地下アイドルに通い始めた僕の、推しメンが繋がり解雇されるまでの話


"表参道でまってるね"

彼女と
一番最後に撮ったチェキに
書かれていた言葉だ。

しかしその日、
僕は表参道には行かなかった。


「忙しくて
彼氏なんか出来ないよ〜」

あの日以来、
僕はこの
"忙しくて出来ない"
というのは信用ならないことを学んだ。

本当に好きだったら、
大切なことだったら、
人は忙しくても
なんとかして時間をつくるものだ。



〜アイドルフェスでの出会い〜

あの日僕は
秋葉原の各ライブハウス合同でやる、
アイドルフェスイベントに参加していた。

元々48のヲタクだった僕は、
勝手の違う初めての経験に一人、
戸惑っていた。


「え、イケメン」

突っ立ってスマホを弄っていた僕に
アイドルが話しかけてきた。


「いやいやいや」

スクールカーストの底辺を這いつくばって来た僕は、この人生で初めて言われた言葉を信じられなかった。

そんな僕なので、
ぐいぐい来る彼女に押されて
Twitterをフォローしてしまった。

「このあとライブあるから来て欲しい〜」

財布を確認したが、
行けるだけのお金が無かった僕は
断ってその日は帰った。



〜衝撃の連続だった無銭ライブ〜

数日後、Twitterで

"無銭ライブ"

というのを目にした僕は、
大学が終わってすぐに秋葉原へ向かった。
時間もギリギリだったので
雨の中走っていった。


「なんだここは、、」

元々48のヲタクで、
大きなステージでコンサートをする
アイドルしか見ていなかった僕には
全てか衝撃的だった。


ヲタクの何言ってるか分からん
ダミ声のMIX、

アイドルがヲタクの間をすり抜けて
ステージに行く、

(学校の学芸会の延長か?)
ってクオリティのライブ、


そして何より、
チェキの接触時間3分と長い。
(なんなら後ろ居なかったら剥がされない)

10秒に1K払っていた48のヲタクは
皆そう感じると思う。

「雨の中来てくれたの?嬉しい〜」

(この子俺のこと好きなんか?)

とても刺激的で、楽しい時間だった。


〜地下アイドル楽しい!〜

そのアイドルの事務所は
火曜と木曜に定期で無銭ライブをしていた。

僕は

「次の木曜行ってみない?」

と48のヲタク友達を1人誘い、
ちょうど秋葉原にいた
ヲタク友達も1人誘い、
3人で無銭ライブに行った。

「えっ?やばくね?めちゃくちゃ楽しい!」

2人は彼女の
後輩グループの子達にハマった。


ガッツリ彼女にハマってしまった僕は、
バイトを増やし、

日勤と夜勤の間を抜けて、
物販だけ行ったこともあった。


僕が、
後輩グループの子のことを見ていると

「だめ!やだ!Aくんは私のだよ!」

と彼女は僕の腕を引っ張った。


正直自分は推されてると思った。


〜CD販売!オフ会予告!〜

そんな中、
ライブでやっている持ち曲のCDが販売され、
10枚購入で
オフ会参加が貰えるとのことだった。

企画されたオフ会内容というと、

"パワースポット巡り"


彼女が

「え、やだー」

と後輩グループは
ピクニックオフ会をやるのと比べて
不満を漏らしていた中、
僕は初めてのオフ会に胸を膨らませていた。


〜〇〇に関するお知らせ〜

突然だった。

グループの公式Twitterにリンクが貼られた。


内容は
彼女が特定のファンと繋がりが発覚したため、
今日付けで解雇処分するというものだった。


ショックだった。

楽しみにしてたオフ会も無くなった。


「今度落ちサビ歌うんだ〜♪」
と話してて、楽しみにしていた新曲も
聞けなくなった。

「次の表参道のライブは来れそう?」
と次に会う約束も無くなった。

後で分かった事だが、
僕と出会った日より前から
繋がっていたらしい。

「彼氏なんか忙しくて出来ないよ〜」
の言葉は嘘だったことが分かった。

何よりもう会えなくなるのが
ただただ、悲しかった。


その晩、
友人が開いたツイキャスに
彼女がコメントを残した。

"もうツイート出来ないから…最後に言っといて。ごめんなさい、幸せでした"

"Aくんに謝っといて。ごめんねって"

"みんなに会えて幸せだったよ"




彼女は
わがままで自分勝手な人だった。

「恥ずかしいから」
といって
ステージに立っても
下を向いているような人だった。

でも大声でコールをしたとき
ニヤッとして僕を見るのか
たまらなく可愛かった。
好きだった。



〜それから〜

数年後、
彼女は別グループのアイドルとして
再デビューしました。

お披露目ライブも行き、
お祝いの花束も渡しました。

しかし、
彼女の前で
どうしても素直に
笑顔が作れない自分がいました。

それ以来ほとんど
彼女の元へ行くことは無くなりましたが、
職を捨て、アイドルを初めてたことは
並々ならぬ決意があったと思います。


僕は"推し"というのは

"幸せになって欲しい"と思う人で

"好き"

"自分が幸せにしたい"と思う人

と考えています。


僕にはもう
彼女を幸せにすることが出来ませんが、

どうか幸せになって欲しいと
今でも思っています。

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