宮本浩次「ソロ活動5周年記念ツアー 今、俺の行きたい場所」
エレカシ(ご本人が許容したようなので略称で)宮本とソロ歌手・宮本浩次は明確に演じ分けられている。ただ、そりゃあ同一人物だから、通底する根幹がある。さまざまな輝き方をする多面体。芯で命が燃えている。その炎の色が、多面体のどの部分がその瞬間に外に向いているかによって、異なる色で輝くのだと思う。そんなブリリアントカットの宝石を思わせる幕開けの映像がとても綺麗だった…。
第1部は『縦横無尽』、第2部はカバー4連続からの『宮本、独歩。』多めのセットリスト。
そこには、この5年間の足跡を総括するストーリーがあった。
*セトリ分析は別稿で書いているので、ここはレポ(というか自分用備忘メモ)。
島根:
音の坩堝。低音(バスドラ)の残響が凄すぎて、他の音があまり綺麗に聴こえず。1階のほぼド真ん中だったので、音が回って集まってしまうという印象。
横浜1:
行ってみたらアリーナ最後列。
島根より上手くなってた!
横浜2:
スタンド1列目。隣は空席、その隣には中年カップル。開演前、男性が腕を組んでふんぞり返って「ははん?どんなもんか見てやろう」な気配。始まっても拍手もしなかったのが、やがて身を乗り出し(私が立ち上がって視界を遮ったせいもあるが)、中盤からは手拍子、「老若男女」に爆笑、後半は立ち上がり両腕を上げていた。勝った!と思った。
神戸1:
横浜よりさらに上手くなってた!
アリーナ6列目、花道から3席目。とてもじゃないけどメモは取れない。集中。だが、…あまり記憶がない。。。
ほほほ本物だ、本物が目の前に!という衝撃のあまり、バミリ剥がして鼻の下に貼る、sha·la·la·laで脇腹、すってぃーがニコっと笑ってくれて、岡田さんがすぐ横でバズーカ構えてたことしか。
神戸2:
スタンド2層の1列目。あまりに力と心を込めて腕を突き上げていたので、自分の拳がもげてセンステに飛んで行っちゃうんじゃないかと何度も思った。
第1部
1.きみに会いたい -Dance with you-
(島根)
コートに帽子、かっこいい。これまでのようなキーボードとの絡みがなくて、ビシッと決まってる。
(横浜1)
黒シャツのせいか、若次が歌っているかのようだった。ポニキャ期あたりの若次。
(横浜2)
ひょっとこみたいな顔してた。
(神戸2)
ドラムのアレンジ変わった?
2.ロマンス
(神戸2)
この歌もドラムアレンジ変わった?
3.悲しみの果て
このメッセージ性の強い代表曲をこんな序盤に。「さあ、悲しみの向こうに行こうぜ!」とツアーコンダクターが旗を振っているかのようだった。
今回のツアーでも、すってぃーがノリノリで演奏してくれていて嬉しかった。1994年リリース、すってぃー11歳。ベースを始めた頃だから知らないはずはないと思う。そのレジェンドバンドの歴戦の大名曲を本人の歌うバックで弾くんだもの、そりゃサポメン冥利に尽きるわよね…。そう思うとノリノリの姿がエモいのなんの…(涙)
(島根)
何度も聴いているのに、急に実感が押し寄せてきて。こんなに明るくて力強い歌だったんだ…。明るくて強い。その波動が心に届く時には、あったかさとやさしさに昇華する。とても楽しそうに歌っていたから。
そして号令がかかった!
「はじまるよーーーーー!!!」
(横浜2)
花道で四股を踏み、そのまま片足を軸に四股を踏みながら回転。体幹どうなってるの。
(神戸1)
この歌だったか、ステージ中央のけっこう大きいバミリテープを剥がし、チャップリンのチョビ髭よろしく鼻の下に貼る。お願いだからばっちいからやめて。
4.First Love
コンサートではギター弾き語りと司令塔氏のキーボードのみが多かったけれど、今回はアルバム音源に近かった。
途中からバンドが入ってくるのがめちゃくちゃ素敵だから、それを生で聴けて嬉しかった。
5.rain -愛だけを信じて-
(島根)
「生きてることを」を1音ずつはっきりと発音。腰に手を当てて。
(横浜1)
寄り目気味で、ますます若次。
(横浜2)
若次。「愛を」←とメモに書いてあるんだけど何だっけ…。
(神戸1)
「大丈夫、わたしはまた笑顔になるから」で目が合って私に向かって歌ってくれた。心の中の私が号泣しながら笑顔になれた。
6.sha・la・la・la
(島根)
どの部分だったか、「もう若くはないけど」と歌っていた。
すってぃーが、客席のワイパーに合わせて左右に揺れてくれるの嬉しい。
(横浜1)
サビの変形バージョンが “Hello.I love you” みたいでグッと来た。
(横浜2)
花道をスキップ。
(神戸1)
花道を行き来してくれて狂喜。脇腹がチラリと見えて記憶が吹っ飛ぶ。
(神戸2)
花道をスキップ。
7.浮世小路のblues
(島根)
かっこよすぎ。
(横浜1)
かっこよすぎ。1番と2番の間奏で水分補給。
(横浜2)
かっこよすぎる。
(神戸1)
あ〜かっこよ、、、
(神戸2)
かっこいいーーー(泣)
8.この道の先で
歌前の口上で「会いたい」とか言ってくれて昇天。。。
9.P. S. I love you
(神戸1)
トムトムが「あいらーぶゅー」とか「あいしーてーるー」と口ずさみながら叩くのを、初めて肉眼でしっかり見たかも(胸熱)
10.哀愁につつまれて
(横浜1)
初披露(第3部 “close your eyes” に続いて)。タイトルからは想像できないロック。
か、かっこいい。。。
聴き取れた言葉:「さみだる…」(?)「ひとつの嘆き」(「な」に続くのは「涙」かと思ったら「嘆き」だった!)「青春の影」「青春の時」「どんなにもオマエ想っていても、あの日誓った言葉くりかえしても、もう届かない、俺を行くしか(?)ああ哀愁につつまれて」「もう一度逢いたい、もう一度抱きしめたい、おまえをこの胸に」
マイクにかじりついて熱唱。熱い。熱くてかっこいい。重厚なリズムが “close your eyes” と好対照でそれもまたかっこいい。このセンチメンタルなタイトルで、ガナリをメロディーラインに乗せ、かつ雄叫びとして成立させる力量と、その結果、構築される世界に心底シビれる。
これはもしや今次から若次へのラブソングなのでは?と直感。
(横浜2)
第1部で5年間を総括した感あり。
第2部
11.Woman ”Wの悲劇”より
(島根)
「雪のような星が降るわ」の「わ〜」の響きがノンビブラートの強い声で、ここで(うぉーーー!宮本の声だぁーーー!)と鳥肌が立って震える…のが音源を聴く愉悦なのだが、、、優しく歌っていて「わー」が鳴らなかった。
すってぃーが(ピックを使って小刻みに弦を震わせて?)奏でていたSEのような音が幻想だった。
(横浜1)
「わーーー」が響いていた。聴きたかった歌声。
12.飾りじゃないのよ涙は
(神戸2)
どっしりと落ち着いた歌唱。歌い始めたばかりの頃は、慣れない裏拍を取るために足を手で叩いていたような記憶があるが、歌えば歌うほど身に付いて、もうすっかり自分のものに。
13.喝采
(島根)
「いつものように幕が開く」と歌い始め、(ヤバい!これは2番では…1番は「幕が開き」だよ、)と思っていたら案の定、むにゃむにゃの後、歌い直し。仕切り直しの口上で「神聖な歌」と。2番の出だし「草がからまる白い壁」、いや草は絡まらないでしょ、蔦だよ、と思うなど。
(横浜1)
マイクにかじりついて精魂込めて熱唱、終わった瞬間ものすごい深い溜息のような脱力が見えた。
(横浜2)
歌詞やあやふやになり「ららら〜」。マイクにかじりついて歌う。
(神戸1)
「草がからまる」と歌う。横浜から神戸までの2週間できっちり修正してきた。
14.翳りゆく部屋
(神戸1)
「私が今死んでも」で照明が真っ赤になる。その中でドヤ顔をしているように見えた。やっぱり「だから生きろ」ってことなんだと思う。私が死んでも世界は終わらないし変わらない。だから無駄死にさ、やめた方がいい。
“あなた” も “化粧” も “異邦人” もない。カバーも更新されていく。今、俺の歌いたい日本の名曲。
15.風に吹かれて
この歌でもすってぃーが、客席のワイパーに合わせて左右に揺れてくれるの嬉しい。
(神戸2)
「本当はこれでそう本当はこのままで何もかも素晴らしいのに」をセンステの角から私に向かって歌ってくれた。
16.旅に出ようぜbaby
(島根)
ライブで聴きたかった曲。嬉しい。サビに入る前の2拍ですってぃーがジャンプ。こちらも合わせてジャンプ。
(横浜1)
初聴きのせいか手拍子のリズムが新鮮、と島根で思ったけど、違う、歩く速さなんだこのテンポは。
「とどまることを知らない」が出にくいみたいだ。島根でも詰まって「とどまることを知らない!!(早口)」と遅れた分を無理に押し込んでた。
「見えますかー!」(見えませーん from アリーナ最後列)
(神戸1)
タンバリン多め。左手で持って左腰を叩いて鳴らしながら、右手のマイクをおへそあたりに押し付けてタンバリンの音をマイクで拾おうとしてたの超かわだった。
17.恋人がサンタクロース
あの可愛いステップ?がどの歌詞の部分でだったか記憶が曖昧だけど、膝を折って一歩進んで揃え、膝を折って一歩進んで揃え。かわ。
そこからの間奏、裏拍で「…えい! …えい!」(「え」と「あ」が混ざったような発音)と腕を突き上げるの好き。
そして毎回、「あれからいくつ冬が巡り来たでしょう」のところで指折り数えるのかわいい。そこからの「あの日、遠い街へとサンタが連れて行ったきり…」って、隣のお姉さんたまには実家に帰って来て、って思う笑。
(神戸1)
雪が吹き出す。横浜では遠目に細かくて軽い紙吹雪かと思っていたら、なんと泡だった。マスクをずらして嗅いでみたけど匂いはなし。
18.昇る太陽
ヘロヘロのようだけど、音程もブレないし歌詞も飛ばない。
めちゃくちゃギアが入っている気合いが空回りせず、満ち満ちに充填されている。凄かった。
19.Do you remember?
過呼吸ソングを連続で。凄いとしか。
(横浜1)
「さようなら昨日よ/こんにちは今日よ」で「昨日よ」「今日よ」が飛んだかと思ったけど、後で歌詞を調べたら、もともと1番は「さようなら/こんにちは」だけで良かったんだ。
(神戸1)
MYJJの粗削りをまんまぶつけてくるような音もかっこいいけど、整然とビシッと決めてくるロマンスバンドもかっこいい…。すってぃーが「どぅ〜〜〜ゆ・りめーんば♫」と口ずさんでいるのが見えて感激。
20.あなたのやさしさをオレは何に例えよう
(島根)
毎度お楽しみのメンバー紹介。スーパーマンは「最年少にしてド真ん中!熱くて、クールで、優しくて、そしてかっこいい。虜です」と。
(横浜1)
私が歌詞オタになった要因のひとつが、この歌の「敗北と死に至る道が生活ならば あなたのやさしさをオレは何に例えよう」。この意味を長いこと考えてきたけど、わかった。ここで聴いていて唐突に理解した!
「生活というものが敗北と死に至る道なのだとしたら、あなたのやさしさをオレは何に例えたらいいのだろう」と解釈して、この文の前半と後半の因果関係をずっと長いこと悩んできた。そうじゃないんだ。
「例えば、生活を『敗北と死に至る道』に例えるならば、あなたのやさしさは何に例えられるだろう」という意味だったんだ。文語的な書きぶりに惑わされてしまっていたが、喩えをふたつ述べようとしているんだ。そのことに突如として気がついた。
(横浜2)
「すごい五人衆が登板しております。演奏中です。」
(神戸1)
メンバー紹介、それぞれのソロの後半からさりげなく合わせてくる他の3人。リズム隊が目配せしてるのがめちゃくちゃかっこいいぜ。。。
21.俺たちの明日
(横浜2)
ヴィジョンの光景が正視に耐えられず、センステばかり見ていた。名越さんとすってぃーが向かい合っての競演、それはそれはもう超絶にかっこいい。
(神戸1)
すってぃーが!すってぃーが!目の前に立ってにっこり笑ってくれたぁぁぁーーー!
センステで口ずさんでくれていて感動。。。
(神戸2)
これまで実はなかなか琴線に響いてくることがなかった歌。やっと好きになれた。
ソロの煌びやかな世界、すなわち音楽の実験や多種多様なコラボ、プロデュースされる安心感と負担減少感、カバー…、やりたかったことが実現できている充実感を見ていると、本当によかったと思う。その反面、その裏で「本当はこういう方法で、こういう曲で、こういう売り出し方で売れたいんじゃない!本当はもっと違う表現で売れたいんだ!」と自分を押し殺しているエレカシ宮本がいるのではないかという思いが、ずっと消えずにいた。
響く言葉じゃないと届かない。でもそれは、響く言葉であれば届くということ。
ソロの世界は、キラキラしていてもどこか痛々しかった。
バンドの歌でも、「今宵〜」や「俺明日」に対して「この歌をみんなが気に入ってくれて、自分も好きになった」「だから、等身大の歌として堂々と歌える」といった言葉の裏に、彼が彼自分を納得させようとしているかのようなわだかまりを感じていた。でも、楽しそうで嬉しそうで幸せそうな姿を見ると、それは穿ちすぎなのかとも思い、行ったり来たりしてモヤモヤが消えなかった。
それが、5年の間にソロとバンドそれぞれが明確に演じ分けられるようになってきて、それによって逆に、そもそもソロもバンドもなく歌いたいことは一貫していて、表現方法が異なるだけだということが実感を伴ってリアルに立ち上がってきた。人格が乖離し、それにより逆に根幹が融合する。ソロのコンサートでバンドの歌が演奏されることにも、違和感や嫌悪感がなくなっていった。
歌いたい想いがいくら強くても、届かなければ意味がない。聴衆の心に届く言葉を使うのは手段じゃない、目的なんだ。「彼の中の」ではなく「私の中のエレカシ宮本」が納得したような気がした。それを気づかせてくれたのが、今ツアーの「俺たちの明日」だった。
第3部
(横浜2)
タオルを掴んでマイクスタンドの前に立つもネクタイが気になり、細腿でタオルを挟んでそのままよちよちと前に少し歩く(かわ!)。そのタオルを肩にかけようとして片手ではうまくいかなくて。頭に引っ掛かって江戸の夜鷹のお姐さんみたいになってた(かわ!)。
22.close your eyes
23.十六夜の月
島根では第3部の最初だったこの歌が、横浜・神戸ではこの位置に。
伝えたいメッセージがくっきりと明確に刺さってきた。
「今宵の風に吹かれて思う。流れ流れて漂う今も捨てたもんじゃねえ」
24.ハレルヤ
25.冬の花
(神戸1)
花道スロープあたりで熱唱するミヤジを花道下から岡田さんが撮っている。でもカメラの角度が上すぎない?と思ったら、舞い落ちる花びらを狙っているようだった。その肩ストラップに花びらが1枚。じんわりと胸が熱くなった。
アンコール
26.夜明けのうた
ガーデンシアターで1曲目だったこの歌が、今回は最後の歌。
(横浜2)
ミヤジがポジションに入って、照明が落ちて、名越さんのギターが鳴り始めるまで、アリーナ全体が固唾を飲んで物音ひとつしなかった。ものすごい厳粛な静寂。「一瞬が永遠」ってこういうことかと。
(横浜1)
「5周年」を「5週間」と言い間違い。「5週間…いや5週間じゃねえや、5週間じゃ短すぎる」
「エヴリィバディ!」と言おうとして「えびょばで、えびゅ…、えびゅ…、」。精も根も使い果たして歌ってくれた末の椿事。
しかし、終始ご機嫌の若次だった。立ち姿とか、歌い方とか表情とか、『縦横無尽』の歌を若次が歌っていた。ポニキャ期くらいの若次が。
最初の方でちょっと鼻声?大丈夫?と思い、最後の方では喉 大丈夫?と思ったけど、無理せずファルセットをコントロールしていたのはさすが。
(横浜2)
司令塔氏の谷川俊太郎さん訃報に絡めた長い話の末に褒められ、「衆人環視の前で褒められた」と。
ラスト捌ける時、下手階段を下りながら両手を上げてバイバイしてくれた!
(神戸2)
「旅の途中でまた会おう!」
「また会おう!…会わなくてもいいけど、」など、旅の先々でバリエーションのあったご挨拶も、最後の最後でこの言葉。震えた。新春で “旅の途中” 聴きたい…(涙)。