でも安心してください、動きます。ちゃんと動きます。投稿できちゃえば日本最多級の読者が待っています。
最も優れたUI「カクヨム」
異論はあると思いますが、カクヨムのUIはぶっちぎりに秀逸です(開発者目線)。貸し本棚開発で実装方法で迷ったとき、他のサービスを参考に検証してみると、カクヨムでは必ずなにか新たな発見や考え方を学べます。
比較的新しいこともありますが、はてなさんが開発しているので、もともと膨大な経験的ノウハウの蓄積があるのだと思います。
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優れた小説管理
これ以上無いくらいわかりやすい管理画面です。小説情報、設定、エピソード一覧がまとまっていて、サイドメニューにその他のメニューがまとめられています。
今必要なものが中央に、そこから離脱するものはサイドメニュー、のように整理整頓できています。初見で操作に迷いません。当たり前に見えますが、カクヨム以外のサイトはあまり整理できていないようです。
細かい部分ですが、公開日時設定やエピソードソートなどのUIがよく考えられていて、操作しやすいです。
公開日時設定等に特別なバリデーションが無いので、テレコ公開やミス公開してしまう恐れがあります。
直書きできる執筆エディタ
カクヨムのエディタは直書きできます。ツールもルビ、傍点、字下げに絞られていて、不要なら隠すことができます。それ以外の無駄なコントロールを極力廃して、執筆の邪魔にならないように設計されています。
Windows端末で執筆する場合に、少しフォントが薄いと感じることがあります。そのまま離脱すると執筆中の本文が失われます。
機能がよく練られている
コレクションや近況ノートなど、ありきたりに見える機能がよく考えられて実装されています。「こんなんあったらええやろ」という思いつきで適当に盛ったものではないことは確かです。
総評
べた褒めに近いですが、開発者目線では極めて優れたUIだと思います。問題は読者がつきにくいことですが、そこはマーケティングの問題です。
スマホ特化型「エブリスタ」
スマホで操作することを前提に構築されていますが、PCで使いにくいわけではありません。ただスマホで操作した方が圧倒的に使いやすいです。PCで操作している方は一度スマホサイズにしてみてください。突然雰囲気が変わります。
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エピソードをページ分解できる
スマホサイト特有だと思いますが、一つのエピソードを短くページ分解して、小さな文章量で表示することができます。携帯端末では文章を小分けにした方が離脱が減少するので、正しい機能だと思います。
ON/OFFがスイッチトグル
チェックボックスではなくスイッチトグルという部分もスマホ的です。主たる操作ボタンが円形で右下に配置されているのもMaterial Design的で使いやすいです。
スマホ特化にした結果、PCではページコンテンツが縦長になりすぎて楽天のLPみたいです。アプリ主体のサービスなので、Web+PCというのは優先順位が低いのかなと感じます。
予約公開バリデーションあり
エブリスタは予約公開のバリデーションがあり、一括設定も可能になっています。例えば、10話の下書きのうち、4話目を公開設定すると、1〜3話も同一の公開設定になります。日時をテレコにするとエラーになります。
総評
PCユーザにはお勧めしませんが、スマホユーザならこことノベルアップが良い選択肢です。
初見殺し「アルファポリス」
上げて落とす系の謎ポイントが有名なアルファポリスは小説に限らず、絵本や漫画など複数のコンテンツを取り扱うサービスとなっており、小説特化型ではありません。そのせいかUIもあまり練られておらず、発射ボタンと自爆ボタンが仲良く並んでいることがあります。
ここのUIについては「危ない」という意見が多いにもかかわらず、一度も改善の手が入ったことがありません。
事故の温床「投稿予約」
かなり細かい投稿予約ができるようになっていますが、このカレンダーUIが使いづらく、公開日時のバリデーションも無いのでテレコ公開できます。むしろミスしてテレコになっている作品をわりと頻繁に見かけます。
本文編集画面も、下書き保存と公開ボタン(即公開確認無し!)が並んでいます。それ以前のエピソードが下書きで、最終話だったとしても、ミスクリック一発で最終話を最初に公開してしまうという大事故が起きます。
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直書き不能エディタ
一見直書きできそうですがかなり厳しいです。離脱しようとすると保存警告をalertで出してくれますが、それ以外に特筆すべき機能がありません。
更に、このエディタでルビを打つと独自フォーマットが現れます。一応、小説家になろうやカクヨムと同じフォーマットでもルビ表示してくれるので、どこかから本文をコピペした方が安全です。
しおりが見える
アルファポリスで最も優れた機能として、読者の栞がみえる事が挙げられます。どのエピソードにいくつの栞があるか一目で見えるので、どこで停滞していて、何人読了したかもわかります。
総評
UI面で褒めるべきところがあまりないので、作家さんはコピペかリンクで極力作業を減らし、読者さんはアプリを使ったほうが良いと思います。外部の公開URLにリンクできるのは悪くないですが、色々記述しないといけないので良いUIとは言えないです。
迷走してる?「ノベルアップ+」
見るたびになんかちょっとずつ変わってるんですが、どうも差別化に苦心しているように感じられます。
ここもスマホ特化型のUIですが、タブメニューが横に伸びてスクロール必須になってたり、作品一覧にイベントが上位表示になっていたり、「なぜ?」となる部分が多いです。
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テレコ公開できます
予約公開のバリデーションがありません。ただ、UI的に日時設定の手間がかかるので、間違いにくいかと思います。カレンダーと予約設定が見やすければ事故はある程度防げるのだと思います。
不要な情報が必要な情報より優先される
エピソード一覧にポイント情報、作品リストにイベントリンクなどが上位表示されていて、必要な情報が下に追いやられています。
このあたりは差別化の軸になる情報だったり、周知したい情報を優先的に表示することでなんとか盛り上げようという運営の努力を感じるので、「悪い」UIとは言い切れないです。
コントロールの位置がよくない
スマホ向けのレイアウト構成なのですが、スマホで操作するにはちょっとボタンの位置がよくないです。全体的に操作しにくいコントロール配置になっています。
総評
UI面ではエブリスタに水を開けられてしまっているように感じます。機能面で不足や欠如は無いので、操作感が気にならなければイベントも盛んだし、ユーザー目線では良いのかなと思います。
まとめ
UIのみの評価としてはPCならカクヨム、スマホならエブリスタです。どちらも操作面だけでなく、全体の構成がよく考えられているので、個人開発される方は参考にするのがよろしいのではないでしょうか。
開発者目線で小説投稿サイトのUIをレビューしてみました。おそらく一般的なユーザー目線だと感じ方が全然違ってくるのかなと思います。開発者だと
情報が整理されているか
機能構造が整理されているか
コントロールが適切に配置されているか
直感的か
操作ミスしないか
という点にフォーカスして評価しています。
monogataryも使っているのでレビューしたかったのですが、あまり詳しくないので外しました。
アイキャッチはUnsplashのSigmundが撮影した写真
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